第002話 遠慮ひだるし伊達寒し
サブタイに意味? んなもなぁない!
《地獄車ってゆうのは、相手を車輪の外輪に、自分を内輪にして転がる技なの。回転するたびに相手は脳天と脊髄を打つけど、自分は無傷なままなの。とーっても危ないので、よいこのみんなはマネしちゃダメよ、なの。ついでにゆうと、この「地獄車」という必殺技はのちに「お面のバイカーばつ印※」の「真空地獄車」に発展するのだ! なの》
「『そこかい!』」
あ、ハモった。嬉しくない。
しかし、変なトコに突っ込みを入れる幼女だ。随分前の話題だぞ。
それにまた、最後はだいぶグレーなものを持ち出して……、警告がきたら、どうしてくれる。
《わたちは智の女神の一柱、物語を司るポリュヒュヒュ……ポリュヒュムュ……ポリュヒュ・ム・ニ・アー! なの》
噛んだ。
見た目5歳くらいの金髪ツインテで碧眼の美幼女が、噛みながら名乗った。
もう一度言おう、噛んだ。
《そこはスルーがマナー、なの! ////》
真っ赤になって、ぴょんぴょん跳ねながら抗議してくる。ナニコレ、カワイイ。
いかん、なにかイケナイモノが目覚めようとしているっっっっ!
ギリシャ神話の女神が着ているような、ひらひらした衣を纏っている。あ、女神か。
『ほうほう、ミューズの一柱じゃの。作家にとっては、崇めても崇め足りん存在じゃな』
《そうなの。ここはなんだか、わたちの加護がほしい人たちの思念がうず巻いている〜、なの。うやまえ〜、なの》
幼女神は、むふーと鼻から得意げに息をつき、ペッタラコな胸を張った。
《ペッタラコ言うな! なの!》
だが断る!
さて、今日の世界情勢は〜〜〜っと。
『何しとるんじゃ、チートいらんのかの?』
《わたちはABCどれを選ぶのか楽しみに待ってます! なの》
「だってさぁ、選んだら異世界行きじゃん。だ・れ・の・せ・い・で、行かなきゃならんのか・な〜? もっと出すものあると思わない?」ニヤリ。
《ワルい笑顔なの。でもそれがイイ! なの。わたちのおんなの部分が……》
「すとーーーーーっぷ! 幼女がそれ以上言っちゃだめ! お兄さんは泣きます。さっきまでのポリュちゃんは、どこ行ったの?」
《くくく、バカめやつはちんだわ》
「のおおおおぉぉぉぉぉっ! ポリュ、かんばーーーーっく!」
…………。
……………………。
………………………………。
『……、そろそろ仕事の話、しません?』
「《ハイ》」
『そういえば、ポリュヒュムニアーは名乗ったんじゃの。儂はブラ……』
「ポリュちゃんは、どれがいいと思う?」
《わたちのおすすめは、Bの戦士系なの。Aの魔導士系だと、異世界にいってからの魔法の設定構築や描写が、とーってもめんどくさいことになるのなの。Cの内政系も、政治の形態やインフラ、人権意識とかの描写がめんどくさいのなの》
「ははは、そんなメタなことを言っちゃあだめだよ」
《ふふふ、ごめんなさあいなの》
キャッキャウフフ。
『あの、儂の名はブラ……』
「目玉焼きには、断然しょうゆだと思うんだ」
《そんなことありませんのなの。ケチャップもおいしいのなの》
「それはオムレツだあっ。目玉には認められん!」
《おいしいものはおいしいのなの! おしょうゆはしょっぱいですなの!》
「半熟をくずして、しょうゆと混ざり七味がぱらりとかかった目玉焼きは王道!」
《わたくち、実家にかえらせていただきますなの》
『……ブラ……』
「はい、こちらコモド相談室」
《うちのコモドドラゴンの伊集院くんが、さいきん元気がないんですのなの。どうすれば元気になるのかおしえてほしいんですのなの》
「伊集院というのは名字かな?」
《 “伊集院くん” というなまえなの。ちょうれいでは、いちばんまえなの》
「コモドドラゴンが?」
《コモドドラゴンが》
「……。さて、次の相談は……」
『 orz 』
「 ヾ( ̄0 ̄ ) 」
《 v( ≧ ∇ ≦ )v 》
『 p(´⌒`。q) 』
「 ( ⌒ ^ ⌒ )b 」
《 d(゜- ^ * ) 》
『 ヾ(●⌒∇⌒●)ノ 』
「 (ノ ̄д ̄)ノ========卍 」
《 o(〃^▽^〃)o 》
『 ===卍◇ ̄;)ノ 』
「 ≡≡≡ ヘ( *゜∇゜)ノ 」
《 ≡≡≡ ( ^ O^ ) 》
『 ε=ε=ε= \(`Д´)/ 』
「《 ( * ̄▽ ̄* ) (o⌒∇⌒o) 》」
『 orz 』
「と、いうわけでこれからはブラ爺と呼ぶから」
《ブラ爺さまよろしくです、なの》
『はあはあ、意味が分からんが、もう……それでいいわい。はあはあ』
「ブラ爺、美幼女の前で息をあらげるのは、感心せんぞ」
《どこ見てんのよ、なの》
『儂、泣いていい?』
「さて、能力付与に関してだが……」
【あはははははははははははははは!!!! 正体をあらわせ〜〜〜!!!!】
そのとき、若い女性の哄笑が響きわたった。
あ、また同じ引きだ。さて、どうやって話を進めようか、ポリュ様。
※察してください♪
まだ続きます。
この小説は 2012年10月30日 12時 に掲載されるよう予約されていました。