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26 特別

 朔の笑顔を見た維月は満足げな顔をする。


「あ、悪い。私そろそろ帰らないといけないんだ」

「あー、そっかぁ。じゃあまたね!」

「俺ら教室で待ってるな!」

「気をつけてね」


 千歳達3人と名残惜しいが別れる。

 しかし、なぜか維月はついてきた。


「維月?あいつらといなくても良いのか?」

「良い。あいつらよりも朔と一緒にいたい」


(そ、そうなのか……)


 朔はどのように返答をすれば良いのか迷う。

 維月ははっきりと想いを伝えてくれるので、わかりやすいのだがこういう時は困る。


「……さっきも何回も後悔したからな」

「後悔?」


 維月がぼそりと言った言葉を朔が拾う。

 何か後悔するようなことでもあったのだろうか。


「ああ。朔はあいつらと友達になっただろう?朔の友達は俺一人で良いのに」


 維月が拗ねたように言う。こんな維月は新鮮だ。

 新たな顔が見れた事を嬉しく思う。


 朔が嬉しさを隠しながら呆れたような口調で維月に言う。流石に伝えるのは気恥ずかしい。


「後悔ってそんな事かよ」


 朔にとってはそんな事でも維月にとっては違うらしい。


「そんな事じゃ無い。朔の笑顔を見れるのも朔に話しかけられるのも俺一人で良いんだ。ずっと独占したい」


(ああ、なるほどな)


 そう言う維月はムスッとしていて不機嫌だ。


 今日の維月はやたらと距離が近いと思ったがそういう事だったのかと朔は納得した。


 そして、維月にふわりと笑って言う。


「あいつらも友達だけど、維月は私の人生初の友達なんだぞ?維月は特別だ」


 心からの想いを伝える。


 いつも維月が真っ直ぐに伝えてくれている分のお返しだ。普段の維月からの言葉には全く足りていないが少しでも維月が喜んでくれると嬉しい。


 すると維月は歩みを止める。なので、朔も維月に合わせて立ち止まる。


 いきなり維月に抱き締められる。


 先程のように後ろからでは無く、正面からだ。やはり維月はあたたかく力強い。

 朔は安心して身を任せる。


 朔は顔を上げる。密着した分顔を上げないと維月と目が合わないのだ。


「本当に特別か?」


 維月が朔に尋ねる。

 朔は微笑みながら腕をのばして維月の頬に片手を添える。


「もちろんだ。私の初めての友達なんだから当然だろう」


 朔にとって当たり前の事を言っただけなのに維月に強く抱き締められる。


「維月、苦しい」


 朔は笑いながら言う。

 苦しいとは言うが、やはり嬉しい。友達として、しっかりと認められていると感じてしまうので仕方がない。


「ふっ、そうだな。力加減をしないとお前の骨を折ってしまいそうだ」


 維月は優しく笑って言う。

 しかし、骨を折る云々の話は維月の強さを知っている朔からしたらまったく冗談になっていない。


(維月なら私の骨くらいいとも容易く折れるよな)


 朔が顔を引き攣らせていると、維月から解放される。

 いつまでも抱き締められたままでは帰れないので当然だ。


 朔は維月と手を繋いでいる事には深く言及しない事にした。


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