79 千年姫の恋
「遅いです」
ロザリー。
「ごめんなさい」
『約束の時間はとっくに過ぎてるわよぉ』
ルキア。
待たせちゃったよね。
「どうぞ」
エミリーさんとアニエスさんに案内されて、アレクさんと一緒に席に着く。
「悪かったね。リリーシアが迷子になっていたから迎えに行っていたんだよ」
「えっ?」
『本当にすぐ迷子になるのね。あなたって』
『勝手にあちこち行くんだよ』
そんなこと……。
「せっかくだから、乾杯はリリーシアに頼もうかな」
「えっ?私?」
『リリーに頼むの?』
どうしよう。こういう時、何て言えば良いんだろう。
『早く言えよ』
カートの意地悪。
『再会に乾杯、で良いんじゃないの?』
「あの……。ロザリーに会えて嬉しいよ。乾杯」
「乾杯」
「乾杯」
アレクさんとロザリーのグラスに、自分のグラスを合わせる。
『センスないなー』
だって、乾杯の音頭なんてやったことがない。
「私もリリーシアに会いたかったです」
「ありがとう」
美味しい。この林檎のエード。
エミリーさんが私の前に前菜を置く。
「スモークサルモと無花果のマリネ、ムール貝の白ワイン蒸しレモンソース、南瓜のムース根菜揚げ添えでございます」
「美味しそう」
色が鮮やかで、食欲をそそる爽やかな香りがする。
「エルは後から来るのですか?」
「忙しいから、ここに来る可能性は低いと思うよ」
『いつになったら会えるのかしらねぇ』
「残念です。せっかくミラベルのタルトを作ったのに」
「ロザリーが作ったの?」
「はい」
「こちらでございます」
エミリーさんがテーブルに置いてあったクロッシュを外すと、中からミラベルのタルトが現れる。
「わぁ。美味しそう」
ミラベルが宝石みたいに輝いてる。
「今回は一から全部作ったんです」
『最初はミラベルを並べるだけだったものぉ。成長したわぁ』
「私の得意料理になりました」
ロザリーが微笑む。
『相当練習したんだね』
『ロザリーはヌサカン子爵のところで毎日作ってたのよぉ』
そういえば、ロザリーはずっとヌサカン子爵の所に居たんだっけ。
「温泉地で有名なミラベルのタルトは、初代ヌサカン子爵が考案したものと言われているんだよ」
「子爵が?」
「はい。それも教わりました。子爵領ではミラベルのタルトが作れなければお嫁にいけないんだとか」
そういえば、私にレシピを教えてくれたのも温泉地の女将さんだったよね。
ミラベルのタルトと言えばヌサカン子爵なんだ。
「いつこっちに来たの?」
「バロンスの四日です」
『結構前に来てたんだね』
「私、ヌサカン子爵の娘になったんです」
「娘?」
「ラングリオンで生活するためには市民証が必要だからね。子爵がロザリーを養女として引き取ったんだよ」
もしかして、アレクさんと婚約する為に貴族の令嬢になったのかな。
アレクさんは皇太子だから、ロザリーがどこの誰かわからないんじゃ結婚なんて出来なさそうだよね。
「ロザリーはメディシノ王国建国初期の生まれで、およそ千年間眠っていたんだよ」
「千年っ?」
『そんなに経ってたかしらねぇ』
『想像もつかないね』
眠り姫の物語だって、眠っていたのは百年じゃなかったかな。
「蕪のスープでございます」
温かそうなスープが運ばれてくる。真っ白いスープだ。
「千年前と今は、どれぐらい違うのかな」
「そうですね……。大きな違いと言えば、昔より平和なことです。この大陸で戦争が行われていないなんて想像がつきません」
千年前なら、ずっと戦争をしていたアルファド帝国の時代だ。
「後は、食べるものが豊富にあって、知らない食材がたくさんあります。蕪というのも初めて食べました。これもとても美味しいです」
「うん」
前菜も全部美味しかったし、このスープもとても優しい味で美味しい。
「当時は好きな食べ物はなかったのかい」
「ココアが一番好きでした」
「ココア?」
