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旧作3-2  作者: 智枝 理子
Ⅳ.神聖王国編
93/149

102 冒険者ギルド

 レストランを出て、エルと一緒に外を歩く。

 相変わらず、この国には光の精霊がたくさん居るよね。

 広い通りには人もいっぱいいて、黒髪の人も多いみたいだ。

 エルも帽子を被って居れば大丈夫って言っていたし、ロザリーが心配するほど危ない国じゃなさそうだよね。

 

 エルと一緒に入ったお店は、冒険者ギルドだ。

「仕事を探しに来たの?」

「……そんなところ」

 違うらしい。

 何か探しに来たのかな。

 エルが眺めているのは依頼書がたくさん貼ってある掲示板。

 依頼書の右上には、ランクと書かれている横に色の判子が押してある。

 そういえば、前に馬を借りる時に教えてもらったよね。冒険者ギルドに所属してる人にはランクがあるって。

―ランクが高ければ、高額な報酬を得られるような難しい依頼を受けられる。

 ランクはどれも色で表現されてるから、どう違うのかわからないけど。ギルドに無所属の方はランク黒のみ受諾可能って書いてある。

 黒が一番低いってこと?

 あ。

「エル、これ」

「……吸血鬼捜索依頼?」

 エルが口元に手を当てて、依頼書を見る。

 吸血鬼捜索依頼のランクは黒だ。簡単な仕事なのかな。

 内容を読もうと思ったところで、エルが依頼書を剥がして受付けの方に行ってしまった。

 あの依頼を受けるの?

 ……エルのランクって、何色なんだろう。

 色の数だけランクがある?

 護衛、配達、納品、捜索、調査、探索……。色んな依頼があるけど、一番多いのは亜精霊討伐依頼だ。

 亜精霊討伐依頼は、黒がない代わりに色んな色が振り分けられていて報酬もそれぞれ違うから……。

「仕事を探してるのか?」

 声をかけられて、隣に立ってる人を見上げる。

 冒険者?

 あ!

「そのブローチ……」

 襟の内側にビオラのブローチをつけた人が苦笑する。

「目聡いな」

 エトワールの人ってことは。

「私のこと、知ってるんですか?」

「そんな大剣持ってるのは嬢ちゃんだけだろ」

『ばればれだね』

 私、一度も会ったことないはずだけどな。

「主が倒れたって言うのに、こんなところで何やってるんだ?」

 主ってアレクさんだよね。

―主君は今、アンシェラートを封じ込めるために力を使い、病に伏せっていることになってるからね。

 この人に本当のこと言っても良いのかな。

 ……わからない。

「あの、詳しく言えないんですけど、心配しなくても大丈夫です」

 相手の人が苦笑する。

「心配してないって。そう簡単に死ぬような奴じゃないからな」

 なんだか親しそうだ。

「一緒に旅したことあるんですか?」

「仲間だったことはあるぜ」

 アレクさん、冒険者だったこともあるの?

「で?ここには遊びに来てるわけじゃないんだろ?」

「えっと……。やらなくちゃいけないことがあって。私の仕事はエルの護衛だから、一緒に来てるんです」

「護衛任務なら、護衛対象から離れちゃまずいんじゃないのか?」

「えっ?」

 エルの方を見る。……受付けで何か話してるみたいだ。

「まぁ、こんなところで人を襲う奴なんて居ないだろうが。協力して欲しい事があったら言いな。俺はしばらくギルドに居るから」

「はい」

 エトワールの人なら頼りになりそうだよね。エルのことを絶対守ってくれるだろうし。

「じゃあな」

「待ってください」

『ついて行くの?』

『ギルドの中から出なければ問題ない』

 メラニー、一緒に来てくれるんだ。

 エルはまだ受付けで話しをしてるみたいだし、大丈夫だよね。

 冒険者の待合所みたいな場所にはテーブルと椅子があって、何か飲んでる人や軽い食べ物を食べてる人も居る。

「ラガーを一つ頼む」

「はいよ」

 待合所側にあるカウンターで注文をして、お金を払って品物を受け取るシステムらしい。

「あの……」

「座ったらどうだ?」

 促されて、隣に座る。

 席は自由に使って良いらしい。

「あの、ギルドのランクのこと聞いても良いですか?」

「自分のランクを上げれば自ずとわかるようになるぜ」

 ギルドには所属してないんだけど。

「黒が一番低くて、赤、オレンジ、黄色、緑、青、藍色の順ですか?」

 亜精霊討伐の難しさはそうなっていた気がする。

「そこまでは正解だ」

「他にもあるんですか?」

「ランクは九つだからな」

 後二色あるんだ。

 間に別の色がある?それとも、上か下の色が抜けてる?

「あなたのランクは?」

「藍だぜ」

 ヒントにならない。

 黒を除いた色の並びは……。虹?

 ってことは。

「菫?」

「正解。まぁ、どっちかって言うと紫だな。藍の次だ」

 やっぱり虹の並び順なのかな。

 だったら、間に抜けてる色はなさそうだよね。

 一番下が黒だから。

「一番上は白ですか?」

「それは上り詰めた奴しか知らない情報なんだぜ。表には出ない依頼を受諾できるって話しだ」

 掲示されない依頼なら白ってことだよね。

 だって、白い判子なんて依頼書に押せない。

「エルのランクは知ってますか?」

「知らないのか?」

「普通に旅する分には必要ないって、冒険者ギルドのことは何も教えてくれなかったから」

「……そうだな。好んで危ない事に首突っ込む必要はないだろう」

 冒険者ってそんなに危ない仕事なのかな。

「知りたきゃ本人に聞きな。本人が言いたくないことを俺が教えるわけにはいかないだろ?」

 そうだけど。

「冒険者って、どうやってなるんですか?」

「受付けでギルドマスターに登録を申し出れば良い」

 それだけ?

