白井の魅力 ーおっさんの回想ー
もっさいおっさんと眼鏡女子を読んでからの方がより楽しめるかもしれません。
ーーーわ、私の魅力がどこか聞いて来いって
企画物の構想を練っている時に、先日の白井の言葉がふっと蘇ってきた。
くくっと含み笑いをする。
知らんだろうな。
白井に初めて会った時、扱い辛そうだな、と思った。
MCを長くやっていると、第一印象でバラエティに向いているか向いていないかがだいたい分かってしまう。
しかし面白いもので、向いていなくてもウケる場合もあるから、一先ず使って様子を見るのが常だ。
トレンドとぴったり合うと向いてなくてもやっていけてしまう。
そして売れて変化する者もいるし、そのまま変化せずありのままでいる者もいる。
どちらが良いとは言えない所も、また面白い。
白井はバラエティ向けもしなくて、変化もしない印象であった。
あんまり長くはなさそうだか、使ってみるか。
そんなぐらいだったのが。
あの飲み会から変化した。
白井ではなく、自分が、だ。
あの時、ただ普通に会話していただけだった。白井は会話の間に白身魚のフライを食べていて、タルタルソースが少し口元からはみ出していたのだ。
ついてるぞ、と教えようとした時、
何を思ったか舐めとってしまった。
きょとんとした白井の顔がまた、
印象的だった。
詫びを兼ねて行った上野公園でのソフトクリームも、あいつはまたはみ出して食べていた。
俺はぐっと堪えて今度は教えた。
教えたのだ。はみ出していると。
なのにあいつはモタモタモタモタ……
俺は結構せっかちで、我慢ならなくて自分で拭って食った。
そしたらあいつが、またぽかんと見てるから。
正直に言う。
俺はあいつの無防備な唇が好きだ。小さいのにいつも自分の口より大きい物を食べていて、必ずと言っていい程口の左端から食べ物をはみ出している。少し下唇がふくっとしている桜貝の様な唇に、タルタルやソフトがはみ出しているんだ。
吸い寄せられるな、と言うのが無理な話だ。
これに関してはもう、俺も何とも言えない。
気がついたらキスしてる事が多い。
その件に関してよくあいつからなじられるのだが、しょうがない。俺としても不可抗力に近い。
それを伝えるとまた真っ赤になって。
への字の桜貝にまた吸い寄せられ。
まあ、きっかけはそんなんだとしても。
惚れちまったもんはしょうがない。
白井の魅力の一つは唇だと言っても良いのだか、それを武器にグラビアに載られるのは、こう、大分嫌なんだよな。
まさか齢40を過ぎてつまらない嫉妬で売れ筋を教えないとか。
「俺も相当参ってるよな」
白井の魅力に。
お読み下さり、ありがとうございました!