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旧作3-2  作者: 智枝 理子
Ⅱ.冒険編
43/149

50 実物よりも記憶の方が怖い

「膝枕して」

「うん」

 木陰に座ると、エルが私の膝に頭を乗せて目を閉じる。

 その頭を撫でる。

 遅い昼食を食べた午後。

 さわやかな秋の風が吹いて、気持ち良い。

 見上げると、精霊たちがエルから出て、木の上でお喋りしてる。

「ねぇ、エル。こんなにのんびりしてて良いの?」

「尾行は?」

「まだ居るみたい」

 エルと一緒に居られるのは嬉しいのだけど、見られてると思うと落ち着かない。

「ここに、何を調べに来たの?」

「この村で調べることはないよ。少し変だけど」

「レイリスも変って言ってた。どういうこと?」

「村ぐるみで何か隠してる」

「そうなの?」

 そんな感じはしないけど。

「村に一軒しかない宿で働いているのがメイド一人。それ以外の村人は一切見かけないのはなんでだと思う?」

「みんな果樹園に居るんじゃないの?」

「いくら手入れが必要だからって、村人全員が一日中果樹園にかかりきりなんておかしい。半分ぐらいは村に居ないで、どこかに出かけてるんじゃないか」

「どこに?」

「果樹園にあるのは苗木だ。収穫が出来る木なんて一切ない。リリーが今日、タルトタタンに使った林檎はどこから来たんだと思う?」

 林檎……。

 あ。そういえば、この辺りの林檎も収穫した跡があるよね。

 果樹園じゃなくても林檎はある。

「みんな、林檎を取りに行ってるの?」

「正解。山には自生の果実が多くありそうだし、川魚もいるからな。ランチのメニューだって、山から採ったもので作ってただろ?」

「うん。山菜のパスタ、美味しかったね」

 あ。魚って言えば……。

「昨日は鰻のマトロートを食べたんだよ」

 林檎のお酒で煮込んだ料理。

「知ってるのか?」

「全然知らなかった。アレクさんが詳しく教えてくれたんだ」

「気に入った?」

「うん。美味しかった」

「作って欲しいなら今度作るよ。簡単な料理だから。川で釣りをしたらすぐに作れる」

「釣り?エル、釣りをするの?」

「気が向いたら」

 釣りなんてやったことがない。

 どうやってやるんだろう。

「今は釣竿は持ってないけど。今度、一緒に行くか?」

「うん。行きたい」

「じゃあ、リュヌドミエルの休みを貰えたら行こう」

「え?それって、結婚してから一か月のことじゃないの?」

「休みを潰されただろ。だから、アレクに休みをくれって言ってある。今やることが片付いたら、誰にも邪魔されないところで、のんびりしよう」

「うん」

 剣術大会が終わって、紫竜フォルテを倒せば、のんびりできるんだよね。

「綺麗な瞳」

「え?」

「こんなに綺麗なものを他に知らない」

「……すぐ、からかうんだから」

 いつも急に言うんだから。

 そんなこと言われたら。どうして良いかわからない。

 黒い髪も、黒い瞳も。どうして、エルはそんなに褒めてくれるの。

『エル、尾行が居なくなった』

 本当だ。こちらを見てる人は誰も居ない。

「誰から尾行されてるの?」

「言っただろ?村人の半分ぐらいは居ないって。全員が山に行ってるわけはない。俺たちを尾行してたのも村人だ。村に来た冒険者の動向を監視してるんだよ」

「どうして?」

「何か隠してるから」

「何を隠してるか、エルは知ってるの?」

「知らない。それを探しに行くんだ」

 エルが立ち上がって、大きく伸びをする。

「リリー、蜘蛛は大丈夫か?」

「えっ?」

 どうして、急に?

 蜘蛛……。もしかして、アラクネ?

「あの、大丈夫だよ。怖くない」

 もう一度会っても、きっと大丈夫!

