表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロの神者  作者: ペケポン
第一章 プロローグ 全ての始まり
7/31

大地と草木

大地と草木


目が覚めた。滲む視界から見えてくる天井は無機質な味気ないタイル調だ。

家のリビングのクロスとシャンデリアじゃない・・・う!

「いたっ!・・・」

奏は体中が筋肉痛というか骨が痛いというかよく分からない痛みを感じた。

――あぁそうか。ローゼンクロイツにいるんだっけ――

眠ってた脳が少し遅れて起きてきた。痛みに伴い体中の触覚も目を覚ます。

そして感じるこの気配・・・・ふ~・・・・ふ~・・・

暖かなそよ風が、一定感覚で左肩付近に放出されている。幾度か覚えのある感覚だ。こんなことをする物体は一人だけだ・・・身体が痛くて動かないので恐る恐る首を回して左を確認した。

――――いぃぃぃぃぃ!!!!!!!!――

「うっ!」

驚愕!そこにあるのは黒髪ではなかった。対称的な銀色の艶髪・・・

そういやどことなく優しい香りも漂っていて良い匂い・・・

――じゃなくてっ!――

奏は脳内一人ツッコミをした。ってそれこそそれどころじゃない。

「クリス!・・・さんっ!何してんだよ!?」

正体はクリスだった。いやしかし何故ここに!ピクッと反応をし、クリスが寝起きの顔を上げる。

「あぁ~~~、奏さん~。おはようございます~・・・・・」

目をだらしなくゴシゴシしながらベットの上にチョコンと座った。パジャマだろう、サイズが大きいせいか、右肩から少し崩れていて真っ白な肌が見えている。これはマズイ!

「おはようじゃなくて!なんでここにいるんだよ!」

まだ身体が痛いので即座に飛び起きれない。ついでに顔は真っ赤っかだ。

「いや~~。奏さんの様子を見に来たんですけどあまりにも寝顔が可愛らしくてですね~・・・。見ていたら眠たくなってきたんですけど。女の子みたいだからいいかな~ってそのままゴロンとさせていただきました~」

眠たそうにハニカミながらニコッと笑うクリスはとんでもなく可愛い。

こう思えるのは俺が男って事な訳で・・・・でも女みたいに思われてて・・・

なんて訳の分からない事をテンパりながら考えて、クリスを赤い顔で見ていた。すると、

ウィーン。部屋の自動ドアが開きだした。誰か来たのか!?この状況はまずい!と考える間に羆がズケズケと入り込んで来た。

「ここにいたのかクリス!!いつまで寝てる!早く指令室に来い!」

寝起きに羆のビッグボイスはとてつもなく効く。それでもクリスは寝ぼけたまま羆に引きづられていった。

――あれ・・・なにもなしか・・・――

動揺し言い訳を頭の中に連想しつくしていた奏は助かった気がした。流石に何か言われると思ったが・・・それにしても奏はすっかり目覚めてしまった。う~ん、と沈黙しているとプキが元気に入ってきた。

ウィーン

「おはようございます!奏さん!身体は大丈夫ですか~?」

「・・・あぁ。おはよぅ・・大丈夫だ」

一時前の恐ろしくも良い思い出を整理しながら適当に返事をした。

「・・・・・・」

「な、なにかあったんですか?」

首を傾げ怪しむプキ、こういう所は察しがいいんだなこいつは・・・

「なにもない」

奏は痺れる身体を叩き起し、指令室に向かった。


さっき寝ていたのは宿泊塔だったらしい。ここには中心部にエレベーターと非常用の魔法陣が配置されていた。就寝時に狙われた時用の緊急脱出転送装置らしい。実は他の塔にも何箇所かは魔法陣があったみたいだ。17階ありワンフロアに12部屋ある。最上階にクリスの部屋があったらしんだが、何で8階の俺がいてたとこで寝てたんだよ・・・っと悩む奏。

