第2話(8)
視界が狭まり、意識ともにブラックアウトするかというときにもかかわらずふと脳裏によぎったのは、戦隊ゴッコでの俺の配役は毎度ピンクであったということだった。
「そこは麻弥だろ……」
そう言い残し、俺は急速に傾く本棚が見えた後、どこか遠いような、えてしてものすごく近いような所で床を硬いもので打ち鳴らす音を聞いたのを最後に、安らかに眠りについた…………
アハハハハ……アハハハ、はははっ……
……俺が何をしているかって? ふふっ愚問だなあ。わかるだろう? お花畑を走っているのさ。この花畑を越えて、俺は安らぎの国へ行……
「私がどうしたって?」
「いっくぅうううぅぅううう!!」
「ちょっ、変な声出さないでよ」
「んあ?」
仰向けの状態で目を開くと、そこには中腰で俺を見下ろすように麻弥がいたのである。
「おま、なんで俺の部屋に」
当然の疑問を投げかけると、麻弥はクルっと反転し俺に背を向けて言った。
「今日お父さんが急な出張で帰れないらしいから、なおくんちにお世話になろうかと思って」
俺は立ち上がり、
「泊まるのか?」
すると麻弥は肩を一瞬ピクつかせたのち再びこちらに顔を向け、
「だ、だめなの?」
捨て猫が訴えかけるような目をするんじゃない。
「いいけど、どこで寝るんだよ。……まさか俺のベ――――ッ!!」
……ぉふっつ…………鉄拳制裁が来たゾ! コブシが、頬にめりこんでるゾ!
俺が床に膝をついて頬をさすりさすりしている一方で、麻弥は突如動作を止め、視線を下に釘付けている。数秒間の停止ののち、麻弥はそれを拾い上げた。俺が先ほど見ていた、アルバムから落ちてきた謎の少女の写真である。麻弥は眉間を狭めながら写真を凝視しており、俺は麻弥のその異様な食いつきに疑問を寄せる。
「この子……」
すると麻弥は写真の少女に顔を向けたまま、かすれそうな小さな声で呟いた。
「葵…………」




