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役立たずと追放された俺の農業スキル、実は作物を兵器や霊薬に進化させる最強の力でした。  作者: 黒崎隼人


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第1章:転生、そして「無能」の烙印

【登場人物紹介】

藤田ふじた 耕作こうさく

主人公。22歳の平凡な大学生だったが、交通事故で異世界に転生。授かったスキルが【農業スキル】のみだったため、不遇のスタートを切る。真面目で心優しい性格だが、芯は強く、逆境にもめげない。作物を育てることに無上の喜びを感じる。


◆ミーヤ

ヒロイン。元Aランクの冒身者だったが、魔物との戦闘で足を負傷し引退。辺境の村で暮らしていた。洞察力に優れ、耕作のスキルの本質をいち早く見抜く。耕作の協力者となり、その商才と交渉術で彼を支える。勝ち気だが、根は優しい少女。


◆ガルム

王国騎士団に所属していた元騎士。実直で堅物だが、忠義に厚い。ある事件がきっかけで耕作と出会い、その人柄と能力に心酔。騎士を辞め、耕作の護衛兼農作業員として働くことになる。鍬を握る姿は様になっている。


◆リネット

耕作たちが暮らす王国の王女。お転婆で好奇心旺盛。政略結婚を嫌い、城を抜け出して耕作の農園にやってくる。耕作の作る作物の虜になり、彼の最大の支援者の一人となる。


◆悪徳領主バルザック

耕作が暮らす村を治める領主。強欲で自己中心的。耕作の能力に目をつけ、私物化しようと企むが、手痛いしっぺ返しを食らう。


◆邪神

古代に封印された災厄の存在。その復活の予兆が、世界に異常気象や作物の不作をもたらす。世界の根源的なエネルギーを喰らい、すべてを無に帰そうとする。

「――死んだな、これ」


 それが、俺――藤田耕作ふじたこうさく、二十二歳、しがない大学生の人生最後の感想だった。

 信号無視のトラックが視界いっぱいに広がったのが、俺の最後の記憶。激しい衝撃と浮遊感の後、次に目を開けた時、俺は真っ白な空間にぽつんと浮かんでいた。目の前には、後光が差しているとしか思えない、やたらと美しい女性が微笑んでいる。


「ようこそ、藤田耕作さん。私はこの世界を管理する女神とだけ名乗っておきましょう」


 テンプレだ。ラノベで何度も読んだ、あまりにもお約束な展開。俺はどうやら、異世界転生とやらを果たしてしまったらしい。女神様曰く、俺は神々の気まぐれな賭けの対象に選ばれ、新たな人生を送るチャンスを与えられたのだとか。


「あなたには、お詫びと餞別として、一つだけ特別なスキルを授けます。どんな能力を望みますか?」


 きた! チートスキル! 剣と魔法の世界で無双できるような、例えば「無限魔力」とか「全属性魔法適性MAX」とか、そういうやつだろ!

 しかし、その時の俺はどうかしていた。いや、前世の平凡な日常が恋しかったのかもしれない。実家のベランダで、ミニトマトやハーブを育てるのがささやかな趣味だったことを、ふと思い出してしまったのだ。


「あの……農業に関するスキル、とかってありますか? 土をいじって、何かを育てるのが好きだったので」


 俺の言葉に、女神様は一瞬きょとんとした顔をし、それから慈愛に満ちた笑みを深めた。

「わかりました。あなたに『農業スキル』を授けましょう。きっと、あなたの助けになるはずです」


 そうして俺は、光に包まれて異世界『ヴェルディア』の大地へと降り立った。


 緑豊かな草原、遠くに見える城壁都市。ファンタジーそのものの光景に胸を躍らせ、俺は早速、最寄りの街『リンドブルム』の冒険者ギルドへと向かった。まずは自分の能力を確かめ、生活の糧を得なければならない。

 ギルドの中は、屈強な戦士や妖艶な魔法使いといった、いかにもな冒険者たちでごった返していた。俺は受付のお姉さんに促されるまま、水晶玉に手をかざす。これがスキル鑑定というやつらしい。


「えーっと、藤田耕作様、ですね。スキルは……」


 受付嬢が困惑したような声を上げる。なんだなんだ、と周囲の冒険者たちの視線が突き刺さる。


「【農業スキル Lv.1】……以上、ですね」


 その瞬間、ギルド内に一瞬の静寂が走り、次の瞬間、腹を抱えての大爆笑が巻き起こった。


「ブハハハ! 農業スキルだと!?」

「農民にでもなる気かよ、兄ちゃん!」

「魔物相手にクワでも振るうのか? 面白え!」


 罵声と嘲笑の嵐。受付嬢の同情するような視線が、余計に心を抉った。この世界において、農業は戦闘能力のない、最底辺の職業。冒険者としては、まったく役に立たないハズレスキル。それが、俺が手に入れた唯一の力だった。

「無限魔力」でも「聖剣召喚」でもなく、「農業スキル」。あまりの落差に、俺は呆然と立ち尽くすことしかできなかった。


 ギルドを追い出されるようにして外に出た俺は、すっかり自信を失っていた。冒険者として一攫千金を夢見るなんて、とんだ勘違いだった。俺にできることなんて、畑を耕すことくらいしかない。

 なけなしの所持金をはたいて最低限の農具を買い、俺は街から離れた辺境の村へと向かった。幸い、村長はよそ者の俺に優しく、痩せこけた小さな土地を格安で貸してくれた。誰も作りたがらない、石ころだらけの荒れ地だ。


「まあ、ないよりはマシか……」


 自嘲気味に呟き、俺はクワを握りしめた。こうして、俺の異世界生活は、英雄譚とは程遠い、泥と汗にまみれた農民暮らしから始まることになったのだ。

 この時の俺はまだ知らない。この「無能」と笑われた農業スキルこそが、この世界の常識を根底から覆す、とんでもない可能性を秘めているということを。今はただ、目の前の石ころを取り除き、固い土を耕すことだけが、俺にできるすべてだった。

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