「誰でもなれるんですか?」

「あぁ。大抵はランク黒からスタートだが」

「ランク黒って、冒険者じゃなくても、誰でも受けられる依頼のことですよね?」

「依頼のランクと冒険者ランクの意味はちょっと違うぜ。自分のランク以下の依頼が受けられるようになってる」

 ランク黒なら、どちらにしろ一緒だと思うけど。

「ランク黒は仮登録証。登録者が犯罪歴のない奴かどうかギルド側が調べるんだよ。調査が無事に済めば、すぐにランク赤になる」

 犯罪歴がないことが証明されて初めて、ちゃんとした冒険者になれるんだ。

「ランクの高い冒険者が身元保証人になれば、最初からランク赤の場合もあるが。……でも、登録するなら、ちゃんと拠点を決めておいた方が良いぜ」

「拠点?」

「ランクが上がった場合に新しいギルド証を発行してもらえるのは、登録名簿のある冒険者ギルドだけだ。嬢ちゃんがラングリオンを拠点にするなら、ラングリオンのギルドで登録した方が良いぜ」

 そういえば、ポリーの拠点はティルフィグンだったよね。

 拠点を作るのも大事なことらしい。

「冒険者になりたいのか?」

「そういうわけじゃないんですけど……」

 エルが何も教えてくれないから。

「そうだな。ギルドでも名が知れてくる上級者ってのは青以上。あいつの名前を知らない冒険者は居ないぜ」

 黄昏の魔法使い。

 冒険者ギルドと魔術師ギルドに出入りしているなら誰でも知ってるって、ポリーが言ってたっけ。

「エルのランクは青以上ってことですか?」

「俺が言えるのはここまで。そんなに気になるなら、ギルド証を見せてもらったらどうだ?」

 見せてくれるのかな。教えてくれないことは本当に教えてくれないから。

「そういや、最近はサンドリヨンと一緒じゃないみたいだな」

 サンドリヨンは……。

「誰だかと旅に出たとか、大陸を出たとか。結婚して冒険者を引退したって噂も聞くが」

 結婚。

 そうだよね。

「結婚したんです。ずっと好きだった人と」

「おぉ。そいつは良かった」

 好きな人と結ばれたのは確かだ。

「リリー」

「あ、エル」

 話しは終わったのかな。

 ……あれ?怒ってる?

『エトワールのメンバーだ』

 メラニーの説明で、エルの表情が戻る。

 また、知らない人について行ったって思われてる?

「よぉ。仲間を探してるなら付き合ってやるぜ」

「……夜」

 夜?

「おいおい。今日は休みじゃないぜ」

 休みは明日だよね?何の話し?

「仲間は探してないけど依頼ならある。俺の代わりに護衛してもらいたい相手がいるんだ。期間は今日の夕方から明日の昼まで。場合によっては伸びる可能性もある。出来るか?」

「随分急な話だな」

 夜って、依頼をしたかったんだ。

「まぁ、引き受けてやっても良いぜ」

「依頼はギルドを通じて出しておく。報酬は高めにしておくから、仲間を雇っても良い。危険があれば別に手当も出す」

 ギルドを通じて?

「は?護衛対象は誰だよ」

「マリアンヌと、ローズって名乗ってる赤髪の騎士」

 え?マリーとローズさんの護衛を頼むの?

「騎士も護衛の対象なのか?」

「そうだよ。護衛の方法はローズと相談してくれ。今、ローズ宛の手紙を書く」

 エルが私の隣に座って手紙を書く。

「あの、目の前の人に依頼を出すのに、ギルドを通さなきゃいけないんですか?」

「信頼関係の問題だ。仕事をやったのに報酬を貰えなかったら困るだろ?」

「エルはそんなことしません」

「前金を払ってるのに仕事をしてもらえなくても困るだろ」

「あなたも、そんなことしませんよね?」

 アレクさんが信頼してる人だし。

「困った嬢ちゃんだな。今、会ったばかりの他人を簡単に信用するもんじゃないぜ。相場だってギルドに相談しなきゃ決められないのが普通だ。ギルドが依頼を受ければ失敗時の保険にもなるし、俺の都合が悪くなった時に別の冒険者に回すってこともできるからな」

 色々メリットがあるらしい。

「依頼は誰でも出せるんですか?」

「出せるぜ。小さな子供だろうと、国家の権力者であろうと誰でも。報酬次第で何でもやるのが冒険者だ」

 でも、悪いことはしないんだよね。


 手続きを終えて、エルと一緒にギルドを出る。

「あのね」

「ん?」

「エルのギルド証を見ても良い?」

「……良いけど」

 エルがギルド証を出す。


 冒険者ギルド登録証

 所属 ラングリオン王都

 Elroch Clanis


 名前はエルの自筆だよね。

 書いてあるのってこれだけ?裏にも何も書いてない。

 他にあるものと言ったら、冒険者ギルドのマークぐらいだ。

「ランクが書いてない」

「……ギルド証なんて大した情報は載ってないんだよ」

 エルがギルド証をしまう。

 どうして書いてないんだろう。ランクが上がれば新しいギルド証が発行されるみたいだし、書いてないと変だよね?

「魔術師ギルドで買い物をしたら、この辺りに宿を取る」

「この辺りに?」

 えっと……。ここって、富裕区じゃないよね?

「戻らないってこと?」

「夜にやらなくちゃいけないことが出来たからな。少し休んでおく」

 吸血鬼捜索依頼、受けたんだ。

 戻らないから、手紙を書いて二人の護衛を頼んだのかな。

 


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