シュバッ。そして指令室だ。

「おはようございますプキさん。虚神さん~。朝はすみませんでした~」

優しい声ですこ~し申し訳なさそうに謝るクリス。

「朝ってなんですか?」

う・・・プキのいらぬ切り込み。奏は話を逸した。

「クリス・・・さん。俺は明日から学校だ。そろそろ帰るぞ・・・」

朝のパジャマ姿のクリスがちょっと脳裏によぎってしまい若干照れている。

「はい~。また来てくださいね~?プキさん~。引き続き虚神さんの護衛お願いしますね?危険と判断すればすぐに逃げてくださいよ」

子供を初めてのお使いに出す母の様な心配っぷりだ。このくだりで約5分は心配の言葉を2人に浴びせ続けた。

「虚神!お前は昨日の訓練で少しはマシになったがまだまだだ!能力値異常者やフェイカーには絶対適わない!覚えておけ!過信はするなよ」

「分かってる。また来る」

奏はそう言うとエレベーターに向かう。もちろん過信はしていない。しかし自信は少しついたみたいだ。地上転送魔法陣で帰る前、プキは羆に怒られながら朧桜を持たされた。奏も一応護身用にと模擬バージョンの短剣を渡された。普段は柄の中に入ってて拍子にシャキーンって感じに出てくるタイプのやつだ。コンバットナイフみたいな物なのか?

二人は地上に上がった。


「どうでしたか?」

程よい日差しを浴び、農道を歩きながらプキが言う。それにしてもやっぱり本当の日差しは違う。体の芯から温まる。温もりを含んでいく事に心地よさを感じながら奏は昨日を思い出した。

「すごかった・・・・かな」

「そうですか!また来ましょうね。・・・ところで、朝何があったんですか?」

プキが朝の事をしつこく聞いてくる。

「なにもない」

「・・・うそですな」

プキはジト目で奏を見る。

「知らん」

「奏さん?・・・」

「・・・・・・・」

「お~い・・・」

食いつくプキを無視しながらどうにか駅に着いた。


「また販売員さんきますかね?あと変なお兄さん達」

前と同じ配置で電車に乗る2人。

――何を期待しているんだ、お前・・・――

「はっ。こないことを祈るよ。チャラ男に絡まれるのもごめんだ」

「うぅ~・・・ポッキーほしかったです・・・それとリベンジを・・・」

リベンジ?っと思ったが多分しょうもない事だろう。奏は言及しなかった。にしても一時間は短くも長い。奏は途中の停車駅でポッキーを買ってあげた。それに変な奴が絡んでくることもなかった。

神島西國駅に着き、二人は近くの公園に差し掛かった。ふと奏は思い出す。

――三日前にここでお歯黒に襲われたんだよな――

その時の映像を思いだし、背筋に冷たい水が落ちたような感覚になった。

――次は自分の力でなんとかしないと・・・――

平然とした顔で通り過ぎながらも、ポケットに入れた拳は力強く握られていた。


ピタッ。前方を先先行ってたプキが家の門の前で脚を止めた。

「どうした?」

奏の呼びかけにプキは湿気た顔で振り向いた。

「奏さん・・・忘れてました・・・」

「刀は持ってるだろ?」

「いえ・・・あの人達です・・・」

奏は玄関のほうを指差すプキを見て多少急ぎ足で向かいそれを見た。小さい何かと大きい何かが玄関前にいる・・・しかも何やらご機嫌斜めなような素振りを見せている。影から見ているとチビっこいのが喋りだした。

「我を待たすとは何様だ?この私を誰だと思っておるのだ・・・くくく・・・きゃつめ!我の魔力の波動を感じ恐れたのではないか!?そうは思わんか?クラディールよ!?」

「いやれいだよ!クラディールってどこの国の人?

