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クロの神者  作者: ペケポン
第一章 プロローグ 全ての始まり
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ローゼンクロイツ

ローゼンクロイツ


二日間、平凡な日常を送り土曜日の朝!プキがいる以外は変わりない生活だった。

ほんと何もなかって良かった!・・・奏はホッとしていた。

「奏さぁぁん!いきますよ~~」

玄関で、俺の家の衣装部屋から服を選んで着てきたプキが呼ぶ。

やっぱり良い服来たら見違えるもんだな。ちょうど女物の服を残してて良かった。

「あぁ」

奏も私服に着替え、ペンダントを首からぶら下げて家を出た。

「あっ。ちなみにここからですと電車で1時間です!」

――そういや場所聞いてなかったな――

「1時間か・・・なんだ、意外に近いんだな」

水雲もずく駅から歩いてちょっとです。」

「水雲駅!??あそこは山ばっかりのところだろ?」

「そうですね~。すっごい田舎ですよ。

 都心だと戦闘が起こった時に民間人さんに被害がでる可能性がありますから・・・」

それは納得。あんな力を使うやつらがやりあったら街が壊れるだろう。

「じゃあ行きましょう!」

妙にはしゃぎながらプキが言った。

「あぁ・・・」

 2人は水雲駅に向かった。


―東西国駅南改札前―

ピッ   ピッ

「あれ?お前のカード。見たことないな?」

ちなみに奏のカードは虚神財閥専用の万能高級カード。大抵何にでも使えるカードだ。買い物、電車、飛行機、とりあえずこれがあれば何もいらない使用になっている。

「これですか?神者専用のカードです!」

「神者専用カード?」

「はい!電車飛行機旅客船。なんでもタダで乗り放題のカオスなカードです!」

プキは誇らしげにカードを掲げた。

「しかも予約なしに最優先で乗れる悪魔な一面もあるんですよ~」

ヒヒヒっと笑わんばかりの顔をする。

「なんだ・・・俺のカードと変わらないな・・・」

!!!!!!!

「なんですって・・・・・・・」

プキは分かりやすく愕然と肩を落とした。

「ん・・・どうした?」

「い・・・いえ・・・なんでもないです・・・」

優位に立っている感を味わうつもりで温めてきたネタだった分、ショックがあったようだ。

「おい。遅れるぞ。早くしろ」

「はい・・・今行きます。」

プキはトボトボ電車に乗った。

ガタンゴトン  ガタンゴトン

「田舎方面は鈍行しかないのが痛いな。特急ならすぐ着きそうなのに」

窓際に肘をかけ、外を見ながら奏は言った。

「そうですか~!?私はこういうのも好きですよ」

反対側の席で、車内販売で買ったポッキーを食べながら嬉しそうに足をプラプラさしている。この電車は鈍行でも車内販売がある珍しいタイプの車両だ。

車内販売といえば・・・・これは少し前の出来事・・・


「まぁ!こんな田舎行きには似合わない綺麗な姉妹さんねぇ?」

車内販売のおばちゃんが2人を綺麗な姉妹。つまり女と思って接してきた・・・

「そんなことないですよ!」

プキは笑顔で普通に答える。

「あら、謙遜しちゃって。変な男に寄り付かれないように気をつけなさいよ~。」

話をした義理で一応ポッキーを買った。そしてひと駅過ぎた時。その変な男がやってきた。

「おねえちゃん達実家にでも戻るの?俺もついて行っていいか?」

チャラい。とにかくチャラい男が2人組で奏達に話しかけてきた。

「はは!ケンくんぶっ飛びすぎだよ!そりゃ女の子も構えるってぇ~。順序ってもんがあんだからさぁ」

そう言いながら1人の男が奏の傍に座った。奏は無視の体制だ。肘をかけて窓の外を見続

けている。流石に公共の乗り物で喧嘩はしない。

その姿はまさにクールビューティ。無視しているだけなのだが、チャラ男達には高貴な大人

の魅力を放っているかのような錯覚をさせてしまったようだ。

「は・・・半端ない・・・」

ゴクリとつばを飲み込むチャラ男2人。奏の美しさに視線を釘付けにされている。

「むぅ~」

当然。プキは本物の女なのに全然興味を持ってもらえないので膨れている。

ジト目でぷっくりしているプキは可愛いのだが・・・

「あの・・・少しだけでもお話してもらえませんか?」

チャラ男も奏の空気に飲まれて敬語になっている。まぁ空気も何もただ無視しているだけ

なのだが。いい加減奏もイラついてきた。喧嘩はできないのだが目で訴える。

「失せろ」

目を細めチャラ男達に厳しく言い放った。

ズキュン!

