第73ターン 炸裂!エド主水の突っ張りでごわす
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
花崎家の家督を賭けた闘い。その先鋒戦が始まった。クー子が操る拳法美人チャンリーと河内が使う相撲レスラー、エド主水の異色の対決。
「コイツは乱打戦になるな。」
業界のレジェンド夢原省吾が呟く。ド派手なジャケットの立会人、ピカピカ先生が吠える。レディー・ファイト!
乗っけからクー子のチャンリーが高く飛翔。そして着地と同時にキックの連発、必殺技の百発蹴がエド主水を襲う。
クリーンヒットの連発でエド主水の体力を奪い、幸先よく試合に入るクー子のチャンリー。
押せ押せムードのクー子。チャンリーはさらに踏み込み百発蹴を狙う。と、なんとエド主水が反撃の突っ張り連打!チャンリーの体力ゲージが激減する。
「あ、あれは何だ?夢サン?!」
「エド主水の突っ張りはパンチボタンの連打で出る技、チャンリーの百発蹴と同じ原理だ。」
「トゥーイージー、ってことですね。」
バイリンガルの花崎が補足する。エド主水を操る河内の実力は未知数だが、この荒業の連発は、素人でも経験者を打ち負かすことが出来ることは業界の常識だ。
「ワッ、ウワァ~夢サン!どーしたらいいのダ?」
狼狽し混乱するクー子。夢原の指示は至ってシンプルだ。飛べ、とにかく同じ所に居るな!そしてキック連発、とにかくこれを続けろ。
興奮した選手に細かいな指示は逆効果。
フットボールの名将も斯く語る。
エド主水の優勢にご機嫌麗しい花崎蘭子。特別に設えたディレクターチェアに深く沈み込み、側近の新井に問う。
「ウチの河内、中々やるじぁない。腕前のほどは?」
「相当の猛者かと。技はあの突っ張りだけでは無いようですよ。」
不敵に笑う新井に、フンッとツレナイ蘭子だが満更でもない様子。デスメタルの首魁、蛭田は口を歪めて密かに笑う。クー子のプレイキャラ、チャンリーの命は風前の灯火となってしまった。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。