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旧作3-2  作者: 智枝 理子
Ⅰ.王都編
18/149

16 交渉を有利に進める方法

 前庭でエルと別れて、帰ろうとしたところで、光の精霊と目が合う。

 あれ?この精霊って。

『ついて来い』

 言われた通りついて行く。

「アレクさん、レティシアさん」

「リリーシア」

「すぐばれてしまうね」

 紺色のローブを着て、フードを深々と被っているから顔は見えないけれど。こんなに精霊を連れて歩いてる人なんて一人しかない。

 それに、この光の精霊って、今朝私を案内してくれた精霊と同じだよね。

「それじゃあ、レティシア。頼んだよ」

「御意」

 レティシアさんがアレクさんに礼をして去る。

「リリーシア。少し良いかい」

「はい」

「こっちにおいで」

 アレクさんについて歩く。

 どこ、目指してるのかな。

「頼みたいことがあるんだ」

「頼みたいこと?」

「ついておいで」

 アレクさんに続いて歩く。


 庭を通って。

 城壁とお城の間を歩く。

 どこ、目指してるのかな。


「止まれ」

 兵士に呼び止められて、アレクさんが止まる。

「ここから先は……」

 兵士が何か言いかけて、頭を下げる。

「失礼いたしました」

「構わないよ。お疲れ様」

 また、アレクさんが歩き出す。

「あの……?」

「ここから先は、王族の居住区。許可のない者は入れない」

「え?」

 周囲を見渡す。

 外観はあまり変わらないように見えるけど。

 あ、でも、この庭園は綺麗。

「ここはお茶会に使っている庭なんだよ。そろそろ紅葉狩りの季節だね」

「紅葉狩り?」

「紅葉を鑑賞しながらお茶を楽しむんだ」

「えっと……。花見みたいな?」

「そうだね」

 中央には四阿があるから、あそこでお茶会が出来るんだろうな。

 巡回中の兵士さんを何人か見かける。

 そういえば、城壁の上にも居るよね。城壁の上の兵士は外側ばかりを見ているから、私とアレクさんが歩いているのに気づいてないみたいだけど。

「どこに行くんですか?」

 アレクさんは答えずに歩き続ける。

 ここ、どの辺りなんだろう。

 右側に見えるのが城壁。左側に見えるのが、お城の壁。

 この壁の奥が、王族の居住区に当たる場所なのかな?

 とても広そう。


 しばらく歩いて、アレクさんが立ち止まって上を見上げる。

「ここが私の部屋。皇太子の棟」

 一階に出入り口はなさそうだ。

 高い塔が右側にある。左側が部屋?

 アレクさんがまた歩き出したのに続いて、歩く。

 左側から迂回して、皇太子の棟の内側へ。

 庭があって、目の前には二階部分を繋ぐ橋のような渡り廊下が見える。

 左側の建物の上はベランダになってるみたいだ。渡り廊下はベランダと塔を繋いでる。

「西側にあるのが従者の棟。東側にあるのが、宝物塔と私の部屋だよ」

 塔の手前側がアレクさんの部屋?アレクさんの部屋は、二階から渡り廊下を渡って塔に入って、塔からじゃないと行けないのかな。

「全部二階にあるんですね」

「あそこには二階からしか入れないからね」

「一階はどうなってるんですか?」

「秘密」

 秘密なんだ。

「宝物塔って、あそこにリュヌリアンがあるの?」

「そうだよ。あの剣は宝物塔の五階にある。レイリスが、月の石でできた剣は月光浴させると良いって言っていたから、夜間は月光浴させているよ」

 そうなんだ。

「ありがとうございます」

「大切に預からなければいけないからね」

「あの、どうしてこんなところに私を連れて来たんですか?」

「協力して欲しいことがあるんだ」

「なんですか?」

「私の部屋に忍び込んで欲しい」

「……え?」

「夜間ならいつでも良いよ。私の精霊がルートを案内する。見つかっても剣花の紋章があれば大丈夫だからね」

「あ、あの……?」

 どういうこと?

「城門は夜になると閉まってしまうから、夕方までに城内に侵入していた方が良いだろう。お勧めのルートは今通って来た道。ここから見える従者の棟のベランダでは近衛騎士が夜間の警備をしているよ」

