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旧作3-2  作者: 智枝 理子
Ⅳ.神聖王国編
88/149

97 選り抜く

 今日は朝から馬車で移動する。

 乗っているのは私たちだけ。

 別の大きな街でお客さんを下ろしたばかりだから、元々乗っている人は誰も居なかったらしい。

 真っ直ぐ王都を目指す馬車だけど、お昼は休憩の為に別の街に寄る。

 出発時間までには戻らなくちゃ。

「良い匂い」

 クエスタニアと言えばソーセージが有名らしい。王都に近い街道の街には、色んな地方のものが集まっていて、出店が並ぶ通りはとても良い匂いだ。どこも似たような形状のものを焼いている。

「あれって全部、ソーセージ?」

「えぇ。クエスタニアのソーセージは色んな種類があるのよ。同じ味なんてほとんどないぐらい」

「そうなんだ。どれが美味しいのかな」

「そうねぇ……」

 マリーがお店を見回す。

「いらっしゃい。うちの店では女性好みのを揃えてるぜ」

「まぁ、素敵。このお店で買いましょうか」

 マリーと一緒にお店のソーセージを見る。白いのもあるし、斑模様のもあるし、長さも太さも様々で色んな種類がありそうだ。

「どれにしようかしら。特徴を教えて頂ける?」

 お店の人が、一つ一つ丁寧に説明してくれる。

 えっと……。辛いのってどれぐらい辛いのかな。説明の中には、オーソドックスなものってなかったけど。

 マリーが注文すると、お店の人がソーセージを切りこみを入れた丸パンに挟んでる。

 サンドイッチにしてくれるんだ。

「お嬢ちゃんはどうするんだ?」

 えっと……。

「これを下さい」

 レモンやハーブが練り込まれているらしい。他にも色々言っていたような気がするけれど、ちょっと聞き取れなかった。

 あれ?

「クロエとローズなら向こうよ。何を買ってるのかしら」

 マリーの視線の先。別のお店で買い物してるみたいだ。

 見えるところに居るけど、急いで追いかけた方が良いよね。

 代金を払って、ボリュームのあるサンドイッチを貰う。

 

「そっちは、買い物終わったの?」

「はい。飲み物はローズ様に任せました」

 ローズさんが飲み物の瓶を抱えてる。

「ポムエード?」

 でも、ちょっと色が違うような?

「通常のもの、炭酸割りのもの、水割りのもの、生絞りがあります」

 同じ林檎のエードなのに、こんなに種類があるんだ。

「あちらの席で食べましょう」

 広場に並べられているテーブル席に行って、買ったものを並べる。

「この短い間に何を買ったの?」

 エルはサンドイッチの他にも色々買ったみたいだ。

「フライドポテト、シュネーバルと……」

「シュネーバルって?」

 周りについてる白いのは粉砂糖?砂糖がかかった、でこぼこの丸い……、パン?

「お菓子です」

「甘いものなんて食べるの?」

「まさか。御二人でどうぞ」

 買ってくれたんだ。

「そっちは?」

 三角の包みに入ったものを覗く。

「わぁ。美味しそう」

 中には、砂糖がけのアーモンドがたくさん入ってる。

「おひとつどうぞ」

 アーモンドを一つ食べる。

「美味しい」

 それに、あったかい。

 ローストしたてなのかな。こんなのがあるんだ。


 ※


 昼食を食べた後、ルサミの村で乗ったのと同じ乗合馬車に乗る。

 相変わらず、お客さんは私たちだけだ。

 出店で買ったアーモンドをつまみながら、マリーが窓の外を見る。

「雨だわ」

 さらさらとした雨が降っているのが見える。

 雨……。

 何か、忘れているような……。

「あっ。私、レインコートを持って来てない」

 こんな天気なら、いつ雨が降ってもおかしくないのに。

「貸してあげるわ。二人は持ってるの?」

「持っています」

 エルが答えて、ローズさんも頷く。

 皆、ちゃんと持って来てるんだ。

「こっちの方が丈が短めかしら」

 マリーから青いレインコートを貰う。

「ありがとう」

 あれ?フリルが付いてる?

 裾が大きく広がるフリルのレインコートだ。

 流石、マリーのだよね。すごく可愛い。


 ※


 クエスタニアの王都に到着。

 雨なのに光の精霊がたくさん飛んでいて、ラングリオンの空より明るい感じがする。

 そういえば、クエスタニアには光の大精霊が居るかもしれないってエルが言ってたっけ。こんなに光の精霊が居るなら、居そうだよね。

 急に腕を引かれて、歩く方向を正す。

「ローズさん」

『ちゃんと前見て歩きなよ』

 エルとマリーの後ろをローズさんと並んで歩いていたのだけど、道を外れそうになってたみたいだ。

『ちゃんとついて来てねぇ』

 ユールとメラニーが私の傍に来る。

「うん」

 これから宿を探すために富裕区を目指すらしい。ちゃんとついて行かないと。

 隣を歩くローズさんを見上げる。

 こうして見ると、結構背が高い人だよね。エルとマリーよりも背が高い。

「あの……」

「……」

 ローズさんが口元に手を当てて空を見る。

 私の声、聞こえなかったのかな。

「あの、ローズさん」

「何でしょうか」

 あ。今度は聞こえたみたいだ。

「盾って、どうやって使うんですか?」

 ローズさんが眉をひそめる。

「あの、背負っていたらすぐに持ち変えるのは大変かと思って」

「右肩の留め金を外せば、左側にずり落ちるようになっています。左腕にはバンドをつけていますから、このバンドを滑らせるように落とせば、すぐに盾を使えるようになっています」