「ショコラじゃなくて?」
「千年前にカカオをショコラに加工する技術は存在していないよ。カカオはココアとして飲まれていた贅沢品。それを口にすることが出来る人間は限られていたはずだ」
「はい。とても贅沢な飲み物でした。私はココアに憧れて、この役目に立候補したんです」
「そうなの?」
『棺に入る子は王族並みの扱いを約束されていたものねぇ』
ココアって王族じゃないと飲めなかったんだ。
『殺されるリスクもある役目なのに、暢気な理由だよ』
『そんなこと、誰も言わなかったわよぉ』
自分の力では目覚めることが出来ない呪い。
すごく危険な役目だったに違いないよね。
「ロザリーは昔からカカオを気に入っていたんだね」
「はい」
目覚めた場所がアレクさんの傍だったから良かったのだろうけど。
「私もアレクのように、上手にココアを作れるようになりたいです」
ロザリーと一緒に棺に入った他の人は、今、どうしてるのかな。
「赤甘鯛の鱗焼き、オマールエビのソースでございます」
「ライーザさん」
ライーザさんが微笑む。戻ってたんだ。
「お飲み物はいかがですか。ポワールのエードがお勧めでございます」
「お願いします」
ライーザさんから梨のエードを貰う。良い匂い。
「でも、私が今一番好きな食べ物はリリーシアのショコラティーヌです」
「え?」
「ロザリーはリリーシアのショコラティーヌが気に入ったんだね」
「アレクもそうじゃないですか。あれを食べた時の衝撃が忘れられません」
『ふふふ。ロザリーがここで目覚めたのも、ショコラの縁なのかしらねぇ』
ロザリーとアレクさんが顔を見合わせて微笑む。
ショコラの縁なんて、とっても素敵。
※
気持ち良い。
湯気が立ち上っていて。
月明かりもとても綺麗で。
「温泉気分ですね」
『王都に温泉なんてないでしょぉ?』
「どうしてこんな色のお湯なのかな」
お湯は透明じゃなくて乳白色だ。
「入浴剤を入れております」
返事をしたのは、ここからは衝立で見えない位置に居るライーザさん。
「これって薬が入ってるの?」
「はい。お肌に良い成分のものでございます」
それって温泉みたい。
「気持ち良いですね」
「うん」
夕食後、ロザリーから一緒にお風呂に入ろうと誘われて、紅葉が見える広い露天風呂に連れて来てもらったのだ。
ここはヌサカン子爵が王子時代に作った場所で、子爵は温泉王の異名を持っているぐらい、お風呂と温泉が大好きなことで有名な人らしい。
温泉が好きだから温泉地のあるヌサカン子爵領を継いだのかな。
きっと、炎の精霊と気が合っても氷の精霊とは気が合わないに違いない。イリスは、熱い場所は苦手だからと散歩に出かけてしまった。
「エルに会えなくて残念でした」
「近い内に会えるよ」
「会えても、話すタイミングはない気がします」
「どういうこと?」
「リリーシアが大会参加中は、私はアレクの隣でリリーシアのふりをすることになっているんです」
―主君の隣に座るのは、夫人か婚約者に決まっているだろう。
あの席は、私よりもロザリーが座るべき席だから、丁度良いのかもしれない。
「だから、エルと同じ場所に居られるのですが、エルに話しかけることはできませんから」
「……そっか」
話しかけたら、私じゃないってエルにばれちゃうから。
それに、あの場所からだとエルの後ろ姿しか見えないから、会えたことにはならないだろう。
……このまま、嘘を吐き通しても良いのかな。エルは私を心配してくれてるだけなのに。
……だめだよね。
剣術大会で優勝するとは思えないし、途中で負けたら、エルに本当のことを話して謝ろう。そうすればロザリーとエルが話す機会も作れるはずだ。
「あの……」
「剣術大会が終われば、私はヌサカン子爵と共に子爵邸へ帰らなければいけません」
「え?どうして?」
「私は子爵の養女だからです。私が居る場所は城ではありません」
あれ?