なんという破壊力。この美貌このオーラから放たれるマニアには待ちに待った冷たい言葉。

「ぐっ!」

チャラ男二人のハートを無数に打ち抜いた。というより破壊した。

「わ!わかりました!ありがとうございました!」

声を揃えて去っていくチャラ男2人はどこか満足気だった。

「うぜぇな・・・」

ぼそっと奏は言い放つ。そして視線を感じた。

じーーーー

プキのジト目は健在だったみたいだ。

「な・・・なんだ?」

「なんでもないですよ」

そう言いながらも見続けるプキ。

――なんなんだよ・・・――


で。今にいたる。まぁ確かに。こういうのもいいかもな。チャラ男の登場は余計だったが。

なんて思いながらゆっくりと移り変わる景色を眺めていた。

すぐに通り過ぎて忘れていく景色を、一つ一つの思い出と重ね合わせていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おとうさま!おかあさま!お庭の石におとうさまとおかあさまを描きました!」

「おぉ!上手いな○○○は!」

「ほんとね。○○○はなんでもできるわね~♪」

「ほんとぉ?」

「あぁ!おとうさん達の自慢の息子だ!」

「大げさなぁ。○○○のプレッシャーになるようなことは言わないで下さいよ。

 ○○○にはのびのびと育ってほしいんですから」

「はっはっ!すまない。○○○?のびのびそだつんだよ?」

「うん!」

「だから変な言い回しはよしなさいって」

「はっはっはっ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

な・・・・・・・・ん・・・

か・・・・で・・・・さん!

「奏さん!」

はっ!

プキの必死な呼びかけにようやく気がついた。

「起きてください次の駅ですよ~?」

プキは無抵抗の奏のホッペを何故か嬉しそうにぷにぷにと指でつついている。

――なんだ・・・・寝ていたのか・・・・――

「悪い」

「ほら!あの山の麓にあります。」

と減速していく電車の窓の外を指差した。

――まだちょっと寝ぼけてるな。疲れてるのか・・・・

それとも気が抜けているのか・・・あんな夢を見るなんて・・・――

水雲駅~ 水雲駅~

プシュー

「着きました!」

プキは元気良く飛び出した。そのあとに続いて降りた奏は目の前の景色を見た。

「うわっ・・・ほんとに田舎だ」

辺りは一面山。山。山!おぉ!家もほとんどない。見えるのは1・2・3・・・・9件の家だけ、どれも古い建築方式の平屋建てばかりだ。

「実はあの家の住人はエージェントだったりもします」

耳元でプキが囁く。

ばっ!

――だからひっつくなって!――

・・・っていい加減少し慣れてはきたが、一歩引いた。

「・・・じゃあここの駅はほんとにローゼンクロイツのための駅なんだな」

「正確にはローゼンクロイツ用の駅にした。

 が正解です。前の住人さんには多額の賠償金で移動してもらったそうです。」

「まっ・・・先住居者も得だろうしな」

「ですかね?さぁ行きますよ~!」

二人は農道をコテコテと歩いていく。途中見えてくる住人を注視してみたが、農作業をしている人たちは本物に見える。とてもエージェントには見えない。

「あそこの神社の境内から入ります」

10分ほど歩けばすぐ見えてきた。

その神社は周りをとても大きな杉の木でかためられていて神秘的だ。地を這う大きな木の根が妖美な雰囲気を作り出している。苔が至るところに生育していて年季を感じ取れた。

真紅の鳥居は鮮やかで神々しさを放っている。何より大きいというのも理由か。

鳥居、杉、大きさのあまり天を見上げてあちこちを見てしまう。

「なんか、作り物みたいな空間だな」

「作り物ですよ!敵襲来時の迎撃用設備が張り巡らせられているらしいです」

奏と一緒に天を見上げ、ケロッとした表情で答えるプキ。

――・・・すごいな・・・――

奏はしばらくうろうろと辺りを観察していた。

「ここですよ~」

プキは趣のある神社境内の扉を開け、中で手招きしている。そこに歩いていくと、

ぶわっ!境内に足を踏み入れた瞬間、部屋の四方に4人の男が現れた。というか最初からいたのか!?それらは全員神主のような服装をしている。そして部屋の中心部にはうっすらと描かれた魔法陣の様な絵を確認できた。プキは中心部に奏を引っ張り一人の神主っぽい人に言う。

「お願いします!」

――なにをだ?――

すると4人の男達が何やら呪文の様に思える言葉を唱え始めた。

キィィィィーーン

唱える呪文に同調し、二人の足元にある六芒星の魔法陣が紫の光を出しながら輝き始めた。

突如光に包まれるはめになった奏は動揺した。

「なんだよこれ!」

「大丈夫ですよ」

プキがそう言いながら手を握ってきた時、

パァァァン!

