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旧作3-2  作者: 智枝 理子
Ⅱ.冒険編
40/149

46 世間知らず

「わぁ、高い!ねぇ、あの大きいのが王都?」

「そうだね。西に見えるのがバールディバ山脈だよ」

 ウィリデの後ろに続いて、フィカスも飛んでついて来る。

「綺麗……。山よりも高いところに居る」

『お前、本当に元気だな……。怖くないのか』

「え?どうして?」

「落ちることなんて考えてないんだろ」

『俺は苦手だ。こう、地上が遠いのは』

「精霊なのに?」

「カートが高いところが苦手なんて意外だね」

『高いってレベルじゃないだろ、ここ!』

『暗くなればカートも落ちつくだろう』

『そしたら、今度はコートニーが怖がるんじゃないのか』

『アレクが居れば問題ない』

「レイリスとレシェフは?」

「俺は月から来たんだぜ。こんな高さで恐がってたら、地上になんて降りられないだろ」

 そういえば、月から降って来たんだよね。

「月に帰れるの?」

「帰れないよ。たとえドラゴンだって、あそこにはたどり着けない」

「え?帰れないの?」

「自力で帰れるんだったら、もっと月の精霊が行ったり来たりしてるだろ。神の力でもない限り、帰ることは出来ない」

「そっか」

「それは、太陽の精霊も同じかな」

「同じじゃないか。会ったことないから知らないけど」

「リリーシアは知っているかい」

「知らないです」

 月の精霊が居るなら、太陽の精霊も地上に居るのかな……?

「ラングリオンは、昔から月や星の神さまを信仰してるんですよね?」

「そうだね。国家としての宗教はないけれど、月や星への信仰は根強いよ。それは暦を見ても明らかだろう」

「グラシアルは、昔から太陽の女神への信仰が強いんです。レイリスが月の信仰の強い土地に降りたのなら、太陽の精霊はグラシアルの方に居るのかな」

「そうだね。居るならきっと、西の方だと思っているよ。……あれがカトルサンク山だね」

「もう見えてきた。……エルがどこにいるか、見えるかな」

『人間なんて見えるわけないだろ』

 目を凝らせば見えないかな。

 エルの光なら、遠くても探せそうな気がするんだけど。

 あ。そうだ。

「アレクさん、フェリックス王子を迎えに来た人って、剣術大会に出場する人ですか?」

「それは……。アルベールが持って来たマントの持ち主のことかな」

「はい」

 アルベールさん、アレクさんにちゃんと届けてくれたんだ。

「剣術大会の私の名代は、当日まで秘密だよ」

「強い人ですか」

「そうだね。私が直接、剣術の稽古を行っているから」

 それなら絶対に強い人だよね。

 少し楽しみかも。

 ……その人と戦うためにも、頑張って勝ち上がらなきゃ。

「アレクさんとの演習、楽しかったです」

「普段から、エルにもそういったことを話しているのかな」

「え?えっと……」

「エルは、君に剣を振るって欲しくないないと思っているだろうね」

 エルは、私が戦うと怒るから……。

「でも、私は君に剣を振るって欲しいと思うよ」

「どうしてですか?」

「君は、エルを守ると言ってくれたからね。私にとっても、レイリスにとっても、それは歓迎すべきことだ」

 レイリスとアレクさんの契約って……。どっちも同じ内容なのかな。

「なんだ、あれ?山崩れでも起きたのか?」

 レイリスが指した方、カトルサンク山の中腹に、土砂崩れの跡がある。

「地震が起きて、村一つを壊滅させる土砂崩れが起きたんだ。……跡形もないけれど、あの土砂の下に村が在ったはずだよ」

「え……?」

「心配しなくても、大きな怪我人も死者も出ていない。すぐ東に見える村が、再建した新しいトゥンク村だよ」

 あの、小さい村?

