第80ターン クー子、タメ技を繰り出す
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
ジリジリと焦れる展開のチャンリー対エド主水の一戦。クー子と河内、共に初心者であることはハッキリした。そして残り体力からはエド主水の有利は揺るがない。
クソ度胸は弟子の中でも随一のクー子。本番に強いメンタリティはこの間のプレイが暗示している。やらせてみるか、、、
幸いにして相手は攻めてこない、カウンター狙いだ。
「クー子ちゃん、方向キーを左←!」
セコンドの夢原が叫ぶ、クー子が素早くキーを入れる。そして僅かの間を挿み、、
「今度は右→、同時に□ボタン!」
するとどうだろう、なんとチャンリーの掌から飛び道具が繰り出されたではないか!そして瞬く間にエド主水に炸裂した。
「ワッ、ゆ、夢原サン、これナニ?!」
興奮するとお国言葉の関西弁が出てしまうクー子。掌底波、チャンリーの飛び道具だと、キリッと応じるマスター夢原。
「わぁ〜なんだョ〜ズルいぞぉ〜」
クー子・チャンリーの思わぬ新技に慌てふためく河内・エド主水。例によって挙動不審となる。チャンス到来、チャンリーは追撃をかけるべきだ。
「クー子ちゃん、連発だ!」
セコンドの夢原からラッシュの指示を受けたクー子は再びコマンドを入力する。が、今度は上手くいかない。
さっきは偶然にも技出しが成功したが、当然、慣れがいる。所謂、タメ技の成功には独特のタイミングが必要だ。
それにしてもクー子。絶対絶命の中、ぶっつけ本番で飛び道具を繰り出し、相手と会場のド肝を抜いた。下町の太陽とも呼ばれるヒロインのまさに真骨頂だ。これにはアウェーサイドの観衆も感嘆の声を漏らす。
やったぜクー子、勝負はこれからだ!純のエールが講堂に響く。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。




