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クロの神者  作者: ペケポン
第一章 プロローグ 全ての始まり
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ヒルズ・ビルゲーム

ヒルズ・ビルゲーム


任務開始時刻はPM3:14

AM11:00よりヒルズ・ビルの上層5階を除く下層28階の住民の避難が始まった。

ここは下層15階まではオフィスとなっており、約350人もの人間が働いていた。

それより上には1階に一部屋だけの高級マンションとなっており富裕層が購入している。

それらを含めおよそ380人の避難だ。

エージェント達により誘導され避難を始めたがアグニ達からの干渉は一切ないようだ。

PM0:30には全員の避難を終え、警察がヒルズ・ビル半径500メートルを封鎖した。

今回はどうやら大々的な作戦のようだ。しかしメディアの介入は一切許されておらず記者の姿どころか野次馬の存在も無く、重々しい空気が辺りを包んでいた。

そして今はPM2:06 宗治郎も到着し作戦メンバーの5人が虚神邸に集結した。

リビングのソファー周辺に落ち着いた5人はテーブルの上のタブレットモニターの羆の作

戦指示を受けるところだった。

「作戦開始まで後一時間くらいだな。大丈夫か?虚神?」

「・・・大丈夫だ。今回はしくじらない」

ソファーに座り両脇にプキと麗奈をはべらせ?ながら奏は真剣な声を出した。

「かなでちゃんは私が守るわよ♥ねぇ~?かなでちゃん♥」

「ちょっ・・・奏さんのパートナーは私です!私が守りますよ!」

あれから何故か張り合う事になったプキと麗奈。本当にもう・・・

「うるさいぞ・・・」

「もうかなでちゃん♥」

「はいっ!」

そして奏の言うことに忠実だ。宗次郎はその光景を見て微笑んでいる。

「で?どうするの?」

窓際に寄りかかって立っている銀鏡が羆に尋ねた。

「作戦・・・というほどではないんだが。避難誘導、警察による封鎖までがほとんど今回の作戦の主軸だ。お前達に出せる命令は少ないんだがとりあえずはパートナーで行動しろ。宇治師範代はプキのパートナーの補助にまわってもらう」

「えぇ!かなでちゃんと一緒にいたいわ!」

「ダメだ。とりあえず最初は5人だが何かあった場合はパートナー行動を優先しろ」

「・・・もう・・・・」

「ってことは俺達への命令は勝て、ってことだけなのか?」

ぎゅうぎゅうっと攻め寄る麗奈を左手で制しながら奏は尋ねる。

「そうだ!話し合いなんかしようとするな?殺されるぞ」

「・・・・分かった」

少なからず会話による終結を望んでもいた奏は、気持ちを押し込められる感覚で言葉を発

した。

「目的地までは歩き?そろそろ出たほうがいいんじゃないか~?」

体の至る所を触り何かを点検しながら銀鏡が言う。

「いや、転送魔道士に飛ばしてもらう」

「この近さなのにか?」

奏は問いかける。1500メートル程でわざわざ転送してもらうのは・・・なんというか

勿体無い?ような感じがしたからだ。

「そうだ!メディアの介入を禁止したところでこんな事件を指を加えて見ておくはずがない。何か手を使ってくるかもしれんからな!日本、世界でわざわざ素顔を晒すのはお前達の命に関わるかもしれん。本来ならこんな大規模な作戦は望ましくないのだが、敵は能力値異常者とフェイカーが4人だ。そんな事を言っていられる状況ではない。だから最低限の転送による素性隠蔽だ」

