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徒然な惑星の住人

作者: zrk

 そこは静寂しか許されない荒野だった。白い大地。暗い空。浮遊しているいくつもの残骸と元は赤い物体だったモノ。5つの出っ張りが有るモノから一つも出っ張りが無く、歪に一つにまとまっているモノ。

 ただ、悠然と空には大きな天体がそびえ立つ、そんな空間。そこにはもう昼と夜が一ヶ月周期でゆっくりと変化していく日々が存在していなかった。

 

 そんな事態が起きるずっと前、そこには昼と夜が周期的に回っていた。その時僕は嘆いていた。

 

 僕が悲しいのは、長く共に生き導いてくれた兄の病変が心を痛めるからだ。

 その表情にはたたえる喜々とした表情が少しずつ変化してきた少し前。何も言わずに微笑んで、全てを許し、全てを愛し止まない存在が変化を迎えた。

 僕の手では捕らえている事が出来ず、逃れていったモノが兄の元で成就を叶えて共に喜んだと言うのに、その存在によって兄は苦しむ姿を見るのは惜しみない。

 一度そのモノ達が僕の元に立ち寄った時は歓喜した。兄が育み、慈しみ、愛するモノ達。

 しかし何度か訪れてからは音沙汰も無く、たまに使いの者が訪れずれる程度。

 

 それから瞬く間。

 

 兄の苦しみが目に見えてきてから、変化は起きた。兄に愛され生まれたモノ達が僕の元に住み付くようになってきた。

 僕は兄に何度相談したモノだろうか、愛した者達を少しは気遣うばかり自身を厳かにするなと。しかし、兄は愛するモノのためにも頑張りたいとがんとして受け入れてくれなかった。

 それからというもの、兄は日に日に衰え、元の喜々とした表情は影を潜め、青々として表情から土をたたえる色へと変わっていった。

 兄の愛してモノ達が僕の元に住むも僕の声は聞き届けてくれはしなかった。僕は何も出来ず、兄がしてきたように全てを許すことしかできなかった。

 

 そして兄の死という当たり前の摂理を迎えた。

 

 その瞬間の前に僕は兄と共に息絶える運命を良しとし、その瞬間を共に迎える事を待ち望んだ。兄の愛したモノ達は僕たちの近くに居を構え、移り住む事で何とか兄の死期を遅らせようと必死になり手を尽くしてくれた。

 その様な事をせず自分たちで生きていく事が出来るのだから遠く旅に出て、新しい出会いを探して貰いたかった。

 最期まで看取り共に果てていこうとするモノ達を何とか言い含めたくとも、僕の言葉は聞き入れて貰えない。唯一思いを伝える事が出来る兄は、もう彼らに思いを伝える手段が無かった。

 

 その最後の瞬間。

 

 兄は僕を強く押しだし、共に息絶えるさせてくれなかった。

 僕の元には兄が残した少しのモノ達。そして兄が最期まで身につけていた数々。

 そして思わずも共に果ててしまったモノ達を少し乗せ、僕は暗い空を旅する事になってしまった。

 得に当てもない。こうなる事を考えていなかった僕には向かうべき道は無かった。

 しかし兄が残して逝ったモノ達が不憫で、せめてこのモノ達が旅立てるその瞬間まで僕は生きよう。それが兄が僕を残し、伝えたかった事・・・

 

 

  

 ・・・いや。違う・・・

 

 兄はそう言いたかったのではない。その考えは僕の脆弱な心が見せる偽り。

 兄は知らなかった訳ではない。兄は僕が捕まえる事が出来なかったあの手を、自分しか捕らえる事が出来なかった事を悲しみ、その間に出来たのもを僕がねたましく思っていた事も知っていた。

 しかし、ねたむ以上に生まれてきたモノ達が僕に慈愛を述べていた事で僕はそのモノ達に興味が出て、いつか共に有りたい事にも気が付いていたのだろう。その事を僕の元に寄り添い兄の所にいた時の事を話したモノが語った時。ただ僕が彼らの宿主として最期まで一緒に暮らそうとそう思った。

