2.
「スウ、スウ起きなさい。これ以上深く眠っては還ってこれないわ」
「う~ん……」
「スウったら。起きなさい!」
「わあ!」
耳元で大声を出されてスウはそこでパッチリと目を覚ました。
ぼんやりとした視界が次第にクリアになっていく。
「良かった。スウ調子はどうかしら?」
「ニーラ……?」
それは最初、亡くなった育ての親が生き返ったのかと思った。
が、違った。
呟いてから明らかに声が違うと思ったからだ。
目の前の人物は紺のローブに紺のとんがり帽子をかぶった、それはそれは見事な長い白髪の髪の女性だった。
「あなた、だあれ?」
スウは目の前の人物に尋ねる。
「あら」
女性は驚いたように声を上げた。
そのとんがり帽子からひょいっとうさぎの様な耳が生えた。
「耳が!」
今度はスウが驚いて声を上げる。
「これでも、わからない?」
うさぎの耳が生えた顔を近づけて、女性は悲しそうな顔をした。
その困った瞳の色は青色。
「あ!」
まさか、まさか。
スウは震える指で女性を指差す。
「あの、子うさぎさん? レビなの?」
「正解!」
女性は嬉しそうに跳ねた。
スウが拾ってきたあの子うさぎのレビは真っ白な毛皮に、珍しく青色の瞳をしていたからだ。
こんな特徴的なうさぎは見たことが無いと亡くなる前のニーラも言っていた。
部屋の中を人間の姿をしたままのレビが嬉しそうに跳ねまわっている。
そこでスウは気付く。
「あったかい。暖炉に火が!」
暖炉には赤々と火が灯り、その側では大きな鍋から湯気が立ち良い匂いがしている。
途端、スウのお腹が大きく鳴った。
「スウお腹空いてたでしょう。鹿肉のシチュー作ったのよ。食べて食べて!」
レビが暖炉の大きな鍋から皿にシチューをたくさんよそってテーブルの上に置く。
よく見ると、ふかふかのパンにサラダまである。
堪らずに椅子に座ってスウは手を合わせる。
「いただきます!」
「あら、スウお祈りは?」
めっ、とレビが注意する。
いけない、とスウは手を組みなおした。
「森の神に、星の神、大地の神に感謝します。偉大なる王マキラ様に感謝します」
今度こそスウは「いただきます!」と元気に言ってフォークを手に取った。
鹿肉のシチューはスパイスが効いててとても美味しく、体が温まった。
ふかふかのパンは柔らかく口の中でほどける。
シチューにパンを浸すともっと美味しかった。
新鮮な野菜のサラダは瑞々しかった。
かかっているドレッシングもスウ好みの甘さだ。
「スウおかわりは?」
「要る! 要ります!」
お腹が満腹になって膨らむまで食べて、スウは久しぶりのまともな食事を終えた。
「お皿洗うわ」
スウはレビに言うと綺麗に皿を洗った。
お皿を戸棚に仕舞ってスウが振り向くとテーブルの上にはいつの間にか食後のハーブティーが用意されていた。
「さて」
レビがスウの目を見て話し始めた。
お読みくださり、本当にありがとうございます!