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どん底貧乏伯爵令嬢の再起劇。愛と友情が、なんだか向こうからやってきた。  作者: buchi


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第96話 イケメン、イケメン、イケボ

イライザ嬢は、乗りに乗っていた。


なぜなら、素晴らしいアイデアがあったからである。


シエナ嬢からすべての嫉妬を取り去る方法。


それから、最近発見したニューフェイスがいた。ぜひとも、掲載しなくてはならない。


マンスリー・レポート・メンズ・クラシックは絵姿入りになって値段が上がったにもかかわらず(むしろ、そのせいで)、倍々ゲームで売れ行きを伸ばし、特に町娘たちに人気になっていた。


そして不動の一位のリオは殿堂入りを果たし、今月からは、リオ以外が一位に掲載されることが決まっていた。穏当に二位が一位に繰り上がっただけだったが、これでは売り上げは伸びない。


「特別枠。これですわ」


タイトルは幻の麗人。


もちろん、シエナの騎士姿だ。リオと一緒に描かれている。


添え書きは、『リオの友人?』


「この?がいいんですのよ。ウフフ」


と、一人つぶやいたのは極秘である。


もちろん、キャロライン嬢への説明も怠らない。


大抵のことは、公爵令嬢で影響力ナンバーワンのキャロライン嬢が納得してくれれば、どうにかなる。


「マドレーヌ嬢から、皇女であることを理由に、婚約とデートを迫られたリオは友達と剣を選びに行く約束があったので、断ったのですわ」


「それがこの友達」


キャロライン嬢がしげしげと眺めた。

改めて見ると、確かにものすごいイケメンに見える。女子なのに。


「そして、来月号では、そのテオドールがシエナだったことをバラし、なぜそんなことになったのかを載せていきますの。連載ですのよ?」


「なるほど。絶対読みたくなるわね!」


キャロライン嬢、アリス嬢、アーネストとテオドールは納得した。


「僕としては、来月が待ち遠しいよ」


テオドール・クレイブンが言った。

テオドールは、山ほどファンレター?をもらっていた。

主に町娘達からなので、彼の母は、見向きもしなかったが、テオドールがいくら自分あての手紙ではないと説明しても、ちっとも聞いてくれず、わが子の時代が来たと信じているらしい。


「そんなことあるわけないだろ!」


彼は髪をかきむしった。


「それから来月号にはニューフェイスとして、この方を載せますの。期待の大型新人ですわ!」


その場にいた全員が好奇心で大注目した。イライザ嬢がそこまで言うなんて、どんな男なのだろう?


「こちらがその方の絵姿ですわ」


これまで載せられたメンズより、かなり年上だったが、なんとなく陰のあるイケメンだ。

髪の色はダークブロンドだろうか。戸外での生活が長いのか浅黒く、細身だがたくましい体つきで、表情も引き締まった渋い感じだった。

そして、マジでイケメンだった……。


「あら。素敵な方ね」


アリス嬢が反応した。キャロライン嬢も言った。


「本当。これまでのマンスリー・レポート・メンズ・クラシックに出なかったタイプね。渋いわ」


「この人、知らないな。だけど貴族だよね?」


シエナだけが死んだ目をしていた。


これは兄のパトリックだった。


「新リーズ伯爵よ」


「リーズ伯爵?」


残りの四人が一斉にシエナの顔を見た。


別に否定することではない。


「兄のパトリックよ。父を隠居に追い込んで、爵位を継いでくれたの。もう、勝手に婚約が決まることはないわ」


「わああ! よかったじゃない!」


四人は喜んでくれた。


「そうなんです。それに、マドレーヌ嬢は……」


イライザ嬢が言った。


「どうやら本物の皇女だったらしいのですが」


全員、まさかという顔になったが、あとをアーネストが引き取った。


「父上から聞いた話だけど……たとえ、皇女だったとしても帝国は何の援助もしないらしい。皇帝に子どもは山ほどいて、皇子や皇女だからって、あまり値打ちはないらしいんだ」


全然違う文化と風習に、シエナ達は目を丸くした。


「それに、帝国は皇女の身分の者が外を出歩くことさえ嫌うらしくて、皇女が男に結婚を申し込むなんてとんでもないことらしいね」


「では、リオは望まぬ婚約はしなくて済むのですね」


シエナがほっとしたように言った。


「よかったじゃない、これで問題は全部解決したじゃない」




問題は、全然解決していない……というのがリオの見解だった。


問題解決のために奔走した。


シエナの兄を引っ張り出すことに成功し、リーズ伯爵は隠居に追い込まれた。

レイノルズ侯爵は少額の借金取りどもに追い回されて、遂に借財管理収容所に収監されるところだったが、それを嫌って、失踪した。

しかし、これは罪を認めたことになるので、彼の財産は差し押さえられ、ちょっとずつ売りに出されている。

本来、侯爵などは失踪なんかしないはずなのだが、息子ボリスの件があった。

こちらは前代未聞の聞きたくもない悲惨な話で……ただの醜聞で済ます訳にはいかなかった。もしかしたら、貴族全体への反感を警戒した誰かの手が回ったのかも知れない。


パトリックは、ラッフルズのよこした有能弁護士と一緒に、リーズ伯爵家が脅し取られたお金を取り戻そうと働いている。


そして、そのほかにパトリックは社交界に乗り出した。

リリアスのためだ。

辺境の警備隊に所属していた無骨な男だが、この度、父に代わり伯爵を継いで、新伯爵として、デビューしたのだ。


リーズ伯爵と言えば、超貧乏で有名だった。

だが、彼にはラッフルズの支援があった。それに辺境とはいえ、警備隊の隊長だったから、服くらいなら買える。


アドバイザーを買って出たのは、イライザ嬢。


「パトリック様、第一印象は大事ですわ」


「そ、そうかな? でも、別にこんな会、出席する必要あるのかな?」


「何をおっしゃいます! リリアス様のためでしょう! さ、こちらのハリソン商会をご紹介いたしますわ。とってもお安いのに、すてきな服をあつらえてくださるの。お召し物はこちらで全部発注なさってくださいませね?」

 

それから、ハリソン商会に目配せした。


「支払いは全部、ラッフルズ」


針子軍団は意味深にうなずいた。


「辺境の武人らしく、ストイックなイメージで」


ハリソン商会の針子たちは、ゴクリと喉を鳴らしてから、パトリックを見つめた。


「久々の逸品」


「感謝です」


パトリックは、イライザ嬢のおかげで(良い意味で)注目の的になった。

経歴としては無骨であるべきだが、彼の容貌は妹たちに似てあくまで繊細で整っている。

話せば普通の人間で、自分は軍一筋で軍事ならわかるが、あとは知らないなどとなかなか謙虚。


無骨。謙虚。渋い。細マッチョ。控えめ。でも、伯爵。イケメン。イケメン。イケボ。


行き遅れのご令嬢方を中心に、あっちゅう間に、話題をさらったのも無理はない。


「パトリック殿は確かに頑張っておられる」


リオとしても異存はなかった。

妻の実家が、裕福で評判が良いに越したことはない。妻の兄がどんなにイケメンでも関係ない。


パトリックが、シエナと似たような性格で仲が良いのも悪いことではない。


はずはないとわかっていても、どうしてだかイラッとするのはなぜだろう。



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