表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧作3-2  作者: 智枝 理子
Ⅱ.冒険編
54/149

61 歓迎会

 ノックの音が二回。

「そろそろ出かけるぞ」

「シャルロさん」

「ちょうど良いわ。シャルロはカーリーと夫婦よね?結婚する方法を教えて」

「必要書類を揃え、二人でサインをした婚姻届と共に役所に持って行け。役人が無能じゃなければその日の内に婚姻が成立する。早く支度をしろ」

「……わかったわ」

 

 ※

 

 本日貸し切りの看板がかかったお店の扉を開くと、もう皆が集まっていた。

「いらっしゃい」

 パッセさん。

「待ってたわ」

「今日の主役が来たねぇ」

 セリーヌ、ユリア。

「シャルロ、リリー、ありがとう」

「二人はこっちだよぉ」

 エレインとイレーヌさんがソファーの方に連れて行かれる。

「シャルロ、リリーシアちゃん」

「カミーユさん」

 ルイスとキャロルは……。居た。

 目が合って、手を振る。

「さ、全員にドリンクが渡ったことだし、乾杯しようぜ」

「カミーユ、何か言いなさい」

「は?主催はセリーヌだろ」

「室長でしょ?」

「しょうがないな。……じゃあ、エレイン」

「はいっ?」

 エレインが上げた声に、みんなが笑う。

「驚かせて悪かったな。それから、イレーヌ」

「なぁに?」

「今日は二人の歓迎会だ。エレインは王都に来てから随分経って申し訳ないんだけど。皆、楽しんで行ってくれ。それじゃあ、良い夜に、乾杯」

 みんなが一斉にグラスを掲げる。

「乾杯!」

「さてと。説明しておくか。今日はビュッフェ形式だ。料理はエレインとイレーヌに合わせて、菜食主義者向けのもの。料理人が工夫を凝らした特別メニューを用意してるって話しだから楽しんでくれよ」

 椅子の取り払われたテーブルの上にはたくさんの料理が並んでいる。

 とても華やかで豪華な料理だ。

 ソファーとテーブルが別の場所に用意されてるから、そこで食べて良いみたい。

「料理を作っているのはパッセじゃないのか」

「違う。……デザートも最後に何か用意するって言ってたから、楽しみにしておいたら良い」

「これが全部、菜食主義者向けのメニューだって?」

「あぁ。どれも肉、魚、卵は一切使ってないって話しだぜ」

 うーん。

 あの料理。

 盛りつけの仕方がなんとなく……。

 あ。あれってトマトだよね?

 薔薇とかうさぎとか。

 これって。

「料理人は誰だ」

「厨房は立ち入り禁止だぜ」

「あの馬鹿は何をやってるんだ」

「やっぱりエルが居るの?」

「……二人とも、なんでわかったんだ?」

「料理」

「料理」

「理由になってねーよ」

『すごいね』

「内緒にしておいてくれよ」

「どうして?」

「ちょっと事情があるんだよ」

 死んだふりしてるから?

 ……関係ないよね。他の理由があるのかな。

「厨房に行ってくる」

「シャルロ、」

 行っちゃった。

「良いの?」

「まぁ、シャルロなら大丈夫だろ。リリーシアちゃんも食べてきたらどうだい?」

「私、カミーユさんに聞きたいことがあるの」

「聞きたいこと?」

「どうして、好きでもない人と付き合うの?」

「……また、えらくストレートな質問だな」

 カミーユさんがため息を吐く。そして、私の隣に並んで壁に背をつける。

 ここからは皆の様子が良く見える。

「付き合って、その人のことを知れば好きになるかもしれないだろ?」

「好きになるのは恋人になってからってことですか?」

「そういうことだ」

「今まで誰も好きになれなかったのに?」

「誰に聞いたんだ」

 えっと……。言わない方が良いよね。

「結婚してって言われたら結婚できますか?」

 カミーユさんが苦笑する。

「流石に、好きでもない相手と結婚は無理だ。そこまで責任は持てないからな」

 良かった。

「この前、告白したんだ」

「えっ?……それは、その、好きな人に?」

「そうだよ。救いようのない言葉で振られた。だからきっと、この先もずっと変わらないんだと思う。もともと何かを求めていたわけじゃないからな」

 そういう愛し方もあるのかな。

『リリー。カミーユ、行っちゃったけど』

「あ」

 もう少し、話しをしたかったんだけどな。

 でも、カミーユさんの気持ちはずっと変わらないみたいだ。

 今好きな人以上に好きになれる人って、現れないのかな。

『エレインのところに行ったみたいだね』

 エレインが赤い顔でカミーユさんと話してる。

 あ、笑った。

 楽しんでるのかな。

「リリー。いつまでもこんな端に居ないで、料理を食べたら?」

「キャロル」

「はい。あーんして?」

 少しかがんで口を開くと、キャロルが私の口の中に何か入れる。

 とってもふわふわだ。

「トーフですって」

「トーフ?」

「聞いたことのない食材だけど、美味しいわ」

「うん」

 美味しい。

「ほかにも美味しそうな料理がたくさんあるわ。一緒に選びに行きましょう」

「うん」

 

 

「リリーシア」

「エレイン?」

「あのね、私、今度カミーユと一緒にデートすることになったの」

「わぁ。良かったね!」

「でも、デートって何をすれば良いの?」

「一緒に歩いたり、手を繋いだり、ご飯を食べたり、買い物したり……」

「そういうことじゃなくて、具体的なことを聞いてるの」

『ちゃんと具体的に説明したと思うけど』

「えっと……?」

「どこを歩くのがデートなの?何を食べるのがデートなの?」

「二人で一緒にすれば全部デートになるんじゃないかな」

「えっ?世界が変わるの?」

 横で爆笑が起こる。

「エレインって面白いわ」

 セリーヌ。

「カミーユ、変なこと吹き込むなよ」

 ノエルさん。

「あぁ?何の話しだ?」

「二人がデートするって話し、みんな知ってるの?」

「エレインがデートしたことないって言うから、カミーユに任せたのよ」

 セリーヌがウインクする。

『セリーヌに頼んで良かったね』

「うん」

 私よりも断然頼りになる。

 

