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クロの神者  作者: ペケポン
第一章 プロローグ 全ての始まり
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始まりの出会い

この作品には各話ごとの振分けをしていないため、読みにくいかもしれません。それでもおもしろいかな?と感じて下さる読者の方は読んでやって下さい。感想など頂ければ幸いです。



あなたは命の重さをどう見る?

俺には分からない。

木・山・水・川・海・空。様々な自然にも命はあるのか?

例えばこの地球上の代表的な生き物。人の身体を抉れば命の塊を見つけられる?

もちろんそんな事できる訳がない。

でも重さはどうだろう?

微生物・虫・猫・犬・象・キリン・猿・人・色々と個体、知能の差は大きい。

じゃあそれによってそれぞれの命の重さは変化するのだろうか。

小さな羽虫は簡単に殺せる。殺せない人も可哀想という人も対して差はない。

それは自分より個体、知能の小さな生き物を本当の意味で【命】として見ていないからだ。

しかし大きな生き物に対して人はどう思ってる?

捕食用に育てたり、害があるからと殺したり。なるほど個体差は関係ないようだ。

結局人は己の種の事ばかりだ。色々な道具を発明し、力をつけ、弱きものをねじ伏せる。

かといって人同士も争う。それもとてつもなく醜く、残酷に。

じゃあこれはどう思う?

一人を助ける為に何人もの人が【命】をかける。その上でそいつを助けたとしてそれまでに何人もの【命】が失われる。面白いくらいの矛盾だ。俺はそう思った。

でもそれも人間。

それはその者の命の重さが招く結果なのか?死んだ同志は命の重さが足りなかったのか?

あと何グラム?あとどれくらい重ければ死なずに済んだのか?・・・・

大切な何かを失った時に空く心の隙間。

それは失われたものの命の重さ?それとも俺に預けてくれていたあなたの命?

俺には分からない。

大切な何かを失った時。それまで積み上げたその【何か】との時が消えてしまう。

そしてその分だけ俺の命は削れていくのだろうか?

なら・・・今の俺の命には重さがあるのだろうか?


・・・俺には分からない。

・・・本当に・・・くだらない・・・




始まりの出会い


AM10:38 とある商店街。

「うわっ・・・君可愛いね!! どこ行くの?」

「あの・・・モデルとか興味ないですか?」

――またか――

PM3:16 とある街道。

「はーい!ここから通行止めで~す♪メルアド教えてくれたら通してあげるよ♪」

「ずっと!ずっとあなたを見ていました!受け取ってください!」

――あぁぁっもうっっ!うざい!――

透き通る湖のように輝く、青空のようなブルーの瞳。筋の通った鼻。長いまつ毛、細く、綺麗な漆黒の髪の毛。華奢で小柄なシルエットの体型。誰もが一目でわかる美しさと可愛らしさ。皆が声をかけるのも無理はない。

でも一つ、その者には問題がある。というより問題点以前の話だ。

神が作りしアダムとイブの存在。見た目からイブのほうだと誰もが錯覚してしまうだろう。

でもイブではないのだ。

そう・・・彼はアダム。男の子なのだ。

何より本当の問題点は声をかけられたそのあとだ。大抵は無視してやり過ごすが、あまりにしつこいと、彼は一人残さず一掃してしまう。相手が何人だろうとどんな大男だろうと、華奢で小柄な体でたちまち地にふれさしてしまう異常な強さをほこっていた。

「はぁ~、凝りないやつらだ。俺のどこが女に見えるんだよ!」

右手をポケットに入れ、左手で綺麗な黒髪をクシャクシャにしながら近くのベンチに座った。

「こんな顔に生まれたから悪いんだ・・・」

胸元の、銀の装飾をあしらったペンダントをギュッと握りしめ、少し寂しそうな顔で空を見上げた。

「なんてな・・・」

線の細い声でそう呟くと、彼は細い腰を上げ歩きだした。


ここは東京都神島西國かしまさいごく市。大都会の中心より気持ち離れた住みやすい場所。そこの東西国駅から徒歩15分。とても豪華なお屋敷。庭には池があり、小さく趣のある橋がかかっている。

カコーンカコーンと、ししおどしの音がなんとも雅である。

そのくせキッチンは洋風なシステムキッチン。釜戸もあって、本格的なピッツァでも焼けそうなほどだ。そしてリビングには暖炉。と、ハイカラな仕様となっている。

彼はそこに一人で住んでいる。広い日本庭園も、ししおどしの鳴り響く音も、数多い部屋も・・・彼の寂しさを一層引き立てる要素でしかなった。だけど彼はここを出ようとはしない。

「ただいま・・・」

誰もいない家に彼は帰ってきた。玄関、ローカ、キッチン、リビングに明かりをつけて回り、リビングのいかにも高そうなフカフカソファーに腰を下ろし、テレビをつけた。

「・・・・・」

お笑い番組をつけながら、昼間に作りおきしておいたチキン南蛮と味噌汁、小松菜のマヨネーズ和えをたいらげた。豪華な家の割にはとても平凡な食事だ。

「旨い・・・」

食器を慣れた手付きで洗い終え、シャワーを浴びて歯を磨いた。

「おやすみ・・・」

誰に発した訳でもなく、彼は静かに呟いた。今日は土曜日。時間は夜の9時頃。家中の電気とテレビをつけたまま、リビングのソファーで眠りについた。

 

