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こちら怪異お悩み相談課です。  作者: ネコショウグン
2/2

バイオレンスな案件が多い職場です。2

女子大生を襲った腐乱死体は怪異専門の回収係が既に回収し終えていた。アパートは普段通りの静けさを取り戻し、争いの様相から臭いに至るまで普段を取り戻していた。


このアパートは所謂ボロアパートというやつだった。階は2階まであり、1階につき4部屋あった。住人はそんなに入っておらず、先程の女子大生を除いては2階に男が1人と下の階に大家さんが1人といった感じである。本当は1階に女性が1人いたらしいが、1年前から行方不明だという。ボロアパートに不釣り合いに明るく社交的な女性だったらしい。


「と、いうのがこのアパートについての事項です」


「ふぅん、まぁ、大家さん情報提供ありがとうってとこよねぇ」


「さて、考えられることはヨモツさん。あの歩く腐乱死体……まぁ、『ゾンビ』と名付けましょう」


「そのままねぇ」


「う、うるさいな!そのゾンビがこのアパートに出てきた線としてこのアパートで作られたってのを推します」


「あらあらそれは大胆ね。外から入ってきたって線はないのかしらぁ?」


「そこも考えたんですがね、僕たち近所まで車で来てこのアパートに入ったじゃないですか。その時このアパート周辺に異臭はなかったんですよ。その点がどうも納得いかない。」


「そうねぇ、私も死人の感じがしたのはこのアパート入ってからだったわぁ。っていうかこのアパート自体結界みたいなものよね〜外界からは気をつけないと見つけられないほど気配が希薄じゃない?」


「じゃあ決まりですね。それじゃあ各々の部屋の中でも探してみましょう」


そして、フヒトとヨモツはまず1階の大家さんの部屋を詳しく調べた。たしかに怪しい家具やよく分からない巻き物を散見することはあったが、ゾンビを作成するために欠かせない道具やらは見当たらなかった。


大家は「まぁ、好きにやってくれ」となすがままであった。初老を迎える老婆の大家にとってはとにかく静かにすごしたいのが重要なのであった。


あとは2階の住人である。1人は男で名を加能という。彼の職業は大学院生である。本日は研究室にでもいるのか部屋を空けている。念のためフヒトは加能の部屋のインターホンを鳴らす。


「出て来てくれるわけないか、大家さんに合鍵貰おうかな」


と、踵を返し大家のとこへ再度向かおうとしたところ、階段から男が上がってきた。


「あれ、どなたですか?」


「ん、貴方が加能さんですか?」


「はいそうですが」


「あぁ、よかった。私こういうものでして、先ほどこのアパートで腐乱死体の怪異騒動が起きましてね。いまはその原因を究明してるところなんですよ。そのためちょっと加能さんのお部屋を調べさせてもらえないでしょうか」


フヒトは自身の身分証を提示してこのの経緯を加能に話した。フヒトの背後でヨモツがふわふわ浮いていても気に留めないあたりこの加能という男は怪異ごとに慣れているのだろう。


「そうですか、怖いですね。僕の部屋を調べるならどうぞ。やましい事も物もないですよ。」


「ご協力有り難うございます」


フヒトは加能に玄関の鍵を開けてもらい。彼の部屋を調べた。質素で簡素なものの少ない家であった。フヒトが加能の部屋に入り調べていると、玄関口で加能の「え、あぁ!?」という素っ頓狂な声が響いた。


「どうしたんですか加能さん?」


加能の方へ振り向くと彼は地面に落ちていたであろうペンダントを拾い上げていた。


「このペンダントが何故ここに……これは、ユリにプレゼントした……」


ペンダントは指輪のようなものがぶら下がっており、血なのか泥なのか肉なのかわからない汚れが無数に付着していた。


「フヒトさんでしたっけ……先ほどの怪異騒動、その怪異ってどんな服装をしてました…?」


フヒトは記憶を辿る。自ら撃ち殺した相手なのだ、鮮明に覚えている。


「たしか、花柄のワンピースでしたね」


「フヒトさん、その人は恐らくこのアパート1階の行方不明になってた女性、筒中カオリです。間違えありません、だってその服装は行方不明になった当日着ていた服です。それにこのペンダント、私が彼女にプレゼントした指輪のペンダントです。」


加能の言葉にフヒトはぽかんとしていた。だが、すぐに我に帰り頭を整理する。


「あの、加能さんってもしかしてそのカオリさんの……」


「はい、私はカオリの恋人でした。この一年間、一瞬たりとも彼女を忘れた事などございません」


この男の部屋に怪しげなものはなかった。フヒトは彼に突然家に押し入ったことを詫び、彼の部屋を後にした。


「のこるは………彼女の部屋だよなぁ……もうこれが当たりじゃん…」


フヒトは大家から合鍵を貰い、201号室の女子大生の部屋まで来た。この201号室の扉の向こうがフヒトにはどうもパンドラの中身のような気がして開きたくなかった。

だが、相棒のヨモツに後を押され、「しっかりしなさいな」と言われ意を決した。


ギギィと軋む音を立てながら扉は開かれ、ついにその部屋の中が明らかとなった。


「あーもう……まったく、撃ち殺した件といい今日は胸糞が悪いな」


「まぁ、これは尋常ではないかもねぇ……」


部屋一面には加能がカオリであろう女と写っている写真や彼個人が鬱いる写真が撮れびっしりと貼られていた。別の部屋にはご丁寧にゾンビ制作用の薬と怪しげな呪術所が所狭しと並んでいた。


「これはもうビンゴだわなぁ。おっとこうしちゃいられない、回収した遺体の身元検査やあのJDちゃんの搬入先の病院調べとかなきゃなぁ」


フヒトはぼやきながら関係各所に通達する。201号室から出てこれから病院に向かうかという時、あの加能と呼ばれる男の叫び声を一階でもう一度聞いた。



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