第72ターン 絶望ゲーマー、デス・メタル
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
「オイッ、クー子。何だこの古臭い曲は?」
「夢サンの趣味みたいダヨ。TMなんとかの。」
「それにしても酷い歓迎ぶりだ。アイム、サッド。。」
花崎が困惑した顔つきで俯く。ゲットワイルド♪のリズムに乗りグレーシートレインで入場したアウェーチームの純ら四人。早速、サンシャイン学院の生徒達からブーイングの洗礼を受ける。
純と花崎、そして百戦錬磨の格ゲーマスター夢原でさえも、四面楚歌の状況に気圧されてしまったようだ。
そんな中、クー子だけは不敵な笑みを湛え、サ学院の生徒らを睥睨して見せる。正に一流のヒールを地で行く生来のエンターティナーだ。
「格ゲー馬鹿と債務者の娘、そしてお兄様、よくぞ逃げずに来ましたね。ア〜ハッハッハ!」
講堂の舞台で睨み合うと、花崎蘭子が先制口撃を仕掛けて来る。突っかかろうとするクー子を制して純が蘭子に反撃する。
「御託はいらねぇ。ランラン、そっちは格ゲーマー揃っているんだろうな?」
「お馬鹿さんは何をご覧になってるのかしら。ア〜ハッハッハ!蛭田、名乗りなさい。」
と言って、蛭田恭介以下三人の蘭子軍団の格ゲーマー達を舞台に上げる。
「どっかで見た顔だな。」
そう蛭田は独りごちて続ける。
「ワタシ達はサンシャイン学院最強の格ゲートリオ、絶望のデス・メタルだ!」
デス・メタルって何だ?純がヒソヒソとクー子に聞くと、きっとアニメの題名ダヨとクー子が博識?を披露する。
本団体戦の特別立会人にはド派手なスーツが人際目立つ、学年主任のピカピカ先生こと佐藤氏が務める。全て蘭子の手回しだ。
ピカピカ先生が一頻り本戦のレギュレーションを両陣営及び観衆に説明。そして大事な条件を付け足す。
「なお、本戦には花崎家の家督が賭かっています。それでは第一戦、先鋒、前へ!」
デス・メタルの先鋒は河内。この小太りクンが使うキャラはポリネシアの相撲レスラー、エド主水だ。
対するは、焼津の浜小町ことクー子、使うキャラは中国拳法の達人チャン・リー。
運命の決戦、その幕開けは乗っけからフルスロットルの展開となった。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。