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どん底貧乏伯爵令嬢の再起劇。愛と友情が、なんだか向こうからやってきた。  作者: buchi


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第82話 マドレーヌ皇女、リオをデートに誘う

帝国は海を隔てた遠い国だ。

香料や、薫り高い不思議な木の実などで有名。


「皇女様がこの国にいたのなら、噂にならないのは、おかしいわ」


シエナは懐疑的に言う。


「そうなのよ。でも、皇女様でないと言い切る証拠もない。困るわ。一方で手紙は次々に来るの」


イライザはもう一通、手紙を出してきた。


「これが、今日着いたリオ様宛の手紙」


シエナは眉をひそめたまま、急いで手紙を広げた。


『リオ様、大好き。結婚して。しないと、皇国に逆らったことになるわよ。皇女様との結婚なんて、夢のようでしょ? 結婚したらリオ様とずっと一緒にいられるわ。結婚の許可を、今、皇帝陛下にお願いしているのよ。だって、他国の一侯爵家のあととりとの結婚なんて、オッケーか、わかんないから。でも、マドレーヌ、がんばるつもり! ファイト! 私!』


シエナは黙り込んだ。ポジティブ? でも、ずっとリオ様と一緒にいるつもりなの? 誰だか知らないけど、この娘。


「で、今日来た二通目がこちら」


まだあるのか!


『私、顔がいい男が大好きなの! イケメン最高! 言っとくけど、浮気は許さないわ。リオ様からも、結婚のお願いのお手紙を国王陛下に出して。でないと、不敬罪、てきようしちゃうぞぉ』


うーむ。本音しか書かれていない。さらには、誤字脱字がひどい。手紙の体をなしていない。


あと、なんだろう。このフツフツと湧き出るような不快感は。私のリオに向かって、何なの?


自分のことを、自分の名前呼びもおかしい。いや、おかしくないのか。貴族令嬢のくせに、なんなの? リオのことなんか全然知らないくせに。それにしても、腹の立つ……


「で、これが三通目」


「え?」


『エスコートの件だけど、打ち合わせのためにデートしたい。明日、休みだから、中央広場の噴水とこで待ち合わせ。十二時! まってるね』


ふるふるふる……とシエナの手が震えた。


「何を勝手なことを!」


コホンとイライザ嬢が咳払いをした。


「で、ほんと困るのが、明日とか言われても、調査が間に合わなくて。本当に皇女なのか、偽物なのか」


「偽物でしょう!」


こんな品のない皇女がいてたまるものか。

シエナは思った。


「でも、皇国はセドナやゴートのような国ではないの。今の皇帝陛下には正妃のほかに知られているだけでも、七十人の側妃がいるの」


「そ、そんなに」


シエナが顔を上げた。

一夫多妻制の国だとは聞いていた。にしても多すぎないか?


「皇子や皇女の数も多くてね。ご落胤とか言っているけど、こんなに人数が多いと、調べるのに時間がかかるわ。それに本当に皇女だったとしても、どれほど皇帝陛下が気にかけておられるかで変わると思うの。問い合わせるのが一番なんだけど、一平民ではね。それに一体どこに聞いたらいいのやら」


「マドレーヌ様に、皇帝陛下にお手紙出したいから、皇帝陛下の住所はどこ?って聞いたらいいんじゃない?」


「それでも、間に合わないでしょう、このデート」


「本人も、いつ、どうやって確認したのかしら? 皇女様だって」


「そこを調べているのよ。アマンダが」


「アマンダ嬢が?」


イライザ嬢がうなずいた。


「ブライトン家にもお願いはしたのよ。ハーマン侯爵は元・騎士団長でブライトン公爵は元部下ですから。でも、そこは商人のつながりが一番なのでラッフルズ商会に依頼したのよ」


「ラッフルズ商会が……」


「アマンダ嬢に連絡はしたけど、本当はあなたのお姉さまが動いていると思うわ」


「ありがとう……」


「でも、とにかくデートは明日なのよ! 嘘かほんとかわからないので、少なくとも偵察にはいかないとならないの!」


「リオは出さないわ」


シエナが陰にこもった声を出したので、イライザはびっくり仰天した。


シエナが、手紙をじいぃぃぃっと見つめている。


いつもなら、なんだかほんわかしていて、自分が褒められても謙遜気味で、パッとした返事が返ってこない。

キリッとなるのはお仕事の時だけ。

それが今、手紙を持つ手がふるふると震えている。眉間には深いしわ。


「あの、シエナ、お願いしたいことがあるのよ?」


正気に戻って、シエナ。


「はっ。私ったら。何かしら。できることがあれば何でもするわ!」


あのシエナがギリッとした目を向けてきた。


おおう? やる気だわ……恋人を盗られるのが、許せないのね?


「ええと、まず、イケメン狙いというのなら……」


「リオの顔にペンキで模様を書けばいいのね? ペンキはどこにあったかしら?」


「いや、それだと、リオ様がどうか判別がつかないので、リオ様が来なかったことになっちゃうから。それは都合が悪いのよ。別な方法を考えたの。手紙に、イケメン好きって書いてあるでしょ?」


シエナがうなずいた。


「だから、もっとすごいイケメンを連れて来ればいいのよ」


シエナの眉間のシワが深くなった。


「リオよりイケメン?」


シエナには、リオより美しい男の心当たりはなかった。


「そんな人、いるのかしら? アラン殿下も、もういないし。マンスリー・レポート・メンズ・クラシックの第三位って誰だったかしら?」


シエナったら。イライザ嬢はクスッと笑った。やっぱり、リオ様が一番イケメンだって思っているのね。そして、盗られると思って真剣なのね。


「いいえ。もっとすごいイケメンを連れて行かないと。リオ様が霞むくらいの」


「全然、心あたりがないわ」


「いるのよ。あなたよ」




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