 ってかしょうがないんじゃないかぁ?いついつ何時とか言ってなかったし」

おかしな言葉を使うチビっこいのは童顔で、緑色の髪のポニーテールが目立っている。

あれは確か中二病とかいう症状だと聞いたことがある。顔の通り幼い年齢なんだろう。

気だるそうな黒茶色の髪の方の男は高身長、スタイルが良くモデルみたいな雰囲気があるが、やる気のない目と仕草、少しボサボサな髪がそれを台無しにしている。

「ここ人ん家だろ?勝手にここにいちゃお巡りさんに捕まえられちゃうんじゃない?」

覇気のない言葉を男が言う。

「え!?お巡りさん?どうしよ零!?」

ポニーテールが素の状態で少し戸惑っている。男の裾を掴んでやや半べそみたいだ。

「もう遅いかもしれないな・・・今この場を見つかったら・・・」

流し目でこっちを見ている。男のほうは奏達に気づいているらしい。

「あっ!お巡りさん!」

男は奏達の方を指差し、張った声で言った。その瞬間のポニーテールの行動は早かった。

奏達の前に瞬間移動し、手を這いつくばり頭を下げた。綺麗な土下座だ。

というか身体が小さいのでやけにコンパクトに変形した感じがした。

「すみませんでした!うちはまだ何もしていません!何かしようともしていません!むしろそれ事態も思っておりません!だからどうか痛いけなうちをお許し下さい!お巡りさん!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