「宿で待ってても良いよ。村から出ない限り、監視はされても何かされるってことはないだろうから」

 エル、アラクネを倒しに行くのかな。

 私が怖がってるから、置いて行くの?

 そんなの、嫌だ。

「連れて行ってくれるって言ったよ。もう、置いて行かないで」

 お願い。

「怖かったら隠れてて良いから」

 エルが私に手を差し伸べる。

 その手を取ると、エルが私を引っ張り上げる。

「一緒に行こう」

 あぁ。良かった。

 連れて行ってくれるんだ。


 ※


 エルに続いて山道をしばらく歩くと、道に出た。

 ここ、昨日通った道なのかな。

『ねぇ、リリー。どうしてボクを呼ばなかったの?』

「え?」

『もしかして、勝手に居なくなったから怒ってる?』

 そういえば、私が気を失ってる間にエルに呼ばれたんだっけ。

「怒ってないよ。イリスはエルの精霊なんだから、エルの傍に居てあげて」

『そうだけどさ』

「イリスこそ怒ってるの?」

 私が呼ぶの、忘れてたから。

『リリーがあのまま目覚めてなかったらどうしようって、心配になっただけだよ。ボク、レイリスがリリーに何をしたのか良くわからなかったからさ』

 そっか。心配してくれてたんだ。

「大丈夫だよ。アレクさんもレイリスも私のこと、絶対守ってくれるから」

『絶対なんて言える?』

「うん。だって、二人ともエルが大切だから、エルの為に私を守ってくれると思う」

『……そうだね』

 二人と一緒に居て分かったのは、二人ともエルが大好きだってことだから。

 ……アレクさん。エルに会う為だけにここに来たんだよね。


 道の先、丁字路のまっすぐ進む道を塞ぐように、通行禁止と書かれた立札がある。

「何?これ」

「来る途中で見なかったのか?」

 アレクさんと村を目指してる途中?