・・・なるほど、そう言われればそうか。下手に顔を晒せばそれを見た異常者が寄ってく

るかも知れない。確かにそれはごめんだな・・・

「まぁそうだな~。ここまでの大規模な表立った作戦はなかったもんね。メディアとか関係なかったし」

「そうね~。考えてみればそうよね」

「はい!皆無事に帰ってこられるように頑張りましょう!」

「分かりました。微力ながら精進させて頂きます」

宗治郎もようやく会話に混ざってきた。こいつの手を見れば分かる・・・震えている。

理由は恐れている・・・はずがない。明らかに武者震いだろう。強者とまた戦える喜びか

らだろうか・・・本当、宗治郎をこちら側にできて良かったと奏は思った。

「あぁ!健闘を祈る!」

プツッ。激励の言葉と共にモニターは暗転した。各自はそれを合図に各々の武器を確認す

る。プキと宗治郎の武器は知っている・・・が銀鏡と麗奈の武器は?・・・

奏はリビングの隅で装備を確認している麗奈に視線をやった。

――・・・ん?・・――

麗奈はアタッシュケースを開け、蓋側についてあった黒い薄手のコート?を羽織った。

とそこは問題じゃないのだが武器が問題だ。

「麗奈、お前の武器は銃なのか?」

思わず奏は聞いた。だって前の羆の話では銃は効果が薄いって事だったはずだ。

「そうよかなでちゃん♥私はガンスリンガー(銃使い)よ♥」

ラブラブな光線を出しつつ体中に装備していくホルダー、マガジンの数々。奏は銃に関し

て知識がないのでよく分からないが、拳銃を4丁、小さなマシンガンを2丁、小さめのシ

ョットガンを2丁、スナイパーライフルを1丁と・・・至る所に装備している麗奈。

「ガンスリンガー?異常者に銃は不向きなはずだろ?」

「ん~そうよ♥でも異常者のみが使えるこの強力な銃と反射能力があれば充分戦えるわよ♥」

「そうですよ!麗奈さんは銃で戦ってきた異常者の中でも特異なタイプの人ですよ」

――例外もあるって事か・・・――

奏は続けて銀鏡を見た。銀鏡は先ほど体中を触ったくらいで装備?の類はしているように

は見えない。奏は素直に質問した。

「蓮、お前は武器を使わないのか?」

その言葉に銀鏡はにっこりと反応し奏に近づいた。

「虚神、ちょっと殴ってみて?」

「はっ?」

「いいからいいから」

「ん・・・・・こ、こうか?」

いきなりのパンチの要求に奏は恐る恐る銀鏡のお腹に拳を当てた。

ガコッ

「いたっ!」

子供のじゃれあい程度のパンチだったのだが、奏は拳が何かとてつもなく固い物に当たっ

た気がした。というか赤くなってしまった。

「はははっ、かかったな虚神。これが俺の装備だよ」

――どれが!?――

と間髪入れずツッコミたいほどだったがなんとなく分かってしまったので言葉に出さなか

った。そしてその装備の証明に自分の拳が痛めつけられた事に対してジト目で銀鏡を睨ん

だ。

「あらら、悪かったよ虚神。睨むなって。まぁ俺の装備はボディプレートだ」

そう言うと銀鏡は両腕の服の袖をまくり上げた。すると白銀に輝く塊が鎧の様に腕に装備

されていた。まるで篭手のようだ。

「重くないのか?」

「これもローゼンクロイツ製だ。びっくりするくらい軽いよ」

「・・・・ってことは蓮は格闘で戦うってことか?」

「そゆこと~。全身武器みたいなもんだよ」

「そうですよ~!銀鏡さんはかくとオフッ!」

プキがあまりに意気揚々と追加解説にまたも入ってきたのでとりあえず脇腹に軽いワンパ

ンを見舞った。なんかちょっと久しぶりだ。

「とりあえずこれで皆オッケーなのかな?」

銀鏡が場をまとめるように声を出した。それに呼応し4人が返事をする。

少しすると転送魔道士が庭に入ってきた。魔法陣を浮かび上がらせ待機してくれている。

奏は最後にもう一回自分のシュヴァイツァーサーベルを確認した。相手の命を奪う事ので

きる武器・・・鞘から少しだけ剣身を抜き出し輝く光沢に目をやった。

――俺が出来る事を・・・――

瞳を一度固く閉じ、剣を鞘に収める。

「行きますか!」

元気の良いプキの声を合図に瞼を開き、もう一度ヒルズ・ビルに視線を向けた。

――歪んだ感覚・・・・・・絶対に許さない・・・――

暗く重い記憶と感情。奏の綺麗な蒼白の瞳が一瞬だけ霞んだ気がした。


PM3:02 任務開始まであと12分 5人は庭に出た。


「では・・・ご武運を」

転送魔道士は言葉の後、直ぐに詠唱を始めた。

「ありがとうございます!」

「あっ♥かなでちゃん大丈夫?確か転送苦手だったでしょ?」

「ばっ・・・誰がそんなこと言った!これくらい朝飯前だ!」

「あぁん♥必死に隠そうとする所が可愛くてしかたないわ♥さっ♥胸の中に♥」

「あほかっ!」

「麗奈さん!転送中ですよ!控えてください!」

「そうだわ♥そこのあなた!私とかなでちゃんを違うホテルの一室に飛ばせない?♥」

「○△×う□あ○×」

ごちゃごちゃと雑談を交わしている最中に、キュン!と光は拡散した。

希望の光、絶望の闇。数多の思いを乗せ5人は作戦開始地点に転送された。


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