奏は硬直した。あれ?さっきのキャラは?痛いけな少女過ぎて、いやそれよりもなぜかとてつもなく可哀想に思えた。

「あ。プキちゃん?久しぶり。あとそっちが虚神・・・ちゃんね?」

声を殺した声で笑いながら男が挨拶してきた。

――わざとか・・・――

「はい、お久しぶりです零さん。えっと・・・あと・・・茅乃かやのさん・・・・」

気遣うなプキ!余計可哀想だ!奏は心の中で叫んだ。

ハッ!とした顔で素早く見上げ茅乃は状況を飲み込んだ。

「くくく・・・我のあまりの変貌ぶりに恐れおののいただろう?今の変貌はその顔を拝見するための手段だとは言っておこう」

ゆっくり立ち上がりながら茅乃が言うが。顔が引きつっている。

「ふっ。貴様がセシリウスのパートナーか?くくく、なかなか美しい顔をしてるではないか?」

奏はメンドくさい事態、行動、状況は苦手な方だ。それに女扱いは特に嫌いだ。

しかし小さい幼女に対してキツく当たってしまったことをのちのち反省する。

「はっ。ガキが。調子に乗るな」

奏は自分より少し小さい茅乃を凍える目で見下ろした。

「ひっ!」

茅乃は目を見開き怯える・・・しかし粘る

「ふ・・・ふふふ・・・まさ

「なんだ?」

「・・・・・・・・・・・・く・・・・くくく・・なかなか骨の

「はっ?」

「・・・・・・・・・・・」

黙り込む茅乃。口をしわくちゃにして力を入れ何かを我慢している。

「あぁ~だめだよ~虚神ちゃん」

零がトボトボ小走りに茅乃に近寄り茅乃の頭に手を置く。

「茅乃、なかなか盛大に負かされたな~」

大きな目には大量の水たまり、綺麗な小鼻からは洪水状態だ。

「・・・ひぐっ・・ひぐっ・・・れぃ・・・怒られた・・・」

小さな子犬の様に泣く茅乃に流石に奏も反省した。

「す・・・すまなかった・・・な・・・」

「・・ひぐっ・・・・」

「お前の中二設定は30分しかもたなかったな~」

「・・・ぅん・・・」

――なんなんだ一体――

「それにしても虚神ちゃん厳しいんだね~。てっきり清楚で優しい女の子かと思ったよ」

零は茅乃をあやしながら微笑で言う。

「・・・ローゼンクロイツの情報網は雑だな。俺は男だ」

「えっ!虚神ちゃん男の子なの?・・・・へぇ~」

「ちゃんはよせ」

「えっ?いーじゃん虚神ちゃん♪」

「・・・・・・・・・」

この間にようやく茅乃が泣き止んだ。

「・・お、男だったのかお前。この偽女め!」

「はっ?」

「ひっ・・・・ごめんなさい・・・」

両手で頭を隠して怯える茅乃。怖いなら調子に乗るなよな・・・

というかプキ。少しくらい喋れよ!玄関で立ち話もなんなのでとりあえず中に入れた。


「2人は何飲む?」

キッチンで上品な装飾の施されたティーカップを用意しながらソファーでくつろぐ零と茅乃に聞く。

「俺ブラックコーヒーよろしくね」

「うちはミルクをくれ!」

茅乃は元?の性格に戻ったようだ。といっても生意気な感じは結局変わらないがホントにただの子供のような活発さが滲み出ている。

「ミルクを?」

「下さい!」

こいつはなんか扱いやすくて楽だ。こいつも女性の枠とは畑違いだしな。

「で?結局何のようなんだ?」

奏は四人分の飲み物を作りながら振り向きもせずいそいそと言う。

「そうですよ・・・自然ペアさんはなんのようですか?」

プキもソファーに三角座り、イジイジと縮こまりながら2人をジト目で見る。

「・・・あれ?歓迎されてないよ俺たち」

「言い方が悪いぞ偽女と氷女!!うちらはナイーブなんじゃ!」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

その偽女と氷女の凍りつく、というか殺気にも似た邪気のある眼力。

ゴォォォオ・・・・地鳴りが聞こえてきそうな空気を即座に作り出した。

「・・・・・ちと零よ・・なにやら居心地が悪くなった気がする」

「あら?茅乃ちゃんにもわかっちゃう?俺も今感づいてるところ」

「ふむ・・・何か悪いことしたのか?れい?」

「えぇ~俺~?」

鋭い眼力のまま奏はコーヒーとミルクを運んで来た。コーヒーを零の前に置く。

「ありがと虚神ちゃん♪」

ミルクを置こうとするとプキが前に出る。

「私がやりますよ?」

にっこり笑うプキの顔には殺気!と書かれているかのよぅだ。そっとミルクのティーカップを取り茅乃の前に丁寧に置いた。

「どうぞ?」

まるで旅館の女将さんみたいな礼儀作法のある美しい対応だ。

「おぉすまんな!プキ姉!優しいのぉ・・・お!?おぉぉぉぉ!?」

奏は知っている。多分零も気づいている。そっとカップを持った時の指先は青白い輝く軌跡を漂わせていた。そういうことだ。

「キンキンに冷えたミルクだ!やるな奏よ!」

・・えっ・・・・・・・・・・

一同が固まった。プキの技とかって意味ではないのだが・・・

「ん~~~おいしいな奏!うち、こんな飲み方始めてだ!」

ペロペロと凍ったミルクを舐めている姿を見て2人は怒りを継続させる気が失せた。

こうしてようやく本題が始まった。


「え~っと、そろそろ俺たちの話始めていいか~?」

零は一瞬の転換点を見極め、話を切り出しコーヒーを口に含んだ。

「あ?・・・あぁ」

「はい」

硬直が溶けきっていない奏とプキは空返事をする。

「え~っと、じゃあまず虚神ちゃんに自己紹介かな?

 俺は霧桐きりぎり零っていって一応大地属性の神者をやってる。俺は日本人だけどこのちびっこいのはフランス人とのハーフ。んで名前が

「うちの自己紹介はうちがする!零は引っ込んどけ!」

ペロペロしながら茅乃がイキリ込んできた。カッチカチなのにうまいのか?