「村に行く途中で立札なんて見なかったよ」

 でも、アレクさんと歩いた道って真っ直ぐだったから、左の道も使ってないはず。

「違う道を通って来たのかな?」

「村の門から入ったんだろ?」

「うん」

「なら、この道で間違いない」

 じゃあ、昨日は看板がなかったのかな。

 エルが立札を掴んで揺らす。

「やっぱり立て方が緩いな」

 エルが立札を掴んで揺らす。

「あれ?でも、立札って壊したんだよね?」

「誰かが直したんだろう」

 いつの間に直したんだろう。ヴィアリさんが誰かに頼んだのかな。

 何か気になることがあるのか、エルが立札の周囲を調べて、道の先を眺める。

「アラクネが出たのは土砂崩れの辺りだったな」

「うん。道沿いだよ」

 きっと、また居るんだろうな。

 大丈夫、大丈夫だから……。

「会うだろうから覚悟して」

「あのね、手から、糸を出すの。それから、足が……」

 エルが目の前に立つ。

「落ちつけ」

「……うん」

『ちょっと先の様子を見て来るよー』

「頼む」

『いってらっしゃい、ジオ』

「相当苦手なんだな」

『一度、大量に蜘蛛の巣を浴びてるからね』

「どういう状況だよ」

『使われてない部屋に勝手に入るからだよ』

 そんなつもりは全くなかったのに。

 慣れない場所に行って、ソニアも居なくて。

 入った部屋が、埃だらけで、蜘蛛の巣が張っていて。

「蜘蛛よりも、蜘蛛の巣が苦手なのか?」

 部屋の先に進もうとしたら……。

『まさか。頭上から蜘蛛が落ちて……』

 背中に蜘蛛が……。

「イリス、やめて」

 あぁ、もう、だめ。

 エルが、私の肩を抱いて背中を撫でる。

『ごめん』

 ……足手まといだよね、私。

『もう少し楽しいこと考えよぉ』

『歌でも歌ったら?』

「歌か」

『そういう時はバニラよねぇ』

『私は歌わないぞ』

『バニラ、歌を歌えるの?』

『バニラの歌って落ちつくのよね』

『聞きたい』

『アンジュのリクエストよぉ』

『私も一緒に歌うわ』

『……メラニー。周囲の警戒を怠らないでくれ』

 メラニーがくすくす笑う。

『了解』

 バニラはいつも優しい。


 バニラとナターシャの歌声を聞きながら歩いていると、ジオが戻って来た。

「ジオ、おかえりなさい」

「おかえり」

『ただいまー。やっぱり道沿いに居たよー』

 次は、大丈夫。

『怪我してるみたいだけどねー』

 怪我?

「昨日、戦ったからかも」

「思い出さなくて良いよ」

「あの、右手と、足を三本怪我してると思う」

 最後に見た時はそれだけ。

『怪我をしてるのは足だけみたいだよー?動きがすごく鈍いから、全部の足を怪我してるんじゃないのかなー?』

 また誰かと戦ったのかな。

 ……そういえば、アレクさん。どうして仕留めなかったんだろう。

 いきなり襲いかかったのは私だから、アラクネに戦う意思はなかったのかもしれないけど。

 昨日みたいなことにならないように気をつけなきゃ。


「アラクネだ」

 しばらく歩いた先に、上半身が女の人で下半身が蜘蛛の姿をしたアラクネが……。

 あれ?

「昨日のアラクネと顔が違う」

 違うアラクネ?

「このまま捕まえてみるか」

「え?捕まえるの?」

「アレクから頼まれてる。アラクネは珍しいから、亜精霊の生態調査に使うんだよ。ここで待ってて」

 エルが荷物から何かを取り出して先に行く。

「どうしよう」

『大人しくしてなよ』

「イリス、行かなくて良いの?」

『どうせすぐに終わるんじゃない?』

 エルが闇の魔法を使う。

 それから、何か言葉を唱えたかと思うと、アラクネがエルの方に吸い込まれていった。

 あれ?これって、確か、王都に亜精霊が現れた時にレティシアさんがやってなかったっけ?

「リリー」

 呼ばれて、エルの方に走って行く。

「それ、前にも一度見たことがある」

「そういえば、王都で亜精霊が暴れた時にレティシアが使ってたな」

 やっぱり同じものなんだ。

 亜精霊を捕まえる小瓶。

 エルが持ってるものを外側から見ても、何が入ってるかわからないけど……。

「もう出てこないかな」

「どうだろうな」

 瓶を割ったら出てきちゃうのかな。

 割と簡単に出せるものなのかもしれない。だから、王都で亜精霊が暴れてたんだよね。

「行くぞ」

「うん」


 周囲を警戒しながら歩く。

 あれ?これって土砂崩れ跡?

 ……たぶん、昨日来た時と同じ場所だよね?

 エルが首を傾げて考えた後、道の右側を眺める。

「バニラ。この車輪の跡を追えるか?」

 車輪の跡?

『可能だ。メラニー、手伝ってくれ』

『了解』

『リリー、エルを案内してあげてねぇ』

「うん」

 エル、何を調べてるのかな。

 この先に何があるんだろう。


 道のない林の中をメラニーとバニラについて行くと、二人が洞窟の前で止まる。

『この中に続いている』

 中は暗くて、どこまで続いてるのかわからない。

「真っ暗だね。光の玉を使う?」

「いや」

 エルが人差し指を立てて、呪文を唱える。

「温度を上げる神に祝福された光の源よ。黎明の眷属よ。我に応え、その力をここに。クラルテ!」

 クラルテって……、光とか灯りって意味だっけ?

 エル、光の精霊なんて連れてないよね?

「魔法?」

「リリーもやってみて」

「え?精霊が居なくても使えるの?」

「呪文の詠唱で使えるんだ」

「そうなんだ。えっと……」

 エル、なんて言ってたっけ。

「温度を上げる神に祝福された光の眷属よ。我に応え、光をここに。クラルテ!」

 エルと同じ光の玉をイメージすると、目の前に同じ輝きを持った球体が浮く。

「わぁ!」

 できた!

