第57ターン ナニワ兄弟はプロレスの味方です
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
負けられない花崎とナニワBヒロシの二人が選んだ戦法は実に守備的で、病室のオーディエンスに失笑を買った。
そこに音々、純、クー子のトライアングルがブーイングを浴びせたものだから、ムキになったヒロシのハシミコフは大胆なプロレス技を狙い攻撃に転じる。
ここはカウンターのチャンスとばかりに花崎は弱キックから迎撃の飛び道具、気流拳に切り替える。が、敵もさるもの、ダブルラリアットを抜け技にして、気流拳をかわしながら近づいて来る。
「ヲタ、気をつけろ!」
夢原が叫んだが一歩遅かった。ハシミコフは花崎のゲンを高く持ち上げて回転しながら、所謂パイルドライバーをキメてきた。
ゲンの体力ゲージが反撃する。ハシミコフがバグキャラと言われる所以だ。
「やったぜベイビー!」
はしゃいでふざけ、圧をかけるナニワ兄弟Aキー坊。フレームを頭にかけて、あえてメガネ、メガネと探すムーブで花崎を虚仮にする。
ヤバい、花崎は焦りを隠せないがセコンドの夢原には胸中、秘策がある。その為には、ハシミコフにあの技を繰り出させる必要がある。
「ヘイヘイ!そんな痛め技、見飽きてあくびがでるよ!」
また、音々がナニワBヒロシを野次った。他に技は無いのか?プロレス愛を見せて見ろとイタい所を突いてくる。
格ゲーでプロレスラーを使う、それはプロレスこそが最強、この信仰をせめてもディジタルの空間で証明したい、見果てぬ夢を追い求めるルサンチマンだ。
そんなナニワ兄弟が音々の暴言を許すはずが無い。ハイスパットに向けて次の技はと、俄然熱くなる。
「ヲタ!チャンスだ、斜め↖ジャンプ!」
夢原、賭けに出る。花崎も応える。
「イエス、アイドゥー!」
果たせるか?相手の隙を狙ってゲンがハシミコフを飛び越えようとする。
「アホ!させるか!」
ハシミコフはゲンに左側への移動を許さない。逆にゲンを捕まえる。
「クソッ、やはりダメか!?」
純がそう口走った刹那、ハシミコフがゲンの体をグルグルと回し始める。
「ヒヒッ!やったれや、ジャイアント・スイン〜グ!」
シテヤッたりと叫ぶキー坊、地獄の果まで飛んで行け〜と名調子のヒロシ。ハシミコフに投げ飛ばされたゲンの体力ゲージは三分の一までに減ってしまった。
つづく
人物紹介
・日乃本 純
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支えている博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・ナニワ エキスペリエンス
キー坊とヒロシ。クー子の過去を知る大阪の凸凹コンビ。キー坊はヒンドゥーの行者ダル・シン、ヒロシは旧ソ連のレスラー、ハシミコフを使う。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。