「ロザリーはアレクさんと婚約するんだよね?」
『婚約ぅ?』
「何の冗談ですか?」
アレクさん、まさかロザリーに何も言ってないの?
そんなはずないよね?だって、剣術大会はロザリーの為に……。
もしかして、言えない事情がある?
「ロザリーってアレクさんに返事はしたの?」
「返事、ですか?」
「告白の返事だよ」
もう、ずっと前だったと思うけど。
『そんなこともあったわねぇ』
「答えることなんてできません」
『返事なんてするわけないわよぉ。あれ以来、その話しはしてないものぉ』
「そうなの?」
アレクさん、ロザリーが何も言わなかったらどうするつもりなんだろう。
ロザリーの気持ちを聞かないまま婚約はしないと思うんだけど……。
「どうして答えてあげないの?」
今まで忘れてたなんてことはないよね?あんな大事な話し。
「ロザリーはアレクさんのことを愛してる?」
「アレクは素晴らしい人だと思います」
答えてくれない。
「ロザリーはアレクさんに幸せになって欲しくないの?」
「そんなことはありません。アレクには幸せになってもらいたい」
「なら、アレクさんに返事をしてあげて。きっと待ってるよ」
「リリーシア。私の話しを聞いていましたか?」
「話しを聞いてないのはロザリーだよ。どうしてアレクさんがロザリーに告白したかわからないの?」
「……わかりません」
「アレクさんは、ロザリーが居なくなっちゃうことに気づいてたから、それを止めたくて告白したんだよ」
『気づいてたのぉ?』
「そうだよ」
あの時。
ロザリーとルキアは誰にも言わずに王都を離れるつもりで、護衛していたシールとツァレンさんを撒いたって言っていたけど。
二人は、元からロザリーの邪魔をしないようにって言われてたのだ。
―私の目指す国はね。誰もが自分の意思で自由に生きられる社会なんだ。
「アレクさんはきっと、ロザリーが王都を出ることを望むなら、ロザリーの望みを尊重しようって思ったんだと思う」
自分の気持ちよりも、理想を重んじて。
だから、追いかけることなんてしなかった。
「でも、アレクさんはやっぱりロザリーと一緒に居たかったから、ロザリーのことを追いかけたんだよ」
『それなんだけどぉ。アレクは、どうやって一人で城を抜け出して来たの?確か、すごく監視されてたと思うんだけどぉ?』
「えっと……」
お城が炎上して……。水柱が上がって……。
「エルが手伝ったんだ。アレクさんが外に出るのって、すごく大変だったのは確かだと思う」
私も何が起こってたのか、良くわからないんだけど。
『そうよねぇ。アレクは大したことないって言ってたけど、簡単なわけないわよねぇ。……どうなの、ロザリー。これでもアレクは本気じゃないって、言い訳するつもり?』
「ルキアまで、酷いです。アレクは皇太子ですよ」
―馬鹿だな。
―アレクがロザリーを婚約者にするためにどれだけ根回ししたと思ってるんだよ。
「アレクさんはずっと、ロザリーと一緒になれる方法を探してるんだよ。アレクさんはロザリーの返事を待ってるのに、このまま何も言わずにヌサカン子爵と帰るつもりなの?」
「リリーシア。あなたは、わかっていない。人間とみなされない、言われもない罪を負わされる人間は存在するんです。そしてそれは、神聖王国クエスタニアでは顕著なことです」
―ラングリオンで吸血鬼種を擁護する動きが出てるから、神聖王国が警戒を強めてるって話しだ。