「見て、エル。初めて魔法が使えたよ!」

 イメージしたものが、本当に出来た。

 私にも出来るんだ。

「光の精霊を感じる場所では光の魔法が使えるらしいんだ」

「どうやって消すの?」

「自分で作ったものなら自分で消せる。……そうだな。ロウソクを吹き消すイメージで魔法を消してみたらどうだ?」

 消えるイメージ……。

「消えて!」

 目の間で、作ったばかりの魔法の光が消える。

 同時に、エルの傍にあったエルの魔法も消えた。

「あれ?えっと……」

 別の人の魔法も消えちゃうのかな。

「温度を上げる神に祝福された光の眷属よ。我に応え、光をここに。クラルテ!」

 あれ?何も起こらない?

「温度を上げる神に祝福された光の源よ。黎明の眷属よ。我に応え、その力をここに。クラルテ!」

 もう一度、光の玉が出来る。

「リリー。光の玉をイメージして、光れって言ってみて」

 光……。

「光れ!」

 何かが弾けたように、目の前が急に光る。

 驚いていると、急に腕を引かれて抱きしめられた。

 ……失敗したんだ。

「大丈夫か?」

「うん」

 顔を上げると、光はもう収まっていた。

「まだ、上手く使えないみたい」

 眩しかっただけで、攻撃魔法じゃないよね?今の。

 魔法の攻撃って、肉体的なダメージがないから分からない。

 エル、平気なのかな。

「魔法の練習は今度しよう。呪文の詠唱はまだ実験段階の技術だ。無暗に使うなよ」

「うん」

「じゃあ、中に入ってみるか」

 エルと手を繋いで、洞窟の中に入る。


 ※


 あちこちに分かれ道がある。

 メラニーとバニラが居なかったら、すぐに迷子になりそう。

 ここ、自然に出来た洞窟じゃないよね。誰かが穴を掘ったみたいだ。

 宝石や鉱石がありそうな地質でもないのに、どうしてこんなにあちこち掘ってるんだろう。

「この先に何があるのかな」

 山の反対側に続いてる?

 それとも、この先に何か隠してるのかな。

「怖くなったら、目を閉じて耳を塞いでいて。きっと攻撃はされないと思うから」

 それって……。

 もしかして、この先にアラクネが居るの?

「……うん」

 あ。アラクネが道の途中に居たのって。ここに来ようとする人を妨害する為?

 ……アレクさん、知ってたのかな。アラクネの目的。

―これ以上の戦いを望むなら、殺さなければならない。

―私たちは東の村を目指しているだけだ。今すぐに去れ。

 エルも、ここに来るまでには、わかってたみたいだ。

 エルがここに来るってことは、村の人たちが隠してるものってアラクネの巣?それとも、同じ場所に何かあるのかな。

 ……?

 後ろを振り返る。

「どうした?」

「……なんでもない」

 気のせいかな。

 何か、後ろで金属音がしたような気がするんだけど。

 近くに誰かいるような気配はない。

 すごく遠くで鳴ったような気がするから、風の音かもしれない。


 ずっと似たような道を歩き続けると、急に天井の高い空間に出た。

 今までの所よりも少し広い。

 光の玉が、中を照らすと、地面に何かが……。

「あ!」

 ヴィアリさんだ!

「待て」

 ヴィアリさんの傍に行こうとすると、エルが私の手を引く。

 あれ、うつぶせに倒れてるけどヴィアリさんだよね?