 

「これ、トマトの味がするけれど、トマトなのかしら」

 イレーヌさんが食べてるのは薔薇の形のトマトだ。

「トマトです」

「不思議なトマトね」

「飾り切りです」

「え?これ、包丁で加工しているの?」

「はい」

「面白いわ。料理も全部、野菜だなんて信じられないぐらい素敵だし」

 エルは完璧なの。

 

 

「かんぱぁい」

「かんぱい」

 ユリアとグラスを合わせる。

「良い飲みっぷりだねぇ」

 今飲んだのも美味しかった。

 ルシアンさんだ。

 そうだ。ルシアンさんに言いたいことがあったんだ。

「何だ?」

「この間は、ありがとうございました」

「この間って……。あぁ、舞踏会か」

「ふふふ。リリー、目立ってたよねぇ」

「あの可愛い子は誰だって散々聞かれたんだぜ」

 可愛い?

「シャルロに口止めされたから誰にも言ってないけどな」

「ありがとうございます」

 あれ?そういえば、ルシアンさんって魔法研究所の人。

「どうしてここに居るんですか?」

 ユリアが笑う。

「酷い言われようだな」

「一緒に行こぉって私が誘ったんだぁ」

 そっか。

「ふわふわのお花、可愛いねぇ」

 これは、エルに買ってもらったカチューシャ。

「流石、エルだねぇ。リリーにぴったり」

 流石?

「こういうの選ぶの、上手いんだよぉ」

 そうなんだ。

 

 

「リリーシアさん、もう喪服は着ないんですか?」

 ルードさん。

「あんな可愛い服着るの、恥ずかしい……」

「まだそんな事言ってるの?」

 ルイス。

「今日の服も可愛いよね」

 アシューさん。

「これは、キャロルが……」

 後ろから誰かに抱きつかれる。

「とっても可愛いわ」

「マリー?」

「似合っているよ」

「アリシアまで」

 こんなに可愛い服……。

「リリーシアってどうしてそうなの?」

「原因は解らなくもないんだが」

「何か理由があるの?」

「うちの末の妹が少し変わってるんだ」

「末の妹?」

 メルはとってもかわいい女の子。

 早く会いたいな。

「もうすぐ私の家に来るわ。早ければバロンスの朔日に到着する予定よ」

「寄り道はしないと思うが」

「剣術大会に合わせてオルロワール家に来るグラシアルの一行ってさ。姫君の一行だよね?」

「良く知ってるわね、アシュー。彼女はアリシアとリリーの……」

「血は繋がっていないが、幼少時代を一緒に過ごした仲なんだ」

「リリーシアって、お嬢様だったの?」

「え?違うよ。だって私は……」

 口を塞がれた。

「現グラシアル女王は龍氷の魔女部隊の隊長。私たちは崩御した女王と縁のある親衛隊の血筋なんだよ」

 えっと……。合ってるよね。

 私は女王の娘の務めを果たせば、城に帰って龍氷の魔女部隊に入るはずだったんだから。

『アリシア、大変だね』

「本当に居たのか。魔女部隊って」

「伝説の存在だよね」

「グラシアルではしばらく他国との戦争は行われていなかったからな。それでも、国の最高の部隊として存在し続けていたんだよ」

「んん」

 苦しい。

「あぁ、悪かったな」

 アリシアがようやく私の口を離す。

 あれ……。

『リリー、』

「リリー?」

 ふかふか……。

「大丈夫?」

「すまない、マリー」

「大丈夫よ。眠いの?リリー」

「このまま寝そうだな」

「どこかで休ませた方が良い」

「うん……?」

「ちょっと、カミーユ!」

「なんだよ」

「奥の部屋空いてない?リリーが……」

 

 

「リリー」

 エルの声。

「エル!」

 エルだ。

 会いたかった。

「リリーは貰っていくからな」

 あれ?

 カートとコートニーが居る。

『喋るなよ』

 他にもいっぱい。

 レインコートを着て顔を隠してる人の周りに。

 ってことは。

「アレクさん」

『喋るなって言っただろ!』

 どうして?

「本当に、君の瞳は騙せないね」

「だって、そんなに精霊連れてる人、アレクさんだけだから」

 アレクさんは自分の体の中に精霊を隠したりしない。

 あれ?契約してないと入れないんだっけ?

 忘れちゃったな。

 

 ※

 

『嫌な場所』

 え?

「リリーシア」

「うん……?」

 アレクさん?

「この中に精霊は居るかい」

 アレクさんの周りに精霊が居ない。

 エルの中に精霊が居るかはわからないけど、声は聞こえない。

「誰も、居ない……?」

 じゃあ、今の声は誰?

「あの棺は何色に見える?」

 白塗りに金縁の箱。

 その中から放たれる光は、前に一度見たことがあるのと同じ。

「まだらいろ」

 

 斑色……。

 色んな色がばらばらに見える。

 ……そっか。色が混ざってないだけなんだ。これ。

 境界線があるからこう見えるんだ。

 境界?

 リンの力?

 そのせいで混ざらないのかな。

 複数ある、色んな力が。

 赤、水色、黄色、黒、青、緑、紫、白、黄緑……。

 綺麗。

 でも、この光。金色と銀色はないんだ。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