「カルヴァドスの生産地として知られる有名な村なんだけどね。復興が上手く行かず、林檎の苗木の植樹作業は順調ではない。……エルは、その調査に向かっているんだよ」

 見る限り、かなり大規模な土砂崩れだ。村があった跡だって感じさせないほどの。

―「ウィリデ、あの土砂崩れの近くに降りられるかい」

―「村の人間に見つかる可能性があるが」

「カート、闇の魔法で覆えるかい」

『コートニーの幻術と併用した方が良いんじゃないか?』

「そうだね。コートニー、上手くやれそうかい」

『心配無用だ』

―「見つからないようにするから、まっすぐ目指してくれて構わないよ」

―「了解した」

 カートとコートニーが顕現して魔法を使う。

 闇の魔法で姿を隠して、光の魔法で幻を見せてるみたいだけど。内側からじゃよくわからない。

「外側からはどんな風に見えてるの?」

『雲か霧のように見えているんじゃないか』

「フィカスも?」

『魔法は使ったけど、あまり離れすぎたら効果はないぜ』

 ウィリデと並んで飛んでいるフィカスが、ウィリデが下降を始めたのに合わせて、一緒に下降する。


 到着したのは、土砂崩れの脇にある平地。

 ウィリデの背から降りる。

―「ありがとう、ウィリデ」

―「卵を孵してくれた礼だ。いつでも力になろう」

―「こちらこそ、何かあったら協力するよ。困ったことはないかい」

―「問題ない」

―「フィカスは竜の山で暮らすのかな」

―「生まれたばかりのドラゴンを預ける場所は決まっている。心配は無用だ」

―「それは良かった」

 預ける場所?

―「夜を待って飛び立つ。旅の無事を」

―「ありがとう」

 これでお別れになっちゃうのか。

 ウィリデの傍に居るフィカスの頭を撫でる。

「元気でね。フィカス」

 フィカスが小さく鳴く。


 ※


 土砂崩れの脇を通り抜けて、トゥンク村を目指す。

「あれ?」

「どうしたんだい」

「この山、精霊が全然居ない。セズディセット山ではあんなに見かけたのに」

「向こうでは、アレクを見つけて寄って来てたからな」

「そうだけど、でも……」

 周囲を見回しても、目に付くところには一人も居ない。

「こら」

「リリーシア。危ないよ」

 両サイドから、腕を掴まれる。

『しっかりしろよ』

「……ごめんなさい」

 気をつけてるんだけど。

「向こうに道があるね」

「道?」

「旧トゥンク村の道だろう」

 土砂崩れの中から道が伸びてる。


 歩きにくい場所から、ようやく歩きやすい道へたどり着く。

「綺麗な道だね」

 整備されてるみたいだから。

「日暮れまでにはトゥンク村に着きそうだね」

 空から見た感じだと、新しい村はここから近かったよね。

「リリーシア、止まって」

「何か居るな」

 道沿いに、何か黒い影。

 アレクさんが剣を抜く。

 あれ?

「エイルリオンじゃないんですか?」

 エイルリオンは鞘なしのまま、アレクさんが腰に布で括りつけている。

「これは使わないよ。リリーシア。虫は苦手じゃないかい」

「え?」

 目の前に現れたのは、綺麗な女の人……、じゃ、ないっ!

