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旧作3-2  作者: 智枝 理子
Ⅱ.冒険編
48/149

55 緑の髪

 エルが私の手を引いて、ルーベルの脇に行く。

「これ、転移の魔法陣?」

「そうだよ。オリジナルの転移の魔法陣だ。この輪の中に入ってなきゃいけない」

 見慣れたものよりかなり大きいけど。

 中央部分に描かれてる図柄は、城にあった魔法陣とそっくり。

 エルが私を引き寄せて、魔法陣の中央に立つ。

「温度を上げる神に祝福された光の源よ。黎明の眷属よ。我に応え、その力をここに。クラルテ!」

 光の玉?

「こんなに明るいのに?」

「スタンピタ・ディスペーリ・セントオ・メタスタード」

「えっ?」

 封印・解除・中心・転移?

 魔法陣が輝いて。


 転移する。


「ここは?」

「オートクレール地方にある遺跡。前にカミーユと一緒に来たのはここなんだ」

 遺跡に飛ぶから、先に光の玉を出しておいたんだ。

 でも、今の言葉、どういうこと?

「あの、さっきの……」

『エル。誰か居る』

 誰か?

『右だ』

「……おい、誰だ。出て来い」

 エルが私を抱きしめる腕が強くなる。

「エレインの知り合いか?」

 エレイン?

「エレインを知っているの?」

 エルの見てる方に現れたのは、緑の髪の女の人。

「知ってるよ。俺はエルロック」

 私も自己紹介した方が良いのかな。

「リリーシアです」

「……イレーヌよ。エレインは今、どこに居るの?」

「ラングリオンの王都だ」

「王都?」

「ガラハドが王都に居るから、会いに行ってる」

「ガラハド様、王都に居るの?」

 そうだ。

 エレインって、隊長さんに会いに来たトマトのキャラメルが好きな女の子。

 エルが遺跡で会った子だって、イリスが言ってたよね。

「ガラハドはラングリオンの王都守備隊三番隊隊長だ。……いい加減、こっちに来たらどうだ?」

 イレーヌさんは、私たちと遠く距離を置いたままだ。

「あなたたち、どこから来たの?」

「竜の山からだよ」

「嘘。竜の山、飛べなかったわ」

 飛べない?でも、エルは竜の山にあった転移の魔法陣を使ってたみたいだけど。

「スタンピタ・ディスペーリ・ナイリ・メタスタード」

 封印・解除・爪・転移。

 また魔法陣が光って……。


 同じ場所?

 ……違う。少しずれてる。

 ここ、魔法陣が二つあったんだ。

「本当だ」

「ねぇ、エル、今のって?」

 今の言葉って。

「後で説明する」

 そういえば、前にアレクさんが言ってた。

 封印・解除・中心・転移は、転移の魔法陣を使うための呪文だって。

 封印解除って、封印されている力を解放するものじゃないの?

 ロザリーだってその呪文を唱えて、封印を解いたのに。

「俺たちが竜の山の魔法陣を使ってここに来たのは確かだ。魔法陣について詳しく知りたいなら、王都に来い。エレインは今、俺の知り合いのところに居るから、会いたいなら案内するぜ」

