第66ターン チーム夢原、第3の格ゲーマーは?
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
「そうか、三人か。」
夢原が反芻した。花崎がコクリと肯く。蘭子が告げた花崎家の跡取りを決める格ゲー対戦、花崎ダービーのレギュレーション。あと一人格ゲーマーが足りない。
格ゲーレジェンド、夢原とその弟子達は花崎医院の広く瀟洒なロビーに集まっている。売店横のソファが今や彼らの作戦会議室。馴染みの店員との軽口も夢原にとっては暮らしのちょっとしたスパイスだ。
「マスター夢、あなたがメンバーに加わって貰えませんか?プリーズ。」
花崎が夢原に懇願する。純も夢原に手を合わせる。頼む、夢サン、ヲタの人生がかかってんダ。
確かに愛弟子、花崎を救ってやりたい。しかし高校生達の対戦に中年期の戸口に立った自分が加わってもいいのか。まるで児童公園で園児と本気で遊ぶ小学生ではないか。
いや、違う。そんな問題ではない。俺は多分、未だコントローラーを、、、
「おいおい、俺が加わるワケにはいかんだろ。だいいち、ヲタ、お前の妹が認めんないんじやあないか。」
そう夢原が弟子達をたしなめると、止む得ない、二人は漸く鎮まった。
「じゃ、三人目を誰にする?この間のナニワ兄弟戦みたく一人が二戦するか?」
と、純が提案すると以外な人物が待ったをかけた。
「チョイとお兄さん達、誰か忘れてない?格ゲーは男子専用って法律にでも書いてるのかい?」
洒落た名調子で参戦表明をしたのは、なんと下町の太陽こと我らがクー子だ。男女平等って今や常識ダロ?キミたち、ちゃんと憲法を読み給えと言って純と花崎の胸を指で小突く。
「だってサ、アタイ、この間はヲタに助けて貰ったじゃん。今度はアタイがお返しする番サ!」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。