 思わず叫んで、アレクさんの後ろに下がる。

「くっ、蜘蛛っ、」

「レイリス、リリーシアを……」

 だめ、蜘蛛はだめ。

『走って行っちまったけど』

『恐怖を感じてるはずなのに、どうして敵に向かっていくんだ』

 リュヌリアンを使うのも怖い。

 雪姫なら良く斬れるかも。

 左肩から雪姫を抜いた瞬間、目の前から蜘蛛の糸が吐き出される。

 その糸を、雪姫で斬る。

 なんか、ねばねばする……。

 続けて吐き出された糸が、体に絡まる。

 動けば動くほど絡んで……。

「少し厄介だね」

 アレクさんが、蜘蛛と私の間にある糸を剣で斬る。そして、放たれた糸に向かって砂嵐を起こす。

 糸が、全部砂になって落ちる。

「これは面倒だな……」

 レイリスが私に絡まった糸を一筋、短剣で斬る。

「動けるか?リリー」

「動けない……」

 アレクさんが戦ってる。

 砂の魔法で糸を無効化しながら、蜘蛛を斬る。

 亜精霊だから真っ二つに斬っても斬れないのだけど。

 急に、腕が自由になる。

「脚と腕は解いてやったぞ」

「ありがとう、レイリス」

 雪姫で、亜精霊に向かって斬りつける。

 手ごたえあり。

 糸を出してるのって、あの右手だ。アレクさんが攻撃したのに続いて、右手を斬る。

 叫び声が上がって、右手がうなだれる。

 あぁ、だめ。この、足。蜘蛛は苦手……!

 足を三本斬りつけたところで、後ろから腕を引かれて、目を塞がれる。

「これ以上の戦いを望むなら、殺さなければならない。私たちは東の村を目指しているだけだ。今すぐに去れ」

 かさかさという音が耳に響いて、背筋に悪寒が走る。

 しばらくして、アレクさんが私の目を塞いでいた手を離す。

「大丈夫かい」

「はい」

「蜘蛛は苦手なようだね」

「……はい」

 蜘蛛が大丈夫な人なんて、居るのかな……。

「今のはアラクネという、蜘蛛の亜精霊だね」

「女の人みたいでしたけど」

「あの顔は、人間ではなく精霊の名残なんじゃないかな」

 そうなのかな。

「そのまま歩けるかい?」

「歩けないことは……」

 まとわりついて、気持ち悪いけど。

「自分で突っ込んで行ったんだから、自業自得だろ。村に着くまで我慢するんだな」

「一つ試してみようか」

 アレクさんが、布を解いてエイルリオンを持つ。

 そして、そのまま私を薙ぎ払う。

「!」

 ……あれ?

 斬られたはずなのに、体には傷一つついていない。

 なのに、蜘蛛の糸だけが寸断されて、地面に落ちた。

「亜精霊の糸は斬れたみたいだね」

 本当だ。まとわりついてた糸が斬れてる。

「どういうことですか?」

「エイルリオンは、リンの力の宿らない剣。生き物を斬ることは出来ないんだよ。この剣で斬ることができるのは、人間に害為すものだけ」

「それが王家の敵ですか?」

「そうだよ」

「アルファド帝国最後の皇帝?」

「もしくは、その力を持つ何かだね。陽が暮れてしまう。急ごうか」


 ※


 トゥンク村に着いたのは夕暮れ。

 ウィリデとフィカスはもう飛び立ったのかな。

 空を見上げても、月と星が輝いているだけだ。

『アレク。俺は外に居るからな。何かあったら呼べ』

「あ……」

 顕現を解いたレイリスが口元に指を当てる。

『本当に学習しない奴だな。何のために顕現を解いたんだかわからないだろ』

 話しかけちゃいけないんだ。

 アレクさんが、右目にモノクルをつける。

「それは?」

「菫の瞳は目立つからね。碧眼に見えるように加工してあるんだ」

 見える……、かな?

 良く見たらばれちゃうんじゃないかな。

「眼帯をつけるよりは目立たないだろうって、ロニーが作ってくれたんだよ」

『菫と碧のオッドアイなんて、アレクだけだからな』

 そうだよね。左右の瞳が違う人なんて滅多にいないんだから。菫と碧の瞳を持っているなら、絶対アレクさんってばれちゃうんだ。

「あの、お城に帰らなくて良いんですか?」

「私のことはシュヴァリエと呼ぶように」

「……はい」

「良い返事だね」

 良いのかな……。


 明るい場所を探して、お店に入る。

 ここ、宿かな?

