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5 答え合わせの夜

 維月について行くと、そこは公園だった。


 ベンチに維月が座る。


 朔はどうしていいのか分からず、維月の前に立つ。そんな朔を見た維月が口を開く。


「座らないのか?」

「……隣、座るぞ」


 維月の隣、1人分のスペースを開けて朔が座る。


「………」

「………」


 その場に沈黙が流れる。公園の暗さも相まってとても気まずい雰囲気だった。しかし、朔も維月もそんな事は気にするタイプではない。


(口を開こうとしないな。私に話があるんじゃなかったのか?)


 ちらりと維月を見る。

 すると維月も朔を見ていた。じっと朔を見つめていた維月が静かに口を開く。


「それで、話だが……」


(とうとう、か。流石に数日間で私の事が分かるわけが……)


「単刀直入に言う。お前は不眠症なんじゃないか?」

「っ!」


(……あった。なぜ?どうしてわかった?普通なら夜遊びして寝不足なんだと思うだろう。今までのやつはそうだった……)


驚く朔に維月は話を続ける。


「否定も肯定もしなくて良い。これは俺の勝手な憶測だ」

「……」

「お前が毎日のようにしている夜のバイト。単純に金稼ぎもあるんだろうが、暇つぶしだろう?それに、お前は学校でしか眠っていない。学校でうつ伏せている時も寝ていない時があるだろう?」


 そんなにも分かりやすいのかと朔は悔しくなる。しかし、維月の言う通りだ。


「……その通りだ」

「お前が不眠症だとすれば納得できる」


 淡々と他人事のように言われて朔は少し頭に血が昇る。

それでも、頭の片隅にある理性を尊重して冷静にこたえる。声が震えるのは気の所為だと思いたい。


「そんな事を知ってどうするつもりだ?……私を脅すのか?」


 そうだと、言って欲しい。朔の理解が出来ない事を言われるよりその方がよっぽど冷静になれる。

 しかし、そんな願いも虚しく維月は朔の目を真っ直ぐ見ながら理解不能な事を言い出す。


「いや、違う。言っていなかったか?俺はお前の全てが知りたいんだ。知りたくてたまらない」

「…何なんだ、それは」


 意味がわからない。


 何故、ただの同級生の朔に執着するのか。どうしてそんなにも真っ直ぐに朔を見るのか。


維月は家族よりも朔を見て、理解しようとしているだろう。だからこそ、朔は意味が分からなくて怖い。


(知りたい、だと?知ったところで何になる?私に面白い事など何もないのに)


 朔は思わず伏し目がちになり、(うつむ)いてしまう。そんな朔の頬を維月は両手で掴み、強引に上を向かせてくる。


顔の直ぐ側に維月の美しい顔がある。


 お互いのまつ毛が絡まりそうなほどの近さで維月は言う。


「もう一度言う。俺はお前の全てが知りたい。その結果、お前に何も無くてもだ」


(何で、そんな事言えるんだよ…)


 朔の心境を見透かしたような言葉に胸が熱くなる。維月を信用してしまいそうだ。


 しかし、すぐに思い留まる。朔はベンチから立ち上がり、維月を冷たく突き放す。


「お前に私の事を知らせる事は無い。そんな事なら私はもう行く」


 維月はずっと無言だ。そのまま朔は公園を出ようと歩き出すが、足をとめる。ある事を思い出したからだ。


「……まぁ、でも、助けてくれたのはありがとう。礼をいう」

「……っ!」


 言ってからとても恥ずかしくなる。

しかし、助けられて礼を言わないのも朔のプライドが許さない。まったく面倒なプライドである。


 グイッ


 足早に歩き出した朔の腕が掴まれる。

 驚いた朔の耳元で維月が(ささや)く。


「……礼を言うくらいなら、俺と仲良くしてくれよ。な、いいだろ?」

「言い訳が無……!」


 朔が振り向くと、維月の寂しそうな顔があって朔の良心が痛む。


 寂しそうな顔はすぐに変わって、いいことを思いついたとでも言いそうなニヤリとした笑みを浮かべる。


 無愛想で無表情な不良はどこに行ったのやら。


「なら、俺をお前の共犯にしてくれ。」


「………は?」


 本当に意味がわからない。

 なのに目の前の男は楽しそうに笑っている。

 朔は嫌な予感しかしない。

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