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クロの神者  作者: ペケポン
第一章 プロローグ 全ての始まり
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近衛学園

近衛学園


この日は散々な目にあって終わった。掃除させりゃ物壊すし、ふてくされて寝やがるし

あげくに風呂まで一緒に入ろうとしやがる。後半はしかりっぱなしだった気がする。

神者は有能とか言ってたくせに、あれじゃ普通の女の子だ・・・というかそれ以下か・・・

そんなこんなで騒がしい夜は更けた。

「それじゃ勝手に寝ろよ。俺は明日早い」

リビングのソファーに寝そべりながら奏は言った。

「分かりました~。あっ。電気消しましょうか?」

プキは家中に点きっぱなしの電気が少し気になるらしい。奏は瞼を閉じたままプキに聞こえる程度に小さく答えた。

「いや・・・・いい・・・」

「え~でももったいなくないですか?」

その通りだな。奏は心の中ではそう思ったものの何かが気に食わなかった。

「いいから寝ろ!」

ちょっとムカッとして大きめの声を出した。親切心からだろうに・・・我ながら最低だ・・・・

「は!はい~!ごめんなさい!おやすみなさい!」

プキはそう言うと一目散に寝室に逃げていった。

「・・・・・・・」

――よく分からない一日だった気がする・・・明日起きたら夢でした。ってことも考えられるな――

何てことを思いながら明るいリビングで奏は眠りについた。


ふ~~~   ふ~~~

――なんだ?――

奏は耳元に奇妙な現象を感じてうっすら意識が戻った。

――生暖かい・・・――

なんだこの一定間隔の送風機は?奏は目を覚まし、ゆっくりと視界が開けてきた。

「なっ!」

――なんだと!――

声にならない。いくら大きなソファーだからといって二人が横に並んで寝るスペースが確実に確保されている訳ではないのに。強引にもプキが自分のすぐ傍で寝ている。

――ふ~~~ふ~~~って寝息か!!――

奏はバッと、すぐさま起き上がった。

「お前!なんでこっちで寝てんだよ!」

顔を赤らめながら慌てて叫んだ。が・・・

「・・・・・・・・ふ~・・・・・・」

「・・・おい・・・・」

「・・・ふ~・・・・・・んにゃ・・・・・」

可愛い顔をしているくせに妙に馬鹿っぽい幸せ面して熟睡している。

――いや・・・目くらい覚ませよ・・・――

なんて思っていたが、今日は学校だ。急いで着替えて準備をし、手早く朝ごはんを作った。

いつもの3倍の量を作り、ラップにかけたものと、冷蔵庫にしまったもの。2食分を用意した。

――まぁこれだけありゃ飢え死にはしないだろ。こいつ・・目くらい覚ませよ・・・――

時刻は7時46分。学校はこの家から歩いて15分くらい。駅から反対方面にある。

――そろそろ出るか――

奏は学校へと向かった。学校と言っても、お金持ちにありがちな友達がいないとかそんなことは特にない。セレブなやつらが通ってる分お金関係でどうとかがないからだ。

あるとすれば、虚神財閥の名を恐れて怖がりながら接して来る生徒くらいだ。

通学路の途中の一本桜の通りの遅咲き桜が咲いている。

――俺はこういう風情は嫌いじゃない――

「おぉ!虚神ぃ~!」

後ろから走ってくる奴。名前は銀鏡しろみ蓮。黒髪茶眼のあまり特徴のない当たり障りのない男。しいて言うならややツリ目って所くらいか。身長は当然奏より高く、170を超えた高身長。家柄は物流関係の社長の息子らしい。

高校に入ってすぐに妙に懐いてしまった・・・まぁ友達・・・か。

「・・・おはよう」

「あれ?元気ないな!せっかくの美人が台無しじゃん」

「別になんもね~よ」

よく分からない成り行きとはいえ美少女と同居してるってコイツに知れたら鬱陶しいからな。ちなみにこいつは最初俺を女と思って近づいてきた。

「ふぅ~ん。まぁ楽しくいこうぜ!」

バンっと奏の肩を叩いて蓮はスキップしている。毎度毎度楽しそうなやつだ。

ここ近衛学園は生徒数217人。敷地面積東京ドーム二つ分の大きい学校だ。

生徒の割に敷地が広いのは、将来有望な金持ちのご子息、ご息女達がストレスなく学園生活を送れるようにという配慮かららしい。その配慮は嬉しいがおかげで歩く量が多い。

敷地外周部には特殊部隊のような護衛さん達がいるとかいないとか。

奏がここに通い始めて一年とちょっと。見かけで声をかけてくるようなバカは蓮以外いない。虚神家の者だと親から言われているのだろう。だいたいの者は近づきもしない。それはそれで居心地が良い。人と関わるのは得意ではないからな。