―向こうの連中は、王都で黒髪狩りをしてけん制するつもりなんだよ。
私に絡んできた人も、神聖王国の人だってシリルさんが言ってたっけ。
「私がアレクに応えれば、神聖王国との間に火種を作ることになります。あなたには、この平和な時代を台無しにしてしまうような選択ができますか?この国と、この国を背負う人を不幸にする選択を」
「そんなの違う。ロザリーは、吸血鬼種は好きな人も選べないって言いたいの?」
「私が生まれた時代から、吸血鬼種への迫害はずっと続いているんです。千年も変わっていません。昔よりも酷いと言っていい。悪魔が全く存在しないこの時代で、何故吸血鬼種が差別されるのですか。意味もない迫害です。黒髪というだけで吸血鬼種と言われるのはなぜですか?全く関係ない事で差別を受ける人が居るじゃないですか」
「本当にそれだけだった?王都で、ロザリーがメディシノとして治療した時に感じたことは嘘だったの?」
「それは……。でも……」
「ロザリー。信じて」
―この国の人々なら、それが出来ると信じているんだ。
「変わらなきゃいけないんだ。アレクさんは変えようとしてる。私はアレクさんを信じるよ」
「私は……」
ロザリーが俯く。
「私は、貴女ほど強くなれません」
「ロザリー……」
※
「戻りました」
お風呂から上がって、ライーザさんに案内されて皇太子の棟に行くと、アレクさんとヴェロニクさんがベランダでチェスをしている。
「おかえり。リリーシア、ライーザ」
「おかえり」
「……ただいま?」
二人が笑う。
なんだか変な感じだ。
「エルは?」
「まだ戻っていないよ」
『遅いね』
いつ戻るのかな。
テーブルの上のチェス盤を眺めていると、アニエスさんが紅茶を出してくれた。
「ありがとうございます」
「どうぞ、こちらへ」
椅子を引かれて、椅子に座る。
「お茶菓子を御用意いたしましょうか」
「大丈夫です」
「アニエスもライーザも、もう休んで良いよ」
「かしこまりました」
「かしこまりました」
二人が礼をして、別々の部屋に入って行く。
「エルを待つのかい」
「はい」
盤上で駒が動くのを眺める。
アレクさんが黒。ヴェロニクさんが白だ。
「エルもチェスが好きなんですよね?」
「そうだね。良く一緒に遊んだよ」
「だめだな。リザイン」
ヴェロニクさんが肩をすくめる。
終わったのかな?
「ナイトの動きが悪かったね。引くぐらいなら、こっちに動いて攻めに回った方が良かった」
「それだと……。あぁ、ルークを犠牲にして逃げ切れるのか。でも、アレクの優勢は変わらないね」
何を言ってるのかさっぱりわからない。
「リリーシア。チェスをやりたいなら、お勧めの本を持って来てあげるよ。待ってて」
「え?……はい」
ヴェロニクさんが自分の部屋に行く。
「駒の動きを教えてあげようか」
「あの……。聞きたいことがあるんですけど」
「何かな」
「ロザリーの返事を聞かないんですか」
「エルの気持ちを知りながら、それに応えなかった君が言うのかい」
それは……。
でも、今は……。
「無理に答えを出すことが酷なことがあるのは解るだろう。ロザリーの望みは、のんびり自分の好きな服を作ることだよ。ヌサカン子爵の元に居れば、それは十分に叶うことだ」
アレクさんは、ロザリーが帰っても良いって思ってるんだ。
そして、ロザリーも。このままアレクさんの元を離れることが正解だと思ってる。
……もう、私が出来る事って何もないの?
