チューリップ
チューリップ
チューリップはいつも
いち早く明るい日差しを
花屋に届け
店先に春の看板を立てる
足早に通り過ぎる忙しい人々の
足を止めさせ
称賛をたくさん受け
瞬く間に店先から消えていく
腕にしっかりと抱いた
チューリップの花を
愛おしげに見る顔は
初恋の人に出会ったかのように
すっかりと冬枯れした心に
まだ肌寒い風の中
雛壇に飾られたぼんぼりのような灯りが
ほわーっと灯る
シクラメンのおしゃれな品の良さも
サクラソウのあどけない可愛さも
春の光から生まれてきたような
素直で可憐なチューリップに
早春の街角で叶うものはない
花瓶の中で昼間は
優雅な踊りを見せていたチューリップは
夜になると
顔を寄せ合って
うっとりと見つめ合いながら眠る