『トラップの類はなさそうだが』

 大丈夫かな。怪我とかしてないかな。

「行ってみるか」

 ヴィアリさんの傍に行って、ヴィアリさんを起こす。

「大丈夫ですか?」

 これ……、アラクネの糸。アラクネに襲われたんだ。

 体を軽くゆすると、ヴィアリさんのまぶたが動いて、目が開く。

「あぁ、お客様」

 気が付いたみたいだ。

「大丈夫?怪我はしてない?」

「はい。大丈夫です」

 良かった……。

「何があったんですか?」

「蜘蛛の亜精霊に襲われて……。巣に連れて行かれたんです。なんとか逃げて来たのですが、出口がわからなくて」

「出口なら、えっと……」

 ここ、似たような入口がすごくたくさんある。

 どこから来たんだっけ……?

「あの、エル」

 エルが周囲を見渡す。

「これだけたくさんあったらわからないな。俺たちも迷ってここに辿り着いたんだ」

 あれ?違うよね?

「少し周りを見て来るから、リリーは、ここで待っててくれ」

『エル、車輪が続いてるのはこっちだ』

「あの、お客様。そっちは違います。いくつか調べたんです。向こう側だと思うんですが……」

 私も、そっちは出口じゃないと思うんだけど……。

 ユールが私の前で、唇に人差し指を当てる。

 ……喋っちゃいけない?

「向こう側は違う。調べ方が足りないんじゃないのか」

「そんなことは……」

「どうして倒れてたんだ?俺たちが来るまで、気を失ってたんだろ?」

「蜘蛛の亜精霊が大勢出て来たので、怖くなって……」

「変だな。亜精霊に捕まって、逃げて、亜精霊が出てきて気を失った結果、その亜精霊はお前を捕まえなかったのか」

「……亜精霊の考えてることなど、分かりませんから」

 なんだか、言ってることが滅茶苦茶だよね?

「つまり、人間じゃないものの考えてることなんてわからないってことか」

「そんなことは……」

「なら、そんなこと言うなよ。俺は先に行く。リリーは、そのメイドと一緒に待っててくれ」

「えっ?」

「お客様、危険です。殺されてしまいますよ」

「何に殺されるって言うんだ?」

「それは……」

 置いて行かれちゃう。

「私も一緒に行く」

「この先にあるのはアラクネの巣だぞ」

「それでも、」

「心配しなくても戦いに行くわけじゃない」

「戦わないの?」

「え……?」

「戦わないで済むなら戦わないつもりだよ。どうせ、こっちから攻撃しなければ、攻撃なんてされないだろ?」

 ヴィアリさんが俯く。

 どういうこと?

「どこまで、ご存知ですか?」

「さぁ。自分の目で見るまでは確証が持てないけど。何もないなら帰るだけだ。……リリー。すぐに戻るから待ってて」

「すぐ戻らなかったら、追いかけて良い?」

「良いよ」

『ボク、ここに残ってるよ』

『そうねぇ。リリーがエルを追いかける時に、迷子になっちゃったら大変だものねぇ』

『この先は一本道だ。私もこの場に残るか?』

 エルが首を振る。

『了解』

「リリー、光の玉は持ってるか?」

「うん」

 持っていた光の玉を短剣に当てると、光の玉が短剣を中心に周回する。

「すぐ戻るよ」

『エル、こっちだ』

 バニラがエルを案内する。

 ……また、置いて行かれた。

 エルが入ったのは、あの入口。間違えないように覚えなくちゃ。

 戦わないってことは、きっと、この先にあるのはアラクネの巣だけじゃないってことだよね。

「ねぇ、この先に何があるの?村が隠してるものって何?」

「それは……。お教えするわけにはいかないんです」

 ヴィアリさんが自分の体に巻き付いたアラクネの糸を解く。

 あれ?

 ちょっと、待って。

 どうして火傷の痕がないの?

「あの……」

「申し訳ありません。答えられないんです」

 そういえば、髪の結び方が違う?確か、ヴィアリさんって、三つ編みを右側に下げてなかったっけ。

 変だ。

「私の名前は覚えてる?」

「確か、リリーシア様でしたよね?」

 違う。

 今朝、リリーって呼んでって言ったのに。

「あなた、誰?」

 


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