第9ターン 俺っち、金に屈する
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
「あ、その、Drパパ、リ、リハビリ、リハビリなんだ!彼、日乃本クンはゲームで指の麻痺を治しているだよ!そのお手伝いさ。」
さっきまでの高慢さはどこに行ったのか、花崎は取って付けた言い訳をした。が、ムロン、純は反論する。
「おィ!ドクタースランプ、俺っちはリハビリなんかしてねえ!そんなものいらねえ!」
純はそう言い放つと身体を起こして健在をアッピールするが、下半身に激痛が走り顔をしかめてしまう。うぅっ、、
「日乃本クン、大丈夫かい?だから先ずは指の麻痺から根気よく治していこうよ!」
花崎がすかさず言葉をはさむ。純は痛みを堪えながら、入院なんかしてられねえ、ウチは貧乏ナンダヨ、サッサと退院させろと口悪くこぼす。
それを姉の音々が優しく諭す。今は治療に専念すること、そしてお金の心配はしなくていいと。
「姉ちゃん、大学辞めてお仕事をするわ。なんでも中高年の耳垢を取ってあげると巨万の富を築けるアルバイトもあるみたいなの。」
「駄目よ、お姉さん。お姉さんには古代クレタ文字を解明する、大きな夢があるじゃないの!大学を辞めちゃダメ。」
人情家のクー子が割って入った。にわかに温かいムードが室内に流れ、これをフムフムと聞いていたケーシー医師はその怜悧な頭で弾いていた。
(成程、ゲームを使ったリハビリテーション、これは新しい研究になるかも。上手くいけばお上*とゲーム産業がコラボレーションして、官民連携の新たな金脈が生まれるやも、、)
[註]お上、ここでは厚生労働省とその眷属を指す
「ものは相談だが、クランケとそのご家族、このゲームリハにモニターとして協力してくれたら、治療費は要りませんよ。治療費はお上からの補助金で補てんするからご安心を。」
つづく