世界
壊れてしまった二人の物語です。
こんな世界、何のためにあるの?
僕がもし神様だったら
もっと美しい場所にしていたのに
広い広いこの空間での
小さなゲームの駒にされた僕達。
誰もがみんな魔法にかかって
生きよう、生きようと
馬鹿みたいに必死にもがいているんだ
その姿はとても無様で――
ねぇ、君も
こんな世界・・・なくていいとは思わないかい?
-狂-
忘れてしまいたい事ほどいつまでも鮮明に残るというのは誰が考えたんだろう。
本当にその通りだと思う。
もう何年も前に起きた事件だというのに、一向に忘れる気配が無いのだから。
僕は黒音.絶夜・・・この名前は妹と一緒に作ったものだけれど、今はとても気に入っている。
その妹の名前を黒音.美夜という。
唯一心を開きあった、僕たちにとって必要不可欠な存在。
両親は昔死んで、それからは心を失った人形のように過ごしていた。・・・いや、心を殺そうと必死だった。
そうすれば悲しくも無いし、涙も流れないと思ったから。
幼い自分は本当に馬鹿で、無能で、自ら作った孤独に耐え切れなくなっていった。
そんな時声をかけてくれたのが、美夜。
最初は血の繋がった兄弟とは思えないほど余所余所しくて、会話も弾まなかった。
それでも諦めずに、何度も何度も話しかけて来てくれた妹のお陰で今の関係があるのだと思う。
心から、感謝しているよ。
それから、他の子と話そうと頑張った。
まだまだ遊びたい年頃だったのだから、仕方が無いだろう。
だけど、でも・・・やっぱり無理だったんだ。
でも別に寂しくなんてない。だって美夜が居てくれるから・・・。
「なぁ、美夜」
隣に座っている美夜に話しかける。
「どうしたの?」
「・・・・・僕をおいていかないよな?」
驚いたような顔をしているけれど、意味が通じたかは分からない。
なんて言っても、本当ならまだ小学生の子だもの。
そして、期待通りの答え。
「当たり前でしょ・・・、」
この言葉だけで信じられてしまう、そんな自分は本当に馬鹿だと思うよ?
それでも、ここは笑って居ないと兄としての立場がないじゃないか。
大丈夫、僕たちの目的は同じなんだから・・・。
この世界の終わりを見届けるんだから・・・。
「きっともうすぐ、世界中で異常現象が起こって」
「そしたらすぐに植物は枯れて、動物は死に絶えるだろうね」
「ねぇ、人間はどうやって死んでいくのだろう」
「美夜も見たいでしょう・・・?」
還ってきたのは内容に相応しくない、無邪気な答え。
「・・・うんっ」
「だけど・・・本当に、そんな事が起こるのかなぁ」
「・・・そうに決まってるじゃないか」
首をかしげて尋ねる姿は歳相応で可愛らしいのに。
「でも、今もこの世界は自然いっぱいで、幸せがたくさんあるの」
「・・・・・・早く、早く全部壊れちゃえばいいのに」
考えだけは大人も顔負けだね。
さすが、僕の妹だとは思うけれど。
「安心して」
僕は美夜を安心させようと嘘をつく。
「二人でお呪いしたお陰で、内から壊れ始めているから」
確信の無いことを絶対のように言うのも嘘でしょう?
それとも、偽善・・・かな。
「それとね、もう一つ」
そんな顔は反側。
「この世界は――嘘と偽善で満ち溢れてるの!」