「連れて行ってくれるの?」

「いいよ。ここからそう遠くないし」

「ありがとう。……あの、ちょっと仲間に報告してくるから待っててくれる?」

「あぁ」

 エルと一緒に魔法陣の外へ出ると、イレーヌさんが右側の魔法陣の中央に立つ。

「スタンピタ・ディスペーリ・ハラーロ・メタスタード」

 封印・解除・髪・転移。

 魔法陣が輝いて、イレーヌさんが消える。

「ハラーロか」

 今の人は魔法使いじゃない。

 なのに、魔法陣が使えた。

 魔法使いじゃなくても、魔法陣が使えるんだ。

「髪って意味だよね?……どういうこと?」

「これは、グラシアルで使われていた転移の魔法陣の原型なんだよ」

「原型?」

「この魔法陣はグラシアルのどこかにもある。おそらく、その魔法陣の原理について研究した結果生まれたのが、女王の力と氷の精霊の力で管理されたグラシアルの魔法陣だ」

「えっと……。この魔法陣は、グラシアルの魔法陣よりも歴史が古いの?」

「そういうことだ。今みたいに、呪文を唱えることで誰でも使える」

「スタン……」

「こら」

「私が言っちゃだめなの?」

「だめに決まってるだろ」

 やっぱり、だめなんだ。

「あの、もしかして、砂漠にもこの魔法陣、あるの?」

「良くわかったな。この魔法陣で色々実験してる時に飛んだ先の一つが砂漠なんだ」

「前に私に聞いた古い言葉って、全部転移の魔法陣で使う言葉だったの?」

「そうだよ」

 セントオ、ナイリの他に、体を表すコールポ、瞳を表すプピーオ、心臓を表すコッロ、そして、さっきの。髪を表すハラーロ。

 全部で六つ。

「どうしてこんな言葉なの?」

「それについては研究中。カミーユが転移の魔法陣について研究してる」

「あ。アリシアも、その研究を手伝う為に来たんだよ」

「そういえば、そんな約束もしてたな。プリーギの件で手伝ってくれたのも、すごく助かったよ」

 エルが死んだって噂を聞いて、急いで来てくれたんだけど。

 そういえば、メルって今、どの辺りに居るのかな。

 王都にはいつ来るんだろう。

「っていうか、来ないな」

 どこまで行ったのかな。

 あ。せっかく時間が空いたなら。

「あのね、時間があるなら、魔法の練習したいんだけど……」

「帰ってからで良いだろ?こんなところで大きな力を使うのは危険だ」

 だめなんだ。

 砂の魔法……。

 光を放つぐらいなら、イメージでどうにかなりそうなんだけど。

「練習か」

 そう言って、エルが目の前で少し浮いたかと思うと、突然、天井に向かって高く飛びあがる。

「エルっ?」

 このままじゃ頭を天井にぶつけちゃう……。

 そう思った瞬間、エルが回転して、天井に着地した。

 天井に吸いつく魔法?

 じゃ、ないよね?

 今度は、エルがそのまま落下する。

「エルっ!」

 上でやっていたのと同じように、エルが宙返りして、魔法を使って地面にふわりと降りる。

 あぁ、びっくりした……。

「難しいな」

「エルの方が危ないことしてるよ!」

 失敗したら大怪我しちゃうに違いない。

「飛ぶって、どういうイメージだと思う?」

「え?」

 今の、飛ぶ練習?

「えっと、ドラゴンみたいに?」

「ドラゴンか……」

 エルが口元に手を当てて何か考えてる。

「あ、魔法陣が光ってる」

 転移の魔法陣で転移して来たのは、イレーヌさん。

 弓矢を背負ってる。弓が使える人なのかな。

 手には、ワインの形をした包み?

「ただいま」

「おかえりなさい」

「じゃあ、行きましょうか」


 エルに続いて歩いて行くと、水に浸かった場所に出る。

「湖?」

 ここ、遺跡なんだよね?遺跡にも湖ってあるの?

「そうだ。この湖を渡らなきゃいけないんだった」

「向こうに渡る方法ならあるわ」

 イレーヌさんがそう言って、タン、タン、タタタン、タタタン、タンと手拍子をする。

 すると、目の前に大きな魚が顔を出す。

 魚がいるってことは、ちゃんとした湖なのかな。

『これ、前に襲って来た亜精霊じゃない』

「え?」

 これ、亜精霊なの?

「お前のペットなのか?これ」

「ペットじゃないわ。この子がずっと小さい頃からの友達よ。この子に乗って移動しましょう」

 亜精霊と友達の人って結構居るのかな。

 トゥンク村の人たちもアラクネを敵だとは思ってなかったよね。

「出口はわかるんだよな?」

「もちろん」

「なら、後で合流しよう」

「三人ぐらい乗れるわ」

「そいつは俺を乗せたくないみたいだぜ」

「……そうね。ちょっと今日は機嫌が悪いみたいだわ」

 さっき、ナターシャが襲って来たって言ってたけど。

 戦ったのかな。エル。

「リリー、魚は平気か?」

「え?あの……」

 もしかして、また置いて行かれる?

 エルが私を見て。

「わっ」

 私を抱えた。

「じゃあ、後で」

 そう言って、エルが宙に浮く。

 ……もしかして、飛んで行くの?

「あなた、精霊なの?」

「精霊じゃないって言ってるだろ」

 そんなこと言われてたの、今が初めてじゃないのかな。


 エルが湖の上を飛行する。

 なんだかふわふわしていて、まっすぐ飛んでる気がしないけど。

「エル、大丈夫?」

「集中が乱れると落ちるかも」

「えっ?」

 突然、ぐらりと揺れて、落下する。

 水に落ちる覚悟をしたけれど、何かの上に降りたみたいだ。

 下を見ると……。氷の上?

 湖に氷なんて浮かんでなかったよね?

 エルが魔法で氷を出したの?

「落ちたらリリーが助けて。俺は泳げないから」

「泳げないの?」

「泳げないよ。馬にも乗れないし」

「なんだか意外かも。何でも出来そうな気がするのに」

「それはリリーの方じゃないか」

「私、そんなに出来ることないよ」

 エルみたいに魔法が使えるようになるには、どうすれば良いのかな。

 エルがもう一度魔法を使って飛ぶ。

「王都まで、一緒に馬に乗ってくれないか」

「私、誰かを乗せたことないよ?」

「乗れるんだろ?」

「そこまで上手くできないよ」

 まだ教えてもらったばかりで、実戦経験もほとんどないのに。

「心配しなくても、バニラが居るから大丈夫だよ」

 えっと……。大地の精霊は、生き物と心を通わすことが出来るんだっけ……?