剣術大会を勝ち進んでも、これじゃあ……。
「クイーンから教えようか」
アレクさんが、いつの間にか綺麗に片付いていたチェス盤の中央に、駒を一つ置く。
「エルが気に入ってる駒だよ。駒の周囲と、斜めのライン、縦横のライン……」
アレクさんが指で示しながら説明する。
「どこにでも行ける」
どこにでも……。
「キングは?」
アレクさんがクイーンの代わりに別の駒を置く。
これがキング。
「キングが移動できるのは、周囲に一歩ずつだけ。それに、他の駒によって守られている駒は獲ることが出来ない」
「クイーンよりも弱いんですか?」
「キングが追いつめられてしまったら終わるからね。進んで戦場に出るわけにはいかないんだ。その代り、クイーンは自由に動ける駒なんだよ」
エルが好きな、自由に動ける駒。
扉が開いて、ヴェロニクさんが戻ってくる。
「はい、どうぞ」
「これは?」
「チェスの棋譜だよ」
「棋譜?」
作者は……。
「エドムントって、もしかして」
「伯爵のことだよ。彼はチェスで有名な人だからね」
「え?リリーシア、会ったことがあるの?」
「えっと……。今日、呼ばれて……」
「行ったの?本当に、君って信じられないな」
そんなに厳重に警備されている場所には見えなかったけど。
「エルも帰って来ないことだし、他の駒の動きと棋譜の読み方を教えてあげようか」
「はい」
※
アレクさんから一通り教わった後、チェス盤と棋譜の本を借りて部屋に戻ることにした。
チェスって難しい。
棋譜の本を開いて駒を動かす。
これは、ここで、これは、こっちで……。
あれ?ここにあるはずの駒がない。
どこかで間違えた?やり直さなきゃ。
『エル、帰って来ないね』
「うん」
いつ帰って来るのかな。
渡したいものもあるのに。
忘れないように出しておこう。
『どうしたの?……エレンから貰ったブローチ?』
「うん。エルに渡そうと思って」
『なんで?』
「だって、エルは暗殺者探しをしてるんだよ。……なんだか心配」
『そうだったね』
アレクさんが危険なことをエルにやらせるとは思えないけど。一緒に居られないことが多いから、エルに持っていて欲しい。
眠い。
眠気覚ましになると思って棋譜を並べているのだけど、余計に眠くなった気がする。
エルが帰って来るまで起きていたいのに。
エルに会いたい。
もし、私があの時、エルの気持ちを受け入れないままでいたとしたら……。
そんなこと今では考えられない。
アレクさんとロザリーは、後悔しないの?
静かな部屋に扉の開く音が鳴る。
帰って来た!
「おかえりなさい」
「ただいま」
エルが私の頭を撫でる。
「遅くなってごめん」
エルが着替えにクローゼットの方へ行く。
このページの棋譜はもう少しで終わりそうだ。
「あのね。今日、初めてチェスをやったんだ」
「初めて?」
「エルもチェスが好きだって聞いて」
「好きだよ」
「でも、まだ駒の動かし方に慣れなくて」
次はこっちのポーンを……。
「夕食会は楽しかったか?」
「うん」
『ルキアも居たのぉ?』
「居たよ。ロザリーもルキアも、エルに会いたがってた」
「俺も早く会いたいんだけど」
会うことはできるんだけど……。
「早く会えたら良いね」
どうすれば良いのかわからない。
「ナイトはそこに移動できない」
「え?」
「こっちのナイトを動かすんだ」
いつの間にか傍に来ていたエルが、私が動かしたナイトを元の位置に戻して、別のナイトを動かす。
「そっか」
もう少し。
ここにクイーンを移動して、終わり。
でも、どうしてこれで終わりなのかわからない。
もう眠いから、また今度エルに聞こう。
それより、あれを渡さなきゃ。
「あのね……」
「ん?」
「エルに渡したいものがあるんだ」
「渡したいもの?」
テーブルの上に出しておいた石をエルに渡す。
「ブローチ?」
「タリスマン。持ち主を守ってくれる石なんだって」
フェーヴが私を守ってくれたみたいに、この石もきっと特別な力があるに違いない。
「それならリリーが持っていた方が……」
「エルが持っていて」
「俺が?」
エルが少し悩んで、頷く。
「わかった。大事に持ってるよ」
良かった。
どうか、エルを守って。
「ありがとう」
エル……。