「か~~~なでちゃぁ~~~~ん♥!」

――・・あぁ・・・・・もう一人いたな・・・・・――

思い描くと同時に目をジトらせた奏への壮絶なるタックルのようなハグ行為。

ドカァァン!奏はその者に巻き込まれ吹き飛び、女は自然と仰向けの奏にまたがった状態だ。

「い・・・って・・・・」

「大丈夫!?奏ちゃん!」

馬乗りになった状態で巨乳な女は心配する。が、明らかにお前のせいだろと奏の脳内ツッコミ。

「で・・でも・・・・困惑しながら横たわる奏ちゃん・・・・それを押さえつけている私・・・・」

奏の胸に赤らめた顔をピトッとくっつけた。

「どうしよう・・・・こんな公衆の面前だけど・・・・・・食べちゃいたい・・・・・♥」

女は胸元から耳元に鼻を這わせ、ハァハァとものすごい息遣いだ。

「息が荒いっ!」

奏はドクドクしながらも巨乳女を押しのけた。

「あぁん・・・ほんと恥ずかしがり屋さんね♥」

まったく。女には慣れないがなんかこいつは畑違いだ。

この女は九十院くじゅういん麗奈。才色兼備、巨乳でお嬢様のくせに特殊な性癖を持っている。女しか愛せない百合女ということだ。だが、奏の容姿から、男なのに好かれてしまっている。本来はこれでつじつまがあっているのだが。

「おい!遅刻するぞ二人とも~!」

銀鏡が数メートル先で呼んでいる。

「あぁ」

「ホント!もうこんな時間!!行きましょ♪かなでちゃん♥」

まぁこれが俺の学園生活の基盤だ・・・

へんな奴らだが悪い奴らじゃない。むしろ居心地の良いやつらだ。

虚神家の名以外はまぁまぁ普通の高校生活だと思っている。


「ただいま」

学校を終え、家に戻ってきた。

バタバタバタ

「おかえりなさい!奏さん♪朝はすみません。ご飯もありがとうございました!

 おいしくいただきましたよ!」

奏のエプロンで手を拭きながら笑顔でプキがはしってきた。

「作りすぎただけだ。勘違いするな・・・」

ひねくれながらも奏はおかえりの言葉がかえってきたことに懐かしさを感じた。

――にしても、それ俺のエプロンなんだけどな――

「名誉挽回ぃ!晩御飯はお任せ下さい♪」

バタバタバタ

そう言ってプキは意気揚々とキッチンに走っていった。

「騒がしいやつだな」

奏は制服を着替えた。何やら惹かれる香りが漂ってくる。キッチンに行くと、

ドン!あらら、テーブルの上になかなか豪華な夕飯が並んでいる。

「これお前が作ったのか?」

奏は素直に驚いた。

「モチのロンです!頑張って作ったので早く一緒に食べましょう!」

プキはお皿としゃもじを持ってニコニコしている。

――意外だな。本当に料理できるのか――

「はっ・・・まぁ使われた食材の為にもいただくか」

奏は憎まれ口を叩きながら席に座った。

「これも美味しいですよ~?」

「あっ!これもどうですか?」

「これはこうすると更に美味しいんですよ~」

「あっ!それ自信作です!」

プキは淡々と嬉しそうに料理を勧めてくる。奏が口に運ぶ料理を見ては言葉と視線をぶつけてくる。何かを期待している感がとても強い。

「静かに食えないのか・・・」

そんなにうるさかった訳じゃない。素直に答えられないのでキツイ言葉が自然に出てくる。

「あ・・・すみません・・・・」

プキは怒られた小動物のようにシュンとなった。それを見た奏は少し慌てた。

「・・・・まぁ・・でも・・・・・美味いよ・・・」

気を遣うように奏は小さな声で言った。

「ほんとですか!良かったです!」

「でですね・・・・・・」

「あっ!これなんかどうです?」

「それとこんなのもあります!」


――また喋り始めたな・・・コイツ・・・――

なんて思いながらも奏はちょっと居心地が良かった。明るいプキの性格。すさんだ奏の心に良く効いたのかも知れない。それに他人の手作りなんて久々だ。

「今日はちゃんと部屋で寝ろよ」

「えっ?はい!えぇぇと・・・・多分!」

なんて、テンパりながらプキは答えた。


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