魔法陣の円の部分がひどく輝きを増し、柱のような神秘的な光に包まれた瞬間。心地よい音を立て、細かく綺麗な粒子になって弾けて消えた。奏は光で霞む視界を断つ為に、深く瞳を閉じた。


「・・・・ん・・・」

「目を開けて下さい!つきましたよ?」

プキの呼びかけに反応し、不覚にもビビって閉じた目を恐る恐る開いた。

フワァッァァ!

風が勢いよく自分を押し上げ、通り抜けていくような感覚になった。

――す・・・・すごい・・・――

今奏が立っている所はどこかの崖の上みたいだ。崖といっても岩で固められた冷たい所ではなく、緑が鬱蒼と茂る温かみのある場所だ。その高みから見下ろす風景。

何キロにも及ぶ広大なる草原、そして気持ちの良い青空。流れる雲は純白で色濃く、残りの9割を占める青は一点の汚れもないくらいに真っ青だ。その草原の中心にあたる場所には異質な建物が4つそびえている。屈託のない黒の建物だ。形、大きさはそれぞれ異なっているが、遠目から見てもその大きさは容易に感じ取れる。

奏には美しい自然と繊細に作りこまれた人工物の奇妙な兼ね合いがとても美しく感じられた。


「・・・ん?」

奏はその空間に疑問をもった。肌に触るあの感覚がない。

「か、風がない?吹いてないとかじゃなく、風がないのか?」

そう、ここには風が吹いていなかった。時が止まったかのように草原の草たちも少しも揺れてはいなかった。

「はい!ないですね。ここは地下施設ですから!」

プキが答える。

「地下施設!?空も草もあるのにか?」

奏は驚きながら辺りを見た。今いる空間が地下にあるなんて到底考えられないほどの作りだ。

「草は本物です。特殊な処理を行い植えてるらしいです。酸素を作りだす補助の一貫らしいですよ。ここ最近で草木の神者さんが手を加えてくれてます。あとあの空は偽物。映像みたいですよ♪」

プキはちょっと自慢げに話した。

「こんなところが地下にあるなんて・・・」

「さぁ歩きますよ~!」

プキは勇足で前を歩きだした。

「・・・けっこう建物まで距離があるんだな」

空間が大きいのもあるがかなり遠いような視覚の錯覚に陥る。歩く道は歩きやすいし問題はないのだが。プキはせっせと前を歩き余裕で答える。

「ん~、1キロもないと思います」

「1キロ?・・・本部に行くのはずいぶん面倒なんだな・・・」

はぁ~。っと奏はだらしない顔をしながらため息をこぼした。

――というかこの地下施設・・・どれだけ広いんだ――

「すみません。本部内転送もあるんですが、外観とかも興味ないかな?って思ったので・・・勝手に外に飛ばしてもらいました・・・」

プキはシュンとした。後ろ姿からも分かる位に落ち込んだのが分かる。

「はっ・・・まぁいい。面白い景色が見れた」

奏は焦ってさらりとフォローする。

「ほ!ほんとですか!?よかったです!ぶっ飛ばされるかと思いました」

と振り向きながらプキは一気に明るくなった。というか・・・

――ぶっ飛ばすってなんだよ・・・その俺のイメージ・・――

「あの4つの塔はそれぞれ役割が違うんですよ~!指令塔。訓練塔。宿泊塔。あと一つはなんだったかな・・・あっ、医療塔です。詳しい説明は忘れましたがそんな感じです!」

「俺たちが行くのは指令塔か?」

「はい!正面のちょっと大きい塔ですね!」

2人は1キロの道程を少し汗をかきながら向かった。


「はい!着きました~!」

奏のハンカチを借りて少しかいた汗を拭いながらプキの声。

「ふぅ~・・・無風の1キロはやけに疲れるな・・・蒸せる・・・」

奏は服の袖で顔を拭った。

「ようこそ虚神奏さん・・・とプキさん。今すぐ開けますので少しお待ちください」

扉から機械的な淡々とした声が聞こえてきた。

「今のはレヴィさんですね。久しぶりに皆に会えます♪」

と。プキはとてもうれしそうにしている。

ガチャン!重厚な扉が無機質な音と共にゆっくり開いた。中に入ると数歩先に何かの機械のような台がポツンと配置されていた。どうやらセキュリティ管理をされたカード差し込み用の機械みたいだ。プキはすかさず胸のポケットから電車の時のカードを出してきた。