 

 その時初めて僕は兄が残した彼らが愛おしくて溜まらなく成っていた。

 

 それから幾星霜。彼らは僕を中心に生活を変化していった。旅をしに出ていく者や、僕の世話をしてくれる者。そして僕と一緒に住んでくれる者も居た。

 幸せだった。

 彼らが僕に寄り添ってくれる事が嬉しくて、彼らが何をしているのかを見るのが楽しかった。

 昔は兄を通じて知ることしかできなかった彼らの営みが僕は自分の目で見る事が出来る事を幸福に感じた。

 しかしつかの間、彼らがの内の何人かが群れを無し、他のグループと喧嘩をし始めた時、僕は混乱した。共に手を取り合って生きている彼らが一体何を思って喧嘩を始めたのか解らなかった。

 そして僕は悲しくなった。 

 兄が死んだ時は、共に泣き共に悲しんだ彼らとこれからは兄の変わりになって共に生きていこうと考えていたというのになぜこうなるのだろうか・・・

 

 そして僕の元に彼らは一人も居ない。

 

 旅に出ていった者達とほんの一握りの者達が兄の残した最期の生き残りとなって、何処かで幸せに暮らしている事だろう。

 兄が居なくなってから僕は兄の変わりになって彼らと共にいようと思ったのに、間違いだったのだろうか。どうあっても兄の変わりには成る事が出来なかったのだろうか。

 そう、今でも考える。

 最期に僕の元に残った者がごめんねと言って去っていった。ここにもう居る事が出来なくなったのとも言われた。

 

 そして僕は一人になった。

 

 一体何がいけなかったのだろうか。

 もっと初めに手を伸ばしていれば僕の元にも残っていてくれたのだろうか。

 もっと兄に強く言い含めていれば良かったのだろうか。

 もっと彼らに僕の言葉を伝える様にすれば良かったのだろうか。

 それとも・・・

 いくら考えても知る事は出来ない。僕周りに残ったのは彼らが残して行った残骸だけ。

 どう考えても、どんな解釈を加えても、戻る事はない。

 

 僕はなんと無しに頭上に存在している天体を見た。


 

 

 

 

 

 

 そこは静寂しか許されない荒野だった。白い大地。暗い空。浮遊しているいくつもの残骸と元は赤い物体だったモノ。5つの出っ張りが有るモノから一つも出っ張りが無く、歪に一つにまとまっているモノ。

 ただ、悠然と空には大きな天体がそびえ立つ、そんな空間。そこにはもう昼と夜が一ヶ月周期でゆっくりと変化していく日々が存在していなかった。

 

 

 

 

 そして僕、月は太陽に呑む込まれていく。

 僕は死んでも兄、地球に会う事が出来るのだろうか。

 少しずつ太陽に呑まれていく。

 

 その時、僕の周りに水達が現れた。 

 

 昔僕の手を離して何処かに行ってしまった水達が、兄の地球にしか残ってくれなかった水達が、僕の周りに出てきて、少しでも太陽から僕を守るように表面を膜のように覆っていく。

 水達は僕を見捨てて居なかった。僕に隠れて僕の見えない所でずっと僕の近くに居てくれた。最期の最期でこの些細な出来事が僕には嬉しかった。

 少し前の日本が打ち上げた月周回衛星「かぐや」が発見した、「月にも水がある」というのを聞いた時に思いついた小説です。

 最終的には太陽に突っ込んで終了という内容では有りますが、こういった世紀末系の文章ってもっと激しい人間の葛藤とかあった方がいいかな~とも思いました。でも今回は惑星を中心においたときどう思うのかな~って想いがあって作ってみました。

 もし、共感までいかなくてもそれも有りかなって思ってくれたら幸いです。

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