 そういう構造になってたんだ。

「どちらにしろ、この状態で使うのは難しいですが」

 背中に背負ってる盾も剣も、レインコートの中だ。

 リュヌリアンはマリーから借りたレインコートの中には入らないから、背負うのを止めて、レインコートの内側で持っている。

「ラングリオンと違って、クエスタニアの王都では無暗に剣を抜いてはいけませんから。気を付けて下さい」

 そうだよね。普通、街中で決闘が起こるような場所ってそんなにないはずだ。ラングリオンって、ちょっと変わってるよね。


 広い通りをずっと歩く。

 王都には教会がいくつあるのかな。これで三つ目だ。でも、この教会は今まで見た中では一番大きいかも。

「あの宿に行きましょう」

 エルが教会の近くにある大きな宿を指す。豪華な造り。

 そっか。ここって富裕区なんだ。


「いらっしゃいませ」

「こんばんは」

 レインコートのフードを外したマリーが返事をして、カウンターの方へ行く。

「良いお部屋が空いていると良いのだけど」

「まぁ!すぐにご用意を致します。こちらにサインを頂けますか?」

「わかったわ」

 マリーが受付けで手続きをする。

「オルロワール家のマリアンヌ様と、三名様ですね。あちらのお席で少々お待ちいただけますか?」

「はい」

 女将さんが忙しそうにメイドさんたちに声をかけている。

「レインコートを御預かり致します」

 濡れたレインコートをメイドさんに渡す。

 良かった。リュヌリアンは濡れてない。

「こちらへどうぞ。只今、温かいお飲み物を御用意致します」

 案内されたソファー席に座るけれど、なんだか落ちつかない。

「どうしたの?」

「その……」

 ロビーとレストランが別の場所にあったり、働いてる人が多かったり、置いてるものが豪華だったり、いつも使う宿と違うことが多いって言うのもあるけど……。

「これだけ視線を感じていれば、落ち着かないでしょう」

 そう。エルの言う通り。あちこちから視線を感じるのだ。

 富裕区の宿って、どこもこうなのかな。

「マリアンヌ様は光の祝福を受けるオルロワール家の御令嬢です。クエスタニアは光の国。同じ光の祝福を受ける存在として、クエスタニアでも有名な方ですから」

 そっか。ここは光の神さまの国だから。

「もしかして、ルサミの村でもこんな感じだったの?」

「二人が教会に行ってる間、ずっと握手してたわ。流石に、高級宿なら気を使ってくれるみたいだけれど」

 マリーって、どこでも有名なんだな。


 ※


 待っている間、温かいコーヒーに加えて、アイシングの可愛いサブレまで御馳走になってしまった。

 ようやく案内されたのは、宿の一番奥の部屋。つまり、一番静かな部屋で、この宿で一番良い部屋。

 広い部屋には応接セットの他にベッドが四つもあって、奥の部屋には天蓋付きの豪華なベッドが置いてある。備え付けの家具も豪華で、まさに貴族が泊まる場所って感じだ。

「御用がございましたら、何なりとお申し付けください」

「ありがとう。助かるわ」

 メイドさんが部屋から出て行く。

「のんびりできそうな部屋だわ。リリー、今日は一緒に寝ましょうか」

「えっ?」

「それで良いよ。俺とローズは隣に居るから」

 今日も別の部屋?

「明日の予定だけど、二人は朝食が終わったら城に行って謁見の申請をしてくれ」

「二人って、私とリリーで?」

「申請に俺がついて行っても仕方ないだろ。マリーは城内の人間の黒髪に対する反応を観察しておいてくれ」

「わかったわ」

 また別行動なんだ……。

「終わったら宿に戻れば良いの?」

「二人で好きに観光してて良いよ。オルロワール家のマリーが王都に来てるって噂は広めておきたい」

 もしかして、私、避けられてる?

 エルの護衛が仕事なのに、マリーの護衛が仕事みたいだ。

 ローズさんは、どう思ってるんだろう。

「あの……」

「王都で一番危険な行為は、一人で迷子になる事です。単独行動は、絶対に避けて下さい」

 迷子になんてならないけど。

『リリー。マリーから離れないでね』

 ナインシェまで。

「……はい」

『これじゃあ、どっちが付き人なのかわかんないね』

 むぅ。

「エルはどうするの?」

「ローズと一緒に教会で礼拝後、合流せずに二人の護衛をする。俺たちが近くに行けばメラニーがわかるはずだから、午前中は見つけやすい富裕区に居てくれ」

 礼拝って、ルサミの村でしていたみたいに祈りを捧げるだけだよね?

 だったらすぐに合流できるのかな。

『なぁんか。嫌な予感がするのよねぇ』

『嫌な予感?』

『精霊の癖に何言ってるんだよ』

『王家の敵のこと?』

『そうじゃないけどぉ……』

 ユール……?

『あの人が居るかって、人間と契約中の精霊にはわからないんじゃなかった?』

『近くに来れば、周囲の精霊が気づいてざわつくだろう』

 あの人。

 カートも嫌な感じがするって言ってたし、誰とも契約していない精霊にはわかるんだ。

『予定の変更があった場合は、すぐにイリスを呼ぶように言おう』

『良いけど、あんまり人前で呼び出すのはやめてよ』

 イリス、一体何人に見られてるんだろう。

『リリーも、エルがボクを呼び出した後にボクを呼びだすの忘れないでよ』

「わかってるよ」

『どうかな』

 もしかして、ベネトナアシュと戦った後に呼び出すの忘れてたこと、まだ怒ってる?

「そうね。リリーならわかるわね」

 こっちを見たマリーと目が合う。

「うん?」

 何の話し?

「光の大精霊探しは任せるわ」

「あ、うん。頑張るよ」

 エルは光の大精霊に会いたがってたから。

 光の大精霊ってどこに居るのかな。

 この国で一番光に愛されているような場所……?



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