「神者カードはここでも使えます。虚神カードでは無理でしょう?くくく」

――なんで得意気にドヤ顔なんだよ――

「はぁ・・・早く開けてくれ」

奏は呆れ顔でプキを急かす。

「ふふふ、では開けます。」

ピピッ

「カード認証」

シュバッ。カードをスライドさせた傍にあったパネルがグリーンに光り、透明のガラス扉が開く。やっと中に入れる。後で知った事だが、この指令塔は28階もある。地下施設に28階ってどんだけ深いんだこの地下施設は・・・

「このエレベーターを使います」

とプキが建物の中心部に位置するエレベーターへと案内する。エレベーターは全部で4台あるようだ。建物中心部に通った大きな円柱の柱の四方にある。まぁ秘密施設っぽい味気ない施設内だな。そう思いながら奏はエレベーターに乗った。

「では指令室に」

プキは27階のボタンを押した。エレベーターの登る速度はとても早く、27階までほんの一瞬のように感じられた。

シュバ。高速でドアが開く。エレベーターを囲むように大きなワンフロアが広がっていた。

そして、目の前の少し特別な椅子に見知った女性がいた。

「まぁ~いらっしゃい虚神さん。プキさん」

クリスだ。その近くには、何台もある機械の画面を見ながらせっせと仕事をする女の子と、反対側でこれまた機械を操る男の子。後方には他にも通信員らしい人が何人も仕事している。

一番の関心はクリスの傍に凛とした構えで立っている大男。2メートル以上はあるのか?

百戦錬磨なオーラがゴォゴォと漂っている。

「みなさんお久しぶりです!」

プキがウキウキであいさつ。そしてほらあなたも的な感じで肩を押してきた。

「・・・・・・・虚神・・・奏です・・・」

――あぁ・・・・こういうのはなんかダメなんだよな――

奏はうつむき加減に不貞腐れつつモジモジと答えた。

「はい~。いらっしゃい。虚神さん」

優しい声で答えるクリス、この人の声は回復魔法みたいに癒される声だ。

「お前が虚神か!?」

巨漢が口を開いた。

「・・・・あぁ・・・」

奏はまだふてくされているようにも見えるが、内心はただビビっているだけだ。とりあえず怖い見た目、声の大きさ、とりあえず無理・・・って直感が働いた。

「クリス。神者候補の一人と聞いたがまた女だったのか?」

――またこのやりとりか・・・――

「いえいえ~。可愛らしい妖精さんみたいですけど男の子さんですよ~」

奏はイラッとしそうだが、この声ならなぜか許せた・・・が・・・。

「世の中分からんな。こんな弱そうな男がいるとは!こんな奴が本当に神者候補なのか」

バカにするような巨漢の言葉にはいらついた。

「この!・・・」

冷静な一瞬の判断。いくらコイツが巨漢の百戦錬磨に見えようと、今までこれくらいの大男はねじ伏せれた。能力値異常者でもないコイツなら。

――少し驚かしてやる!――

強く足の指先で地面を蹴る感覚。

キュッ!フロアの床が摩擦の音をだす。

――みぞおちに一撃だけ!――

奏は拳を構えながら前のめりの体制で加速する。

「まぁ!」

「かっ!奏さん!」

2人の声など関係ない、一撃を当てる!・・・・・ハズだった・・・

バシッ・・・楽々と振り抜く拳を躱して手首を掴み持ち上げられた奏。プランプランと大男の眼前で揺れている。

「ほぅ。確かに男らしいとこはあるな!この俺に挑むとは。気に入った!」

鼓膜が震える大きな声に、またも奏はおののいた。

ひぐまさんに勝てる訳ないですよ!奏さん・・・」

「羆さんも能力値異常者。ましては肉弾戦のプロフェッショナルですよ~」

と2人の声。

――なるほど・・・先に言ってくれ・・・


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