第84ターン ローグ、カタルーニャ忍法の謎
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
花崎が操る空手家ゲンの飛び道具、気流拳が挨拶代わりに鳴木のローグにヒットする。目が覚めたとばかりに鳴木・ローグが臨戦体制をとる。
そしてゲンの二発目の気流拳を垂直ジャンプでかわすと、前進して間合いを詰める。そこにゲンが気流拳を打ち込むと、ローグは素早くガードして縮まった距離を維持する。
「ローグ、やるな。飛び道具を恐れていない。」
セコンドの夢原が敵の力量を推し量る。バトツー初心者なら飛び道具を敬遠してジャンプでかわすものの、次の一手が中々出ない。ひたすら飛んで逃げる構図となるものだ。
が、鳴木・ローグは気流拳を恐れず前に出て攻撃の糸口を探る。そして花崎・ゲンが気流拳のモーションに入った瞬間だった。
「ヒャー!」
ローグが奇声を上げてパンチを繰り出す。通常なら届かない距離だが、鉤爪を持つローグの拳がゲンの顔面を捉えた。
ゲンの体力ゲージが10%程減ったところからすると中パンチか、痛いお返しをもらった格好だ。
「ナンダあいつ!武器付けててズルいヨ!」
「そもそも何の武道だ、スポーツだ!」
クー子と純が一斉にローグを非難する。ウルサイ庶民どもだと、鳴木がヒュッと口笛を吹く。
「君達知らないのか、カタルーニャ忍法を。」
そう言いながら鳴木はリズム良く中パンチを花崎・ゲンに連発する。ゲンはガードを固めるも、専守防衛となり攻撃に中々シフト出来ない。
「オイッ、クー子。ナントカ忍法ってナンダヨ?」
「そうね、今や忍者は世界の共通言語、インターナショナルランゲージ。ヨーロッパに派生系の忍術があってもおかしくないワ。」
そう答えたのは純の姉、音々(ねね)だった。どうやら大学の講義を終えて純らの応援にやって来たようだ。
姉ちゃん、来てくれたのかと喜ぶ純、花崎も音々の登場を察知して勇気百倍になる。ただ一人冴えない表情で首を傾げているのは下町の太陽、クー子だ。
「ソレって、なんかインチキなオッサンが海外で忍術道場を開いているような、、」
陽気でオープンな性格が魅力のクー子だが、ズバリ本質を見抜く知性派でもある。
とまれ、ゲン対ローグの緒戦はローグがやや押し込む展開となっている。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。