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役立たずと追放された俺の農業スキル、実は作物を兵器や霊薬に進化させる最強の力でした。  作者: 黒崎隼人


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第12章:そして、次の種へ

 アルム村に戻った俺たちの生活は、穏やかで、そして満ち足りたものだった。

 俺は村の近くに、以前よりもずっと広い土地を借り受け、新たな農園の開拓を始めた。その土地は、世界樹から流れ出す生命エネルギーの影響で、信じられないほど肥沃な土壌に生まれ変わっていた。


 俺は鍬を振るい、ガルムがその隣で汗を流す。ミーヤは、時々街へ行っては俺たちの作物を売りさばき、農園の経営を見事に切り盛りしてくれた。

 やがて、俺たちの間には、ごく自然な流れで特別な感情が芽生えていた。


 ある夕暮れ時、茜色に染まる畑を二人で眺めながら、俺はミーヤにプロポーズした。

「ミーヤ。これからも、ずっと一緒にいてくれないか。俺と一緒に、この畑を守ってほしい」

 彼女は、涙を浮かべながら、最高の笑顔で頷いてくれた。


 俺とミーヤの結婚式は、村を挙げての盛大なお祭りになった。リネット王女も、お忍びで駆けつけてくれて、俺たちの門出を祝ってくれた。ガルムは、式の間中、まるで自分のことのように号泣していた。


 数年後。俺たちの農園には、二人の可愛い子供たちの笑い声が響いていた。男の子と女の子の双子だ。二人は、俺に似て土いじりが大好きで、小さな手で畑仕事を手伝ってくれる。


「父ちゃん、このお野菜、また大きくなったね!」

「うん。お前たちが、愛情を込めて世話をしてくれたからな」


 そんな幸せな日々の中で、俺は『農業スキル』の本当の意味を理解し始めていた。

 このスキルは、ただ作物を進化させるだけの力じゃない。種を蒔き、育て、収穫し、そしてそれを誰かと分かち合う。その一連の営みを通じて、人と人との繋がりを育み、命を未来へ繋いでいく。それこそが、この力の本当の目的なのかもしれない。

 邪神を倒したあの時、俺が振り下ろしたのは聖なる鍬だった。剣でも魔法でもなく、鍬。それは、破壊ではなく、創造と育成のための道具だ。あの女神様は、きっとそれを俺に教えたかったのだろう。


 俺の農園の噂は、いつしか世界中に広まっていた。

 俺の作る『進化作物』は、人々の食卓を豊かにするだけでなく、病を癒し、時には新たな魔法の触媒として、様々な分野で役立っている。

 農園には、俺の技術を学びたいという若者たちが、世界中から集まるようになっていた。騎士を辞めた者、魔法使いの道を捨てた者、元貴族。様々な経歴を持つ彼らが、ここでは皆、同じ『農民』として、汗を流している。

 いつしか俺たちの農園は、『進化の里』と呼ばれる、一大コミュニティへと発展していた。


「農業こそ、最強のスキルだ。だろ?」


 俺は、里の仲間たちにそう言って、よく笑っている。かつてギルドで「無能」と笑われた日のことが、もう遠い昔のようだ。


 ある晴れた日の午後。俺は、いつものように畑に出て、土を耕していた。隣では、妻となったミーヤが優しく微笑んでいる。子供たちの元気な声が、遠くから聞こえてくる。

 平和そのものの光景。これこそが、俺が求めていたすべてだ。


 その時、俺が耕した土の中から、何かがキラリと光った。

 拾い上げてみると、それは見たこともない、不思議な模様が刻まれた種だった。俺が『神々の時代の種』を使って以来、俺のスキルはさらに進化を遂げ、時折、こうして未知の種を生み出すことがあるのだ。


「耕作、また新しい種?」

「ああ。今度は、どんな作物が育つんだろうな」


 俺は、その種を手のひらの上で優しく包み込んだ。

 種は、俺の生命力に応えるように、温かい光を放ち始めた。それは、小さく、しかし力強い、新たな進化の始まりを告げる光だった。

 世界は平和になった。だが、俺の農業は、まだ終わらない。これからも、次の種を蒔き、新たな収穫を目指して、俺はこの土と共に生きていく。


 俺は空を見上げた。世界樹の葉が、風にそよいでいる。

 今日も、世界は豊かだ。

 そして、俺は今日も、ただの農民として、最高の笑顔で土を耕すのだ。

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