第59ターン 花崎の妹、その名は蘭子
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
花崎誇の奇跡的な連勝でナニワ兄弟を降した純と花崎のフレッシュコンビ。大人しく渡せと純がクー子の母親のものらしき借用書をナニワ兄弟から奪い取る。
「そんなに落書きが欲しいンやったら、くれてやるわ!」
そう、吐き捨てるとナニワ兄弟は病室からソソクサと出て行く。どうやら借用書は偽物だったようだ。
ホッと肩を撫で下ろすクー子。そして空かさず、逃げ去るナニワ兄弟を罵倒する。
「ペテン師、二度と焼津に来ンなッ!カス!」
来るか!ブス!捨て台詞もどこか貧困なナニワ兄弟エクスペリエンス。大阪への帰りは浜松からの高速バスが最安値か。チト、気になった夢原師匠だったが、気掛かりはそれだけではない。
そもそも何故あのナニワ兄弟は純と格ゲーで闘いに来たのか。クー子と純、さらには花崎が繋がっていることをどうして知ってたのか。
ロードバトラー2でキワモノキャラを使い闘ったナニワの凸凹コンビ。その真の目的は正直、測りかねる。思いを巡らす夢原であったが、そんな逡巡を甲高い声が遮った。
「ア〜、ハッハッハ!ドジなお兄様にしては上出来、褒めて差し上げますワ。」
珍しいものを見せてもらった、コングラチュレーション、と小馬鹿にしたように騒ぎ煽る少女が一人。そう、花崎の妹だ。
「シャラプ、蘭子。」
どこか弱気な感が否めない花崎、黙れよとは言ってみる。が、お嬢は容赦が無い。どうもこの兄妹はそういう関係性のようだ。
「フンッ、高々ゲームに勝ったぐらいでいい気にならないでくれますぅ?ヒッキーのお兄様ぁ!」
つづく
人物紹介
・日乃本 純
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支えている博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・ナニワ エキスペリエンス
キー坊とヒロシ。クー子の過去を知る大阪の凸凹コンビ。キー坊はヒンドゥーの行者ダル・シン、ヒロシは旧ソ連のレスラー、ハシミコフを使う。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。