第56ターン 俺っち、プロレスをディスる
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
一発の火力が尋常じゃないハシミコフ。大技を三つほど喰らえば体力ゲージは真っ赤になる。ジッサイ、反則キャラだ。
そんなブルファイターをどう攻略する?花崎は一度ナニワ兄弟に敗北している。全く歯が立たなかった。無理に攻めれば必ず大技の餌食になる。
そんな恐怖心が花崎のファイトスタイルを萎縮させる。安全策とばかりに、しゃがみ弱キックを連発する。
一方、弱点を知られたナニワBヒロシも距離をとってしゃがみ弱パンチ、プロレス技の地獄突きを連発する。
滑稽ともいえる光景が画面に現出したが、ガチンコで負けたく無いと思った時、ファイター達は恐ろしくディフェンシブになる。
このことは、賢明な読者諸兄であれば総合格闘技の黎明期を引き合いに出すまでもなく、ご理解いただけることだろう。
そんな僅かな小康状態を利用して花崎のセコンド夢原は打開案を探る。どうすれば敵が苦手の左側に移動できる??
「いつまでもチンタラやってンじゃないよ!」
突如、口汚いヤジが飛んだ。音々の声だ。
プロレスはだから八○長って言われるのよ!と、オールドファンが理性を失うあの禁忌に触れる。日頃お淑やかな音々の驚きの口撃は花崎援護の苦肉の策か。
すると、そうだ、そうだと純が呼応する。相手の協力無しで技を決めてみろ、プロレスラー!
毒舌ならクー子も負けていない。お客とプロモーターが泣いてるよ!しょぱい、グリーンボーイ!と煽りに煽る。
「なんやとぉ!兄弟、プロレス技、決めたれや!」
「おうよ!プロレスラーは一番強いンです!!」
プロレスラーを使う格ゲーマー達のプロレスへの偏愛は相当なものだ。このナニワBヒロシも例外ではない。とりわけ技に拘る。
そうか、、しめたッ!夢原は意外な流れから花崎逆転の秘策を思いついた。
つづく
人物紹介
・日乃本 純
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支えている博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・ナニワ エキスペリエンス
キー坊とヒロシ。クー子の過去を知る大阪の凸凹コンビ。キー坊はヒンドゥーの行者ダル・シン、ヒロシは旧ソ連のレスラー、ハシミコフを使う。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフなど多彩な格闘家が闘う。某格闘ゲームとは無関係。