第74ターン 空転、クー子のお色気殺法
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
チャンリーとエド主水。ベースに乱打技を持つ二人のキャラクター。素人には持ってこいだ。
しかし実は似て非なる両キャラ。チャンリーは速いが火力に乏しい。エド主水は遅いが破壊力抜群、相手に数発食らわせれば安々と勝利を手に出来る。
今、クー子が操るチャンリーの体力は残り30%程。ジャンプを繰り返し、とにかくエド主水に接近しないようにヒット・アンド・アウェーを試みる。
「クー子、いいぞ!動きまくって捕まるな!」
純は声援を送るが、アウェー会場からは激しいブーイング。それが講堂の中でゴゴゴッと地鳴りのように反響する。
孤立無援のチーム夢原。しかし天然のヒール、クー子は一切お構いナシだ。何喰わぬ顔で!勝負を避けるトリッキーなプレーに終始する。
「もおぉ、メンド臭いなああ〜」
エド主水を使う河内は苛立ち始める。心理戦が功を奏したのか、試合の流れをクー子が取り戻した。
か、見えたがここで河内が驚きの挙動に出る。なんと画面の中央にデンッと居座り動かない。これには蘭子も目を丸くする。
「あの馬鹿、何やっての?新井!」
「河内のやつ、、まるでカウチポテトか?」
動かないエド主水。残り体力はチャンリーを上回る。要するに時間切れでも勝てる要領だ。そうなるとクー子も攻めざる得ない。
「もう、ちょっと動きなさいよ、ウフ♡」
しなを作ったクー子の奥の手、十八番のお色気殺法も虚しく、全く動じない河内のエド主水。止む無く、接近してチャンリーが百発蹴がお見舞いする。
被弾して体力を減らすエド主水。が、チャンリーの蹴りが途切れたタイミングで待ってましたとばかりに突っ張りの連発をお見舞いする。
クー子のチャンリーは悲鳴を上げて力尽きた。
エド主水、ウィン!
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。