「いらっしゃいませ。……ご宿泊ですか?」

「村に宿はここだけなのかな」

「えぇ。まだ復興途中の村なものでして。旅人の受け入れは進んでいないんですよ」

「カルヴァドスの名産地と聞いて来たのだけどね」

「カルヴァドスならございますよ」

「囚われの林檎が欲しいんだ」

「囚われの林檎?」

「……プリゾニエールでしたら、おそらく村の蔵を探せばございます。少々お時間を頂けますか?」

「探すのは明日でいいよ。今日は夕飯だけもらって休むから」

「肉料理と魚料理、どちらにいたしますか」

「この辺りなら川魚かな。シードルを使ったマトロートを出してくれそうだけど」

「?」

「はい。本日は鰻のマトロートでございまいます」

 ええと?

「川魚をワインで煮込んだ料理だよ。ここは林檎のお酒の産地だから、林檎のお酒で煮込んでくれるんだ。肉料理もきっと、林檎のお酒を使った美味しいものを出してくれるんじゃないかな」

 美味しそう。

「マトロート、食べてみたいです」

「じゃあ、魚料理にしようか」

 言いながら、アレクさんが宿泊帳に記入する。

「一番静かな部屋を頼めるかい」

「かしこまりました」

 宿の作りはどこも大抵同じだ。

 一階がレストランで、二階が宿泊する場所になってる。


 案内されたのは、宿の一番奥の部屋。

「一番静かな部屋って?」

『一番良い部屋ってことだよ』

 そうなんだ。

「囚われの林檎って何ですか?」

「瓶の中に林檎が入っているカルヴァドスだよ」

「瓶の中に林檎?」

「そう。どうやって林檎を入れるか、わかるかい」

 瓶の中に林檎を入れる方法?

