表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
頑張りましたね、姫咲先輩  作者: 勝花
第2話:宮城拓也は役員を増やしたい
15/43

14

 生徒相談室には三人が揃っていた。六人掛けのテーブルを挟んで座っている。宮城は藤乃森と並び、対面の席に着く生徒を観察した。


 志望者は、一年一組の雛形(ひながた)芹亜(せりあ)。清潔な身なりの女子だった。校則の緩い望陵高校では身だしなみを崩した女子もいるが、彼女はきっちりしている。事前に集めた情報によると、一学期の成績は優良。素行も問題なし――期待できる。


「緊張しないでください。おれも一年です。面接ですので一応、敬語で話しています。普段通りでけっこうですよ」


「い、いえ。本当に一年、ですか……?」


「? 六組です」


 質問の意図が、宮城には読めなかった。


「宮城くんって大人っぽいからね~。わたしは見学してるだけだから気にしないでね~」


 ほんわかした藤乃森の雰囲気のおかげで、雛形は幾分かほっとした様子だった。次いで、落ち着きなさそうに目を動かした。


「えっと、姫咲会長は?」


「今日は用事があるので、面接はおれがします」


「そう……」


 雛形が少しがっかりしたように肩を落とした。


 騙す形になるが、姫咲が知れば妨害してくる。出席させるわけにはいかなかった。


 他の生徒の例に漏れず、雛形も姫咲に憧れているようだ。これはマズい。姫咲の本性を知った時、激しい怒りに転じる恐れがある。


 やはり難しい。


 宮城の求める条件に一致する生徒を見つけるのは困難だ。せめて口のかたさだけでも見極めたい。

 話を進めようとすると、雛形が先に口を開いた。


「あの、有音(あると)く――川本先輩が御礼を言ってました」


「合唱部の?」


「家が近所で。たまに会うんです。姫咲会長のこと、すっごく褒めてました。ちょっと引いちゃうぐらい」


 以前、美術部の騒音問題で生徒会を頼ってきた、合唱部の部長だ。意外な接点だった。


「姫咲先輩には、あとで伝えておきます」


 雛形が嬉しそうにうなずく。話をしているうちに緊張がほぐれたのか、リラックスした様子になっている。良い空気で面接をはじめられそうだ。


「では、まず生徒会を志望する理由を――」


 ――ガチャ。


 生徒相談室のドアが、前触れなく開いた。


 瞬間――時が止まった。


 濡烏と形容すべき、大和撫子を体現した艶やかな黒髪がなびく。

 ドアを開けた人物が部屋に足を踏み入れると、さわやかな春風が吹く錯覚が起こった。


「遅くなりました。まだ、終わってないかな?」


「か、会長!?」


 鮮烈な存在感を振りまいて、姫咲がしとやかに微笑んだ。


 ――バカな。なぜ来た。


 驚愕のあまり、宮城はあっけにとられた。


 面接の件は話していない。いつも通り、仕事を手伝う様子はなかった。ちょっとしたいさかいはあったが、今も生徒会室でくつろいでいるはずだった。


「宮城くん、お疲れ様。あとはわたしに任せて」


 姫咲の微笑が横から見下ろしていた。


 やむを得ず、宮城は自分の座っている真ん中の椅子を譲った。端の席に移動する。


 姫咲が席に着く。手に抱えていた物をテーブルに置いた。なぜか、大量の書類を持ってきていた。


 最悪の事態に動揺しながらも、宮城は平静を装った。


「忙しいので来られないのかと思いましたよ」


「わたしだけ休むなんてできないよ。愛ちゃんも誘ったんだね」


「怜凪ちゃん。久しぶり~」


 藤乃森がマイペースに笑った。動揺した様子がまるでなかった。


 まさか、姫咲に知らせた?


 いや、そんな人ではない。生徒会の人員不足は以前から心配していた。トラブルがあれば事前に連絡があっただろう。


 宮城はできるかぎり声を潜めた。


「……どういう風の吹き回しですか」


 すぐに声量をおさえた返事があった。


「拓也、やけにあっさりしてたじゃん。相談事なのに生徒会室を使わなかったし。なんか変だなって思って」


 鋭い。そうだ、こいつはメンタルがぽんこつのくせにやたらと能力が高い。ぐーたらな姿を見過ぎたせいで油断した。面接の場所を当てたのはおそらく消去法だろう。生徒会室が使えないなら、生徒相談室が次の候補になる。


 宮城の計画は見抜かれていた。


「ごめんね。ちょっとだけ待ってもらってもいいかな」


 姫咲が雛形に声をかける。憧れの先輩が突然現れた衝撃のせいか、まともに声が出ない様子で、こくこくとうなずいた。


 とにかく、妨害されないように注意するしかない。姫咲は表の顔で振る舞わなければならない以上、この場で雛形を拒絶することはできないはずだ。


 宮城が身構えていると、姫咲が体の向きを変えた。


 さあ、どう出る――?。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