第62ターン 俺っち、蘭子の母校に闖入?する
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
「あら、どなたかしら?何処かでお会いしました?オホホ。」
わざとらしくシラを切るクー子。純もフーアーユーと英語を挟んで車椅子の物理学者を気取る。
「ハァ?何を誤魔化してしるのでゴイマス?日乃本純と債務者の娘、ア〜ハッハッハ!」
蘭子とその親衛隊が哄笑する。
「チッ、バレたなら仕方がねぇ。おうよ、俺っちは日乃本純だ!クー子は債務者じやぁねえ、借用書は偽物だっただろ!」
「オイッ、花崎の妹、小野妹子!」
「妹子なんて名前じゃありませんワ!蘭子という名前がゴザイマスわ!」
「お嬢様に失礼なことを言うな、この外道衆!」
親衛隊の頭が激しく純に詰め寄る。クー子は身を挺してこれを阻む。純に手を触れるな、ずうとるび!
「オイッ、ランラン!ワレは俺っちと誰を闘わせるつもりだ、教えろ!」
「ア〜、ハッハッハ!敵に塩を送れと!お断りでゴザイマスわ。」
そこを何とかお嬢様、と世慣れたクー子が食い下がる。貴族の性か、下手に出られると幾分ガードが下がる蘭子。
「フンッ、そうですわねえ、、まあ、今はオーディションを開催中、そう言っておきましょうか、オホホ。」
何だ、要するに未だ決まってないじゃん、バカかコイツ。クー子は心の中で独りごちたが、純の方は警戒心を露わにする。オーディション?ムムッ、やるじゃねえか、、
「まあ、焼津の浜から折角この大都会に来たのですから、ゆっくりと我が学び舎を見学して、一生の思い出にしてお帰りなさい。ア〜、ハッハッハ!」
そう言うと蘭子は踵を返し、りんたろう、案内しなさいと親衛隊の頭に命じて純たちの前から消え去った。
つづく
人物紹介
・日乃本 純
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支えている博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・花崎蘭子
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・Drケーシー花崎
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを実証中。
・事務長
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。