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無題

作者: 狩夜

自分でもなに書きたいのか分かんなくなっちゃいました……

 信じられなかった。


 彼女が死んだという事が。


 しかし、確かにテレビには彼女の顔が映っていて。


 確かに″女子高生刃物で刺されて死亡″のテロップが流れていた。


 男勝りで、困っている人を放っておけない優しさと強さを持っている彼女が、刃物を持っている相手でも臆さないで飛び込んでいくのは分かる。

 しかし、彼女がそんな簡単に死ぬだろうか?

 なにせ、幼い頃から武術や格闘技を叩き込まれているのだ。並みのチンピラ相手にそう易々とやられるはずがない。


 ピンポーン。

 ガチャ。


 ほらな。

 今、俺の前に彼女は立っている。

 「よう、やっぱり死んでなかったな」

 「あのねえ、あたしを誰だと思ってるの?」

 彼女はニヒルに笑う。

 「あたしがそう簡単に死ぬと思う?」

 「いや」

 「まったく……」


 彼女はため息をついて――


 ――――――トンッ。


 無造作に俺の胸にナイフを突き立てる。

 そして彼女は嗤う。

 「アンタを殺すまであたしが死ぬ訳ないでしょ? ね、″お義兄ちゃん″?」

 「あぁ、そうだな……」

 俺も嗤う。

 まあ、つまり、だ。

 死んだ女子高生ってのは、俺が送った刺客のことで、彼女は俺を殺しに来たんだ。


 なぜなら、俺は――


 「お姉ちゃんの敵とってやるんだから!」

 彼女の姉、つまり、俺の元妻を殺した殺人犯だということだ。

 「ははっ……」










 やっと俺は赦される。










 なんなのよ!

 あたしはアイツの部屋の中に立ち尽くしていた。

 手には紅く彩られたナイフ。その先からはポタリ、ポタリ。アイツの血が滴っている。

 「何なのよ!」

 ここはアイツの部屋だ。

 お姉ちゃんを殺したアイツの部屋だ。

 三年前のクリスマス。私のお姉ちゃんとアイツの当時住んでいた家が火事になった。

 アイツは幸運にもほぼ無傷で生き残り、お姉ちゃんは燃え盛る炎の中で、二十二歳の生涯を終えた。




 ガタガタッ。

 滑りの悪い引き出しを苦労しながら開ける。

 中には、

 中には――



 「え!? これって……」

 お姉ちゃんと私、そしてアイツが仲良く写っている写真(お姉ちゃんが死ぬまではアイツとも仲が良かったのだ)と、遺書が入っていた。


 『瑞季へ』


 と、お姉ちゃんの字で書かれた遺書が入っていた。

 「お姉ちゃんの字!? 何で?」

 慌てて中身を引っぱり出す。

 そこには――

 『瑞季へ

 ごめんなさい

 お姉ちゃんは先に逝きます

 今日、この手紙を書き終えた後、



 私はこの家に火をつけるつもりです



 彼を愛しているから私は逝きます

 あなたは決して彼を恨んではいけません 私の病気のせいで彼に、あなたに迷惑をかけたくないのです

 だから、』

 その先は読む事ができなかった。

 「嘘……」

 私はとんでもない間違いを起こしてしまったのかもしれない。

 お姉ちゃんが不治の病気になってしまったのは知っていたけど、ここまで悩んでいたなんて知らなかった。

 でも……

 「迷惑なんかじゃないのに……」

 知らず知らずの内に言葉と涙がこぼれ落ちていた。

 私はものすごい間違いを犯していたのかもしれない。

 だけど――

 彼は何で私にこの手紙を渡さなかったのだろう? お姉ちゃんのお葬式の時、彼は私に向かって半笑いでこう言ったのだ。

 『お前の姉は俺が殺したんだ。厄介者がいなくなってせいせいしたぜ』

 普段温厚だった彼があんなことを言うはずがないのに……

 そして、私は気づいた。

 彼は死にたかったんじゃないかって。

 私を怒らせれば私が復讐に来るって彼は分かっていてあんなことを言ったのだ。

 お姉ちゃんの所に行くために。

 何て勝手な人だ。彼のおかげで、私は犯罪者になってしまったではないか。

 自分で死ぬ勇気もないくせに、死にたいなんて言わないでよ。

 血溜まりの中でうつ伏せになっている彼に言ってやりたくなった。

 でも、仕方がない。

 さあ、警察に行こう。



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