「今日の占い・・・カウ・・・トダ・・・・・ーン」

テレビから朝の占いを読み上げるアナウンサーの声が聞こえてくる。

「ん、んん・・・もう朝か」

寝起きでもサラサラの綺麗な黒髪をかき、起きあがった。大きな洗面台で歯を磨き、寝ていたソファーにもう一度腰をかけ思考する。

――今日は日曜・・・か。公園にでも散歩に行くか――

そう思って彼は仕度をした。休日の散歩、町の散策は彼の日課になっている。一人家でいることがあまり好きではないからだ。昨日の作りおきのおかずで朝食をとり、テーブルに置いてあるペンダントを女々しい首にかけて家を後にした。


――げっ・・・若い男がいる――

と思いつつもベンチに座り、途中で買った缶コーヒーを開けた。

プシュッ

「うわっ、・・・最悪だ」

ベージュ色のズボンに少しこぼれたコーヒー。フリルのついた可愛くも気品ただようハンカチでふいていた。

「あれ?何かお困りのようだね!」

彼の慌てている様子に二人の若い男が覗き込むように声をかけてきた。

「なんでもね〜よ」

彼は眉間にシワをよせイラッとした表情を見せた。

「わぁ怖い。君みたいな子がそんな言葉使いとかギャップあっていいねぇ〜

 流行りのツンデレってタイプなのかな?いいよぉ~君」

2人の男は品定めするように彼を見まわす。

「・・・・・・・」

シカトを決め込む彼に男は執拗に食いつく。

「あれ?無視?いいじゃん、遊びに行こうぜ」

と言って一人の男が腕を引こうと手を伸ばして来た。

――こんな奴ばっかりだな・・・本当にうざい!――

不本意だが・・・脇腹に一発ずつだ・・・そう思い立ち上がろうとした時だった・・・


「ちょっと待って下さい!その人は私が先に目をつけてたんですよ!」

威勢のいい声で何者かが叫んできた。声の高さからして女か・・?

声が聞こえてきた方向を見て目を凝らすと、ずいぶん先の滑り台の上にそれがいる。

ええと、腰位までかかった長い黒髪。透明感のある黒く青みがかった目が印象的な女の子。

少し幼くも見えるが、まぁ一般的に見てかなりの美少女ってところなのか。

そいつは明らかに高性能な望遠鏡を持っていて滑り台を降りて走ってくる。

――・・・なんだあいつ・・・――

前までくると、いやかなりの美少女だ。きめ細かい肌にはなんの霞みもない。まさに美少女って感じなのだが。ここは当然・・・

「うわっ!可愛いね。君も一緒に遊びにいく?」

軟弱な若い男達がむらがる。その女の子は両手を机に叩きつけるようなジェスチャーも見せて反論する。

「そんな訳ないですよ!ベンチの子に用があるんですよ!」

えぇぇ〜俺かよ・・・と思いつつ続きを聞いた。

「ふふふ。あなたをこの状況から助けてあげます!

 だからこれから私のパートナーになってもらいますよ!」

と、微妙な笑みを浮かべ、彼女は軽めにファイティングポーズをとりだした。

――はっ?・・・なんのこっちゃ・・・――

「大丈夫ですよ!私は強いんですから!あなたはそこでまったりしてて下さい!

 この人たちにどこかに行ってもらったあとお話します!」

彼には彼女が言っている意味も、なぜ助けてくれるのかも分からない。そもそも助けの必要がない。一瞬、冷ややかな視線を彼女に向け少しだけ瞳を閉じた。

――はっ・・・くだらない――

その思考と同時に彼は地面を右足で強く弾いた。弾いた地面の砂が衝撃をうけ飛び散る。

シュバッ!勢いをそのままに、柄に似合わぬ重い蹴りで軟弱男1を吹き飛ばす。

そしてもう一人の軟弱男2の懐に瞬く間に入り込み、そこからわずか10センチの拳と男の体の間から右のストレートを繰り出した。

メキッ!

「うぐっっ!」

男は悲痛な叫びにも似た唸り声をあげ、数メートル先の植木へと吹き飛ばされた。

それは一瞬の出来事だった。彼女は驚いた。助けようと思っていたのに・・・・

恩を売ろうと思ってたのに・・・というかナンパだけでやりすぎでは・・・

ただ一つ。彼女が分かったこと。

今のパンチ・・・あのパンチは寸勁に類似した攻撃だということ。寸勁とは、中国拳法の秘伝とされる奥義で、わずか3センチの隙間があれば相手を吹き飛ばすほどのパンチが打てるという、ちょっと嘘のような技だ。それを、10センチと少し広めの隙間とはいえ、こんな小さな少年が繰り出した事実を驚いていた。そして彼女は確信を得た。

「つー訳で、パートナー?はっ!!笑わせんな!

 俺は一人で十分だ!というかパートナーってなんなんだよ」

彼はふてくされた表情で冷たくほくそ笑み、振り返った。が、彼女を見たつもりがどうやら視線は合っていない。

「やっぱ・・・じゃ・・・・・・かった・・・・」

うつむいたまま彼女は何かブツブツ言っている。

「な・・なんだ?喧嘩を生で見るのは初めてか?そんなんで間に割ってはい

「やっぱり間違いじゃなかったですよ!」

彼女は話に大声で割って入ってきたかと思うと、とびきりの笑顔を見せた。

彼は少しおののいた・・・

なんだこいつは?と思うやいなや彼女は地べたにチョコンと座り深々と頭を下げ、彼を見上げた。

「いや~。ん~~~♪これから宜しくお願いします!」


――ん・・・・えぇ・・と・・・だからね・・・・――

望遠鏡で俺を見て何していたんだとか

パートナーってなんなんだよとか

ところでお前誰?

とか多数のツッコミを思っていたこの瞬間

この時

彼の未来は大きく変化した。

いや変わってしまったのはもう少し前

でもそれよりも良い方向に変わったのはこの出会いからだった。

・・・・・・・・・のかも知れない?


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