「瓶って、普通のワインの瓶ですか?」

「少しふっくらした瓶かな。でも、瓶の口は林檎が絶対に通らない大きさだよ」

 瓶の口を通るような小さな林檎じゃないんだよね。

「ボトルシップみたいなものですか?」

 あれは、瓶の中で船を組み立てるんじゃなかったかな。

「林檎は切られていないよ」

「じゃあ、瓶の口を切って入れた?」

「瓶に、そんな加工の後はないね」

「魔法で小さくして戻す?」

 アレクさんが笑う。

「それも面白い方法だね。でも、誰にでもできる方法だよ。答えは明日、エルに聞いてごらん」

 瓶の中に林檎を入れる方法……。

「食事が終わったら、私は出かけてくる。何かあったらレイリスを呼ぶんだよ」

「私も行きます」

「予定が早まれば、エルは今夜到着するかもしれないよ。村で宿はこの一軒だけだ。宿帳を見れば、エルは私がここに居ると気づく。だから、ここに居てくれるね?」

「シュヴァリエって名前でわかりますか?」

「わかるよ」

 わかるんだ。

「わかりました」

「これを持ってみてくれるかい」

 アレクさんが私にエイルリオンを差し出す。

 その柄に手を触れようとした瞬間、エイルリオンが精霊のように透ける。

「掴めない……?」

 アレクさんがエイルリオンを机の脇に立てかける。

「この剣は夜間に持ち歩くには目立つからね。ここに置いて行くよ」

 良く見ると、淡く光ってる。

 誰も掴めないなら絶対に盗まれることはないし、アレクさんが呼べばいつでも召喚できるものだから、置きっぱなしにしても大丈夫なのかな。


 ※


 アレクさんが出かけてしまった後、シャワーを浴びて、レストランで空き瓶を借りて眺める。

 どうやって入れるのかな。

「林檎のエードをお持ちいたしましょうか」

「はい」

 林檎の産地なら絶対に美味しいよね。

 しばらくして、メイドさんが林檎のエードを持って来てくれる。

 美味しい。

「カルヴァドスの瓶が珍しいですか?」

「この中に林檎を入れる方法を考えているんだ」

「囚われの林檎ですか?」

「うん。……シュヴァリエに言われて考えているんだけど。あなたは知ってる?」

「はい。この村の人間ならばみんな知っていますよ」

「誰にでもできる?」

「林檎が入る瓶があるならば、大人でも子供でもできますよ」

「取り出すことも出来る?」

「取り出すためには、瓶を割らなければならないでしょうね」

「え?入れることは出来ても、出すことは出来ないの?」

 メイドさんがくすくす笑う。

「そうですよ」

 どういうことなんだろう。

「お連れ様はどちらへ?」

「少し出かけて来るって言ってたから……。散歩じゃないかな」

「良く散歩をされる方なんですか?」

「うーん。散歩は好きなんじゃないかな」

 セズディセット山でも朝から散歩をしてたみたいだし。

「恋人を置いてまで散歩に出かけるような方なんですか」

「恋人じゃないよ」

「え?違うんですか?」

 えっと……。

 なんて言えば良いんだろう。

「冒険者仲間ですか?」

「うん。そんな感じ」

「それは失礼いたしました。こちらへは、どのようなご用件で?」

 この村の調査って言ってたけど、私がすることってなさそうだよね。

「人を待ってるんだ」

「人を?」

「うん。予定では明日ここに来るはずなんだ。合流したら、囚われの林檎の答え合わせをしてくれるって」

「そうなんですか。……ご出身は?ずいぶん遠くからいらしたんじゃないですか?」

 私の髪が黒髪だからかな。

「出身はグラシアルだよ」

「グラシアル?」

「オービュミル大陸の西にある国なんだ。グラシアル女王国」

「あぁ、聞いたことがあります。ずいぶん遠くからいらしたんですね」

「うん。マトロートって初めて食べたけど、美味しかった。ラングリオンって美味しいものがたくさんあるよね」

 窓の外を見る。

 アレクさん、いつ帰って来るんだろう。

 待ってても、誰かが来るような気はしない。

「シュヴァリエも帰ってこないし、もう寝ようかな」

「そうですか」

 席を立つ。

「おやすみなさい」

「はい。ごゆっくりお休みください」

 

 階段を上って部屋に戻ると、レイリスが居る。

「調子はどうなんだ」

「少し眠いぐらいだけど」

「この村、おかしいぞ。いざとなったら抱えて逃げるからな」

「え?どういうこと?」

「そのままの意味だよ。休めるうちに休んでおけ」

 もう寝ろってこと?

 眠れるかな。

 ベッドに入って、枕を抱く。

「……まだ眠れないよ」

「眠いって言ってただろ」

 寝るにはまだ早い時間だ。

「レイリスは、物語に詳しくないの?」

「物語?」

「エルは全然、物語を知らないから。寝る時に、どんな話しをしてたのかと思って」

「寝る時に話しなんてしたら眠れなくなるだろ」

「そんなことないよ。子守唄とか、お話しとか。聞いてると心地良くなって眠れるよ」

「何か話せって?」

 そういう意味じゃないんだけど……。

「アレクと俺の契約解除の方法を教えてやろうか」

「うん」

「精霊は神に逆らえない。契約を神に上書きしてもらえば、契約を破棄できる」

「上書き?神様って、誰でも良いの?」

「誰でも良い。上書きの方法は、契約破棄の宣言をし、神の力によって人間から精霊の瞳を取れば良い」

「アレクさんの瞳を?レイリスは?」

「アレクからもらった瞳は、俺の体に同化してる。返せって言われたって返せないのはそのせいだ。これを取ったところで、せいぜい視界の共有が出来なくなるだけで契約の破棄にはならない」

「アレクさんは?」

「人間にとって、俺の瞳はあくまで精霊の瞳だ。だから、取らなければ契約破棄にならないんだよ」

 契約解除のためには契約に使ったものを返さなければならないから?

「神の力じゃないと抉り取れないの?」

「それぐらい強い契約なんだよ。だから、他人の契約に口を挟むなってことだ。覚えておけよ」

「……うん」

 神の力じゃないと無理なんて、絶対に不可能ってことだよね。

 だって、地上に神様なんて居ないんだから。

 


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