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第2話(1)

ほらさっさと起きな! とでも言わんばかりに鳴り散らす目覚まし時計をノールックで黙らすと、俺は急に何かを思い出さなければならない使命感に襲われた。く、なんだ……これは――――夢を見たことは覚えていて、それがなにか大事な意味を含んでいることも分かる。だが、それが何なのかは分からないし、時間がたつにつれ夢の内容も思い出せなくなってきた。そうなったらどうしようもないので、俺は重いまぶたをこすりながらリビングに入った。



「ん、んあおー」



棒付きアイスを頬張りながら妹が出迎えた。おそらく「おはよー」と言ったのだろう。すでに着替えを済ませており、アイスを食べきったらもう家を出るのだろう。朝からアイスとはまた…………俺の分はまだあったかな。ほんと暑いよね、最近。




冷蔵庫を隅から隅まで漁って妹がうまそうにペロペロしてたのが最後だったと知った俺は、元から低いテンションゲージの底をドリルで削る勢いで落とし、朝食もそこそこに玄関を出た。




うあ、アホみてえな直射日光が俺をいぢめるよう。もうやめて、俺のライフはゼロよ。暑さとダルさに肩を落としながら下を向いてぼちぼち歩き始めると、



「よ、ねぼすけ」



……俺はそのまま通り過ぎようとする。すると慌てた声で、



「ちょちょちょ、待ってよお」



あん、なんだよ。なんか用か。と、俺は表情で訴える。ダルいんだ、声に出すの。



「せっかくだし一緒に行こうよ」



なんのせっかくだ。お前待ち伏せしてただろ。と俺は表情で(以下略)。俺が歩き出すと麻弥もちょこちょことついてくる。しょうがねえな。昨日こいつが言いかけたことを聞いてやるか。



「なあおい。昨日お前なんか言いかけたろ」



すると気のせいかこいつは一瞬うぐっ、と顔を引いたようにも見えたが、いつもと変わらない様子で、



「たいしたことじゃないからいいの。それより、この程度の暑さでへばってたら午後までもたないぞ」


ちょうど耳が隠れるくらいの長さで、前髪は片側だけピンで留めたそいつが、俺の肩をたたく。いてえな、こら。夏は嫌いなんだよ。



「お前は元気そうで羨ましい限りだ」



「だって、夏好きだもん」



麻弥は自慢げに胸を張る。すると、同学年の中では平均よりは確実に上であろうサイズのそれにワイシャツが持ち上げられてウエストが見えた。だがこいつのヘソチラなんか日常的に見慣れた俺にとってはなにかが起こるわけでもなく、はしたないからそうやって無防備に肌を見せるんじゃありません、とむしろ保護者的な視線を向けるのだった。


まぁなんだその、俺はともかくとして、お前は気づいてないかもしれんがな、それなりに自分が野郎の視線の対象たりうることを自覚しろということだ。


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