3.
「さて」
レビはまるでこれから大事な話をするからちゃんと聞きなさい、という風にスウの目を見ていた。
スウはこくりと頷いた。
「スウ。明日、この森に迷子が来るわ。二人」
「迷子?」
スウは首を傾げる。
この冬の森に、しかも雪降る中迷子にわざわざなりに来る人がいるのだろうか。
「だから、その二人を最大限にもてなしてあげなさい。というよりは相当凍えているのだから治療も
してあげるのよ。そしてさらに明後日人が来るわ」
「そ、そんなに? わたしニーラ以外の人に会ったことなくて……。不安だわ」
胸の中にじわじわと不安が迫ってくる。
そんなスウの手を、レビが優しく包み込んだ。
「大丈夫よ。困ったことがあったら必ず私がスウを助けるから。でも、スウはなるべく自分の力を使わなきゃ駄目」
「どうして?」
「運命を掴み取るため」
「運命……」
そう繰り返して、スウは考える。
さっきまでは明日の命すら考えられない状況だったのだ。
レビに助けられ、ニーラが居ない今スウは初めて先の事を考えたのだ。
わたしの運命とは、どうなるのだろう。
何もできない自分が、自分の力で本当にどうにかなるのだろうか。
幸せに、なれるのだろうか……。
「わかったわ。レビ」
「そうこなくっちゃ。大丈夫。繰り返すけれど私が必ず助けるから」
そしてレビは小さくスウに聞こえないように呟く。
「スウは幸せになるのよ。それがあの方との約束だから」
「レビ?」
「何でもないわスウ」
笑って耳を揺らすレビにスウは不思議そうに首を傾げた。
「さあ、スウはもう寝なくちゃ」
「わたしもう子どもじゃあないわよ?」
「でも明日から大変な日々が始まるわ。ちゃんと睡眠をとらなきゃお肌にも悪いわ」
「うーん、よく分からないけれど、とにかくレビの言う通りにするわ」
スウはレビの見守る中ベッドに入った。
「子守唄歌おっか?」
「だから、わたしもう子どもじゃあないもん!」
頬を膨らませて抗議するスウにレビは盛大に笑った。
布団のあたたかさに、お腹が膨れたスウに眠気はすぐにやってきた。
とろとろするスウは、
「レビ」
と呼んだ。
「なあに?」
レビも優しい目を向けながら答える。
「手を、握って」
「仕方ないわね」
こうして夜は更けていったのだった。
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