 アレクさんが、元来た道を戻る。

 皇太子の棟の外側。

 右側に宝物塔、左側にアレクさんの部屋が見えるところ。

「侵入ルートはね。ここを登ったら良いんじゃないかな」

 円形の宝物塔と、アレクさんの部屋の建物の繋ぎ目。

 結構、でこぼこしてる。

 ……いけるかな。

「ロープを用意しておこう」

「要りません」

「危険だよ」

「動きやすい恰好なら大丈夫。二階ぐらいの高さなら落ちても平気です」

「君が怪我をするとエルが心配するよ」

「怪我なんてしません」

「強情だね」

 アレクさんが、くすくす笑う。

「宝物塔はね、二階の屋根の方角に窓はないんだ。窓があるのは、宝物塔の三階から五階の、北側と東側」

 宝物塔の方へ行く。

「東側の窓は、城壁の警備を行っている兵士から丸見えで見つかりやすい」

 今度はもう一つの窓へ。

「北側に回れば城壁の兵士の目も届きにくいだろうね」

 確かに。ここの窓は城壁の兵士から死角になる。

 二階まで上ってしまったら、屋根を経由して北の窓から入れば良さそうだ。

「宝物塔の三階って何があるんですか?」

「私の武具のコレクションだよ。無事に侵入できたなら好きなのを持って行って良い」

 アレクさんの武器。

 興味があるかも。

「報酬はそれで良いかな」

「大剣もありますか?」

「もちろん」

 絶対良いものに違いないよね。

 ……でも、剣術大会には雪姫で出場しようと思ってたし、今はそんなに必要ないかも。

「あの、違うお願い聞いてもらっても良いですか」

「何かな」

「私と戦ってください」

 アレクさんが眉をしかめる。

 間近で見ると、結構表情が動く人だな。

「それは出来ない」

「何故ですか?」

「君がエルの大切な人だから」

「私が負けると思うから?」

「怪我をさせずに勝つのは難しいだろうね」

 それ、私が負けること前提で話してる?

「負けません」

「他の願いはないのかな」

「どうしたら勝負してくれますか」

「エルが許可したら良いよ」

 絶対許可してくれなさそう。

「じゃあ、違うお願い聞いてくれますか」

「私が叶えられるものならね」

 私が聞いて欲しいお願い。

 何にしよう。

「剣術大会、君を私の観覧席に招待するよ」

「えっ」

 剣術大会?どうして急に?

 アレクさんの話しって、いつも唐突だ。

「何か都合の悪いことでもあるのかな。君は出場しないってエルから聞いているよ」

「あの……」

 どうしよう。

「剣術大会に出るつもりかい」

「えっと……」

「エルになんて言えば良いかな」

「あの、言わないでください」

「エルにも、君を私の観覧席に招待すると言ってあるんだ」

 エル……。

 そんなに私に剣術大会に出て欲しくないの?

「お願い。言わないでください」

「お願い?さっきの報酬の件かな」

 私がアレクさんの部屋に忍び込む代わりに、黙っていてくれるってこと?

「黙っててくれますか」

「無事に侵入できたらね」

 あれ……。

 いつの間にか、私、絶対アレクさんの部屋に侵入しなくちゃいけないことになってる?

 アレクさんがくすくす笑う。

「この話しは全部エルには内緒だよ。君が出場することを話したのは誰かな」

「えっと……。ルイスと、パーシバルさんだけです」

「じゃあ、その二人に口止めをしておくこと。リリーシアは偽名で出場するつもりだね?」

「はい」

「オルロワール家のアルベールを訪ねると良い。協力を頼んでおこう」

 もともとマリーにも相談しようと思ってたんだけど。ルイスが、剣術大会を取り仕切っているのはオルロワール家って言っていたから。

 マリーにも内緒にした方が良いのかな。

「わかりました」

「そんなに、強い相手と戦いたいのかい」

 そういうわけじゃないんだけど。

「今回の大会って、アレクさんの婚約者を決めるものなんですよね?」

「そうだよ」

「私が勝ち上がれば、婚約者を願いにしようとする人を潰せるかと思って」

「……それが理由?」

「エルはいつも、アレクさんの婚約者を潰してるってマリーが言っていたから。私が剣術大会に出場すれば、エルを手伝うことにならないかと思ったの」

 少しでもエルに協力で来たら良いと思ったんだけど……。

 アレクさんは何か思案するように黙る。

「エルが君と一緒に居られないのは私の責任だというのに。君は私を恨まないのかい」

 今、エルと離れているのは寂しいけれど。

 会いに来ようと思えば、いつでも会えるみたいだし。

 無理はしないで欲しいけれど、アレクさんのところに居る限りエルは安全だと思えるから、心配することもそんなにない。

 それに。

「アレクさん、前に言ってましたよね。エルが何をしようと止めることは出来ないって」

 あの時。エルをすごく心配してた。

「良く覚えてるね」

「エルは私の為に頑張ってくれて、今はアレクさんの為に頑張ってる。それだけだと思います」

 アレクさんが微笑む。

「君はいつも満点だね」

「え?」

 どういう意味かな。

「闇の精霊を貸してあげよう」

 闇の精霊が私の目の前に来る。

『見えているんだよな?』

「うん」

 闇の精霊。

『俺はカート』

「よろしくね、カート」

「カート。リリーシアを城門まで案内してあげてくれないかい」

『了解。行くぜ、リリー』

「うん」

 カートの後について歩く。

 あれ?ここって、前庭。

 城門って目の前なのに。

「案内なんて要らないのに……」

『お前って、いつもそんな独り言言ってるわけ?』

「独り言?」

『精霊の声が聞こえるのは特殊なことだ。見えるのも。俺たちの声にいちいち反応してたらただの変人だぜ』

「だって、話しかけられてるのに無視するなんて……」

『じゃあ、お前、相当変人って思われてるな』

 ひどい。

「メラニーはもっと優しいのに」

『エルの精霊か?……生んだ大精霊が違うんだから、根本的に俺とあいつは違う精霊だ』

「そうなの?」

『そうだよ』

 大精霊って、そんなにいっぱい居るのかな。

 そういえば、温泉に行った時、セズディセット山の火山には、昔、エイダではない炎の大精霊が住んでいたってエルが言っていたっけ。

 


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