第1話(1)
じりじりと蒸した校庭からサッカーをする生徒たちの甲高い声が耳を打つ。しかしそんなエネルギッシュな声など今の俺にとってはアブラゼミのユニゾンとたいした差異はなく、集中を妨げるという域を快速急行で通り越し、昼休みの放送並みに空気と同化した存在でしかなかった。
教科書を読み上げる教師の声にも、もはや覇気たるものを感じない。かくいう俺も頬杖片手に暑さでうだっているのだが。もう産業革命だかフランス革命だかなんだか知らんが、とりあえずこのコンディションでは頭に入るはずがない。それよりこの教室に冷房装置を取りつけるべく革命を起こそうではないか。まあ田舎の公立高校だ、千歩譲ってクーラーとは言わん。だが扇風機くらいはあってくれてもいいじゃないか。周りの小中学にはあるぞ。納得行かん。なんて、思ってはみても行動に移すのはめんどくさい。
サウナ状態の教室でも唯一のオアシスであるはずの窓際に座る俺ですらこのテンションだ。廊下側の連中には俺が視線で暑中見舞いを送っといてやるぜ。
窓際の一番後ろの俺の目の前には、丸まった背中がある。この暑さにも拘わらず幸せそうに爆睡しているこの男子生徒は、中学からの悪友、恭介。ちらと寝顔を伺うと、ふむ、実に殴り飛ばしたくなるような顔してやがる。そのまま永眠させてやりたい。
だが本日の授業もこれが最後。あともう少しの辛抱だ。俺はふと右隣に目を移す。すると俺の予想通り、そこには背筋をすっと伸ばして、暑さにドメイン指定拒否を設定したかのように涼しげな顔でノートをとる少女がいた。
鶴崎麻弥。生まれたときから一緒にいるってくらいの、幼馴染。まあ俺たちの関係はそんな甘美な響きのモンではないがね。せいぜい腐れ縁ってとこさ。
クリアファイルをうちわにしつつ教師も半ばやっつけで叩き付けるように殴り書きしている。俺はもうだめだ、指に力が入らない。今度隣のこいつから借りよう。そう思うと急に荷が軽くなり、残りの時間を寝て過ごそうと腕を組んで顔を埋めたが、扇ぐのをやめた瞬間に待ってましたとばかりに汗が噴き出したために、断念せざるをえなかった。
――これで7月上旬だというから気が滅入る。