「うちは茅乃カヤノ・エナ・シトラスじゃ!」

ソファーの上に飛び上がり、これでもかっとドヤ顔で言う。

「で。何の手違いかこいつは草木の神者をしてる。

 ほんでもって今は俺のパートナーで手を焼いてるって状況・・・かな?」

零は淡々と追加情報を付け加えた。しかし茅乃は本当にバカだ。

「手違いちゃうわ!零の意地悪オヤジ!天然パーマ!」

子供の様に舌を出し、悪口を並べる茅乃に対し、零はごく紳士的な表情をした。

「・・・すびばでんでじだ・・・・」

やんわりソフトタッチ、に見えて少し強めなほっぺたツネり攻撃で茅乃を制した。

「で・・・ホントに本題なんだが?」

そしてちょっと真面目?みたいな顔をした。

「あぁ」

シラフに返りざいた奏が応対する。

「俺たちはロンドンで任務についていたんだけど・・・その時の問題が日本に来てしまったかもしれない」

「・・・日本に?」

「ん~、危険視された能力値異常者って奴の追跡が任務だった訳。でももう一人の協力者の登場で逃げられちゃったの」

「異常者の仲間が現れたのか?」

「そうなんだよ~。あとちょっとだったんだけどね~」

 零は軽薄に振る舞いながらコーヒーをすすった。

「それで?俺ら二人に協力しろってことか?」

奏は眉を狭め、いきなり確信に迫った。

零は一瞬ピクっと動きを止めたがすぐに崩れた笑いを見せた。

「違う違う、危険だから気を張っててね♪ってこと。最初は挨拶だけの予定だったけど逃がした俺らのせいでにトバッチリくらったら悪いでしょ?その警告♪」

「・・・・・・・」

「なるほど、まぁ忠告は受け取っておくよ」

「おっけ、・・・・・・ん?」

話がまとまり零が女性陣2人に視線を向けると、2人の話についていけない訳ないはずの残り2人は眠っていた。茅乃はソファーで仰向けになり、だらしなく横たわっている。

プキは最初の三角座りのまま顔をうずめて静かに寝ていた。

「えっ?うそ?つまんなかったの?

 つまるつまらないって話じゃないんだけど!?真面目だよ!?」

「・・・・・・・」

ひと時の沈黙。零の言葉は女性陣にまるで届いていないようだ。奏が2人の危機感のなさに呆れていると零は茅乃をつねりおこした。

「いだいいだい・・・れいいだい」

激烈な刺激に茅乃は目覚める。

「話も終わったし本部にもどるぞ?」

「ふぁい」

茅乃を起こすとシャキんと起立させ、お尻を叩き気合を入れさせた。

「んじゃまたね?虚神ちゃん。とプキちゃん。」

「またな奏!プキ姉!」

なんで初対面の俺に呼び捨てなんだよ・・・そう思いながら奏は出て行く二人につれない顔で会釈した。

――なんだったんだあいつらは・・・でも、一応警戒はしないと――


・・・・・・・・・

「零!二人に協力してもらえることになったのか!?」

小さな手を引かれながら茅乃が顔を見上げる。

「ん?ダメだった。まぁこっちでなんとかするしかないな~」

「そうなのか?あいつはフェイカーじゃろ?もうひとりもいるし・・・2人で大丈夫か零?」

茅乃は不安な表情をした。

「大丈夫だ。俺がなんとかするって」

零は不自然に良い笑顔で茅乃を安心させた。

「そうか♪零がおれば安心じゃな!」

「ははっ。そうだな。」

優しく返事をし、前を見つめる零の眼差しは何かを秘めていた。


・・・・・・・・・・

「あれ?自然ペアは帰りました?」

午後五時。ようやく目覚めたプキが奏に尋ねた。

「あぁ」

流れる手付きで晩御飯の下準備をしながら答える。

「あ!すみません私も手伝います!」

目をこすりながら駆け足でキッチンへと向かう。

「結局あの二人の用はなんだったんですか?」

「逃がした標的が日本に来たらしい。それの警告だそうだ」

「警告ですか?それくらいなら通信で十分なのに。やっぱり奏さんに会いたかったんですかね?」

「・・・・さぁな・・・」

――あいつ・・・本当にそれだけだったのか?――

「というかお前?なんであいつらが苦手なんだ?」

ジュワ!

フライパンに赤ワインを入れ、炎を上げている。今日はフランス料理らしい。

少しの沈黙を挟み、プキが口を開く。

「私は2番目なのになんで1番目と3番目がパートナーになったのかと・・・」

――え?――

なんかそれらしい理由があったのかと思っていた奏はしょうもなさに聞くのをやめた。

「やっぱり土と草って相性いいのでしょうか?」

「・・・・・・」

「水はどっちでも仲良くやれそうなんですけどね?」

「・・・・・・」

「あ!でも奏さんがパートナーになってくれたので嬉しいですよ!」

「・・・・・・」

「あ!じゃああんまり苦手がる必要はないんですね!」

「・・・・・・」

「やっぱり奏さ・おふっ!

あまりに軽快なやかましさに奏はショートジャブをみぞおちにお見舞いした。

「まぁまた来週クリス達に聞いてみるか」

夕飯を食べ、たくさんの事を経験した長い土日は幕をとじた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