《灰色編》11話:夢オチなんて言葉はこの世に存在しません
『ワカメと悪魔』はあくまでコメディです。悪魔だけに!
誰かに呼ばれて目が覚めた。ぼんやりと霞がかった頭が次第にはっきりとしてこない。
「おはよう。ワカメ」
「…………………………」
薄目を開けると目前には眼鏡。よく見る形だ。確か委員超の眼鏡と同じ型だった気がする。
「…………誰…………?」
「とりあえず、おきなさい」
「…………無理…………おやすみなさい」
瞼を閉じて、いざ、ゆかん!夢の世界へ!
「ワカメ。早く起きないとその、ゆだったワカメ頭にストレートパーマかけるわよ?」
「やめて!そんなことしたら、俺はどこにでもいるような優男になってしまう!」
「目はさめた?」
「…………はい。バッチリ目がさめましたよ、肱岡さん」
「よろしい。それじゃ、起きたところで、顔洗って、歯を磨いてきなさい」
「わかりました」
洗面所へ向かい。顔を洗って歯を磨いている最中、ふっと時計に目がいく。
――6時12分……。
何かがおかしいと思った。
俺がこんな朝早くに起きているという違和感もあるのだが、それとはまた別の違和感がそこにはあった。
起きたばかりで頭が上手く回らない。
無理に考えようとすると、ズキリと鈍い痛みが走る。
……今は考えるのはやめておこう。こんな状態で考えてもろくな答えはでないだろう。
そう、結論づけて洗面所を後にした。
「ワカメ。朝食の調達にいくわよ」
「ここは、お約束として、肱岡さんが用意してくれているものじゃないんですか?」
「いくら私でも、材料も無しで朝食は作れないわ。そもそも、なんでワカメの部屋には布団しかないの?」
「それも、そうですね。まぁ、色々あったんですよ、色々とね」
「ふーん」
――『色々あった』か……。
確かに昨日は色々あったな。
朝、遅刻して、ヘッドホン娘で何とかそれを乗り気って。昼休みにはそのヘッドホン娘が攻めてきて――そういえば、あの時、あのヘッドホン娘は夜に来るとか言ってた気がしたが……どうなったのだろうか?
それから放課後、委員超が家に泊まるとか言い出すから、走って家に帰って部屋の掃除をして、それが終わった開放感から奇声をあげたら、お隣りの末継赤子が――――。
――末継赤子……?
確かあいつは風邪ひいてて、ぶっ倒れて、それで俺が看病してたら、委員超が来て、そろから…………。
その先はどうなったんだっけ?
わからない。忘れた?
その先の記憶へ繋がる道が通行留めにでもなってしまったかのように、まったく次の記憶に進めない。
わからない。思い出せない?
「どうしたのワカメ?早く行こう」
「え?あ、はい、今行きます」
委員超の呼び掛けで思想が途切れた。
……思い出せないのだから、たいしたことでもないのだろう。
そう、結論づけて、俺はその先の道へ進むのを諦めた。
部屋を出てふと末継赤子のことが気になった。
容体はどうなっただろうか?
「肱岡さん、少し待っててもらえますか?」
「かまわないけど、どうしたの?」
「末継さんの容体を見てきます」
そういって、俺の部屋の隣の部屋を指差した。
「うーん………昨日はあえて聞かなかったけど、その末継さん?はワカメの何なの?」
「そういえば説明がまだでしたね。実は――かくかくしかじか――ということなんです」
パァンッ!
乾いた音が朝のマンションに響いた。
どうやら俺は委員超に頬をひっぱたかれたらしい。
「ワカメ、見損なったわよ」
「ひ、肱岡、さん?」
「かくかくしかじかで理由が通じるのは二次元の世界だけよ。ちゃんと説明しなさい」
「……すいません。ちゃんと説明します……」
※
パァンッ!
乾いた音が朝のマンションに響いた。
どうやら俺は委員超に頬をひっぱたかれたらしい。
「ワカメ、いい加減にしなさい」
「ひ、肱岡、さん?」
「『※』使ってハブこうとしても無駄よ。しっかり自分の口で説明しなさい」
「………ごめんなさい。面倒臭かったんです………」
「わかればよろしい」
「それでは改めて説明します。彼女の名前は末継赤子さん。俺のお隣りさんで昨日、始めてまともに言葉を交わして、幼なじみになりました。それで、その末継さんなんですが風邪をひいていたみたいで、看病していたということです」
「だいたい、わかったわ」
なるぼどと頷く委員超。
「それで様子を見に行こうってことね。それなら、行ってきなさい」
「それじゃ、少し待っててくださいね」
「ん、わかったわ」
委員超を残し、ノック無し、チャイム無しで末継の部屋に入った。
もう少し早くに更新するつもりだったんですが……。今回から次回予告をやろうと思います!※次回予告どおりになるとは限りません! 次回予告! ついに委員超と赤子が激突!? 第12話!常識なんて言葉はこの世に存在しません お楽しみください!?