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第2話(6)

さ、さて、気を取り直して封筒の中身を確認しようではないか。知らぬ間に見当もつかない方向へワープしていた茶封筒を、たこ焼きをひっくり返すように拾い上げ、俺は念のため片目を瞑り片耳を指で塞ぎながら封筒を下に向けた。



はらり、と前回同様に一枚の紙が落ちる。俺は左右に舞うそれを空中で掴み(これくらいできるさ)、こみ上げるような決意と焦りに押されるまま、紙に書かれた文字を眼前に捉えた。




『時の歯車。記憶の欠片かけら



紙にはそう印字されていた。『運命の輪』に続きこれは……。アヤシイなんてもんじゃない。あかんやつや、これ。



「おい、戸締りは大丈夫か? 二階の窓も!」


「えー、暑いから開けてるよお」


「クッ」



俺は妹ののんきな態度に怒りを覚えるより先に戦慄せんりつし、あらゆる窓に急いだ。階段を駆け上がっていると足元から崩れ落ちるのではという恐怖すら感じる上、普段より階段が長いもののように錯覚する。途中手をつきながらも何とか上り終え、俺は自室に駆け込む。窓まで走り寄ろうとしたそのとき、俺は何かにつまづき、釘を打ち付けるような音と同時かそれより速く、鈍く冷たい衝撃が足先から全身へ伝わり、そして俺は派手につんのめって等身サイズの本棚にぶつかり、嫌な予感に浸る隙もなく本をバラバラと倒してしまった。



「っつ……なんでこんなとこに本棚が……」



とはいったものの本棚をその位置にセッティングしたのは他でもない俺だったことに思い当たり行き場のない憤りに苛まれる。俺はそのまましばらく無残に崩れ落ちたマンガ類を見るでもなくただただ呆然とした後、痛む足先をさすりつつ身体を起こし一冊一冊手に取り棚に戻し始めた。それはそうと、下にいる妹の奴にもこの騒音は聞こえているはずだが、様子を見に来ない点、パズルに夢中か心配ひとつしていないということでしょう。兄は泣きそうです。




そうして本を片付けていると、あまり見覚えのない、水色のカバーがかけられた一冊を見つけた。ほこりを払いつつ開いてみると、それは俺の幼稚園の卒業アルバムだった。なぜか吸い込まれるように俺はアルバムをパラパラと眺めて始めた。幼き姿であるとはいえ、ほとんどが見慣れた顔ぶれであった。ここ一帯にはあまり学校がないため、高校生となった今でも学校中に多くの顔なじみがいる。



「お、麻弥だ。……はっは、こいつ男みてえだな」



無理もない。麻弥は生まれた頃から父子家庭に育ち、この周辺には年の近い女の子がおらず、昔から一緒に遊ぶのは近所の俺含む男ばかりだったからだ。それにこの頃の麻弥は幼稚園でもあまり女の子たちと過ごさず俺たちの戦隊ゴッコの輪にいたと記憶している。俺たちにも特に女子だからという意識はなく、むしろスラっと大きかった麻弥は男子と対等以上の存在だった。ここ最近はスラリとした肢体はそのまま、……なんだその、程よく起伏のある身体にはなってきたようだがな。




おそらく最後のページには園歌なり全員写真なりが載ってるのだろうと思ったが、なんとなくめくってみると、予想外も予想外、先の封筒と同じように、はらりと一枚の紙と写真が落ちたのであった!

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