 湖の端、遺跡の別の場所に、エルが着地する。

 ここにはボートがあるんだ。

 後から、魚の亜精霊に乗ったイレーヌさんが来て、亜精霊から降りる。

 亜精霊はそのまま湖の中へ入ってしまった。

「なんだか冷や冷やしたわ。大丈夫なの?」

「まだ練習中だ」

「危ないわね。彼女を運ぶぐらい、私がしてあげたのに。女の子を乗せるならきっと嫌がらないわよ」

 亜精霊って、性別がわかるのかな。

「こいつ、湖のボートを勝手に移動させたりするか?」

「このボートを?この子はそんなことしないわ。でも……」

 エルを襲うぐらいだから、凶暴な時もあるのかなぁ。

 っていうか。

「あの、降ろして」

 言わないと、エルは降ろしてくれない。

「勝手に居なくならないって言うなら良いけど」

「居なくならないよ」

「迷子にならない?」

「ならないよ!」

 どうして、そういうこと言うのかな。

『私たちも一緒に居るから大丈夫よ』

『居なくなればすぐに気づく』

 居なくならないって言ってるのに。

「降ろして」

 エルがため息を吐いて私を降ろす。

 歩けないわけじゃないのに。

「あなたたちって、どういう関係?」

「夫婦だよ」

「夫婦?」

 お揃いの指輪はつけてるんだけど。

「何に見えたんだ」

「どこかのお嬢様と過保護な従者?……にしては、口が悪いかしら。駆け落ちカップル?」

 恋人同士に見えたなら、嬉しいかも。でも。

「私、お嬢様なんかじゃないよ」

「俺は従者でも良いけど」

 ひどい。

「だめだよ」

 夫婦なのに。

『エルが従者なんて、絶対無理よ』

『誰かに傅くわけがない』

『似合わないねー』

 守られたくないって言ってるのに。

 エルのばか。


 ※


 三人で遺跡を出て、遺跡の近くにあるという街へ向かう。

「あなた、ラングリオンの人?」

「違います。グラシアルの出身です」

「それで転移の魔法陣に詳しいの?」

「え?詳しくないです」

 城の中では、魔法使いと一緒じゃなきゃ使えなかったし、封印解除の言葉は喋っちゃいけない言葉だから、私には使えない。

「エルロックは詳しいみたいだけど」

「エルは凄い人だから」

「何者なの?」

「えっと……。天才錬金術師なの」

「あぁ、そういうこと」

 今のでわかるのかな。

「持ってるのってワインですか?」

「えぇ。ガラハド様に贈り物よ」

「隊長さんと知り合いなんですか?」

「隊長?……そう。王都の守備隊の隊長を長くしているのね」

 エルの話しでは、そんなに昔からってわけじゃなかったと思うけど。

「確か、アレク……、シス様と戦って、アレクシス様が勝ったから王都に来たはずです」

「ラングリオンの皇太子殿下ね。武勇に優れた方と聞くわ」

「うん。ものすごく強い人です」

 アレクさんに戦ってもらうまでレベルを上げるには、圧倒的に経験が足りないんだろう。

 アレクさんは、きっと色んな人と戦ってる。限られた空間で同じ人とばかり戦っていたような私では、まだまだ歯が立たない。

 剣術大会なら、もっと色んな強い人と戦って経験を積めそうな気がする。

「そうだ。もうすぐ剣術大会が始まるんです」

「剣術大会?」

「ラングリオンで、バロンスにある大会」

「そういえば、そんなお祭りもあったわね。あなたも出場するの?」

「えっ?……しません」

 危ない。エルに聞かれたら大変なのに。

「エルロックは?」

「エルも、出ないんじゃないかな」

 戦うことはあまり好きじゃなさそうだから。

「そうなの。王都には二十八日に着く予定だし、お祭りを見て歩くのも楽しそうね」

「二十八に着くの?」

「聞いてなかったの?さっき、エルロックが説明してたじゃない」

 さっき、エルがイレーヌさんと一緒に見てたのって地図だったんだ。

『リリーは全然聞いてなかったよね』

 聞いてなかったんじゃなくて、二人で難しいこと話してたみたいだから。

 それに……。

「なぁに?」

「綺麗な緑の髪ですね」

「エレインと同じよ」

 そうなんだ。

「私、まだ会ったことないんです」

「そうなの。珍しい?」

 緑の髪の人って珍しいけど。

「私の一番上の姉も、緑の髪なんです」

 この髪の色を見ていると、イーシャを思い出す。

「そうなの?もしかして、血が繋がってないお姉さん?」

「はい。どうしてわかったんですか?」

「そんな気がしたのよ」

「?」

 どうしてそう思ったのかな。

 

 


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