第52ターン メイクドラマ、コンボで大逆転
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
コンボ、その響きは初心者格ゲーマーにとって、ある種特別なものがある。自分の力がワンランク上がったような、自尊心をくすぐるマジックワードだ。
バックステップからの飛竜拳は、コンボと言うにはあまりに素朴なものだが、いずれにしても花崎は技のコンビネーションでナニワAダラ・シンに痛打を与えた。
が、コンボはむろんタイミングが命。花崎は自分でそれをコントロール出来てはいない。夢原頼みである点を忘れてはならない。
「ヲタ、また来るぞ!」
夢原にアイノウ!と返した花崎はバックステップ、そしてジャンピングアッパーカット飛竜拳を再び叩き込み込む。ペースは完全に花崎のものとなった。
攻撃が対応され、打つ手が無くなると格ゲーマーは、つい得意技に頼りがちになる。リスクをかけても強引に仕掛けてしまうのが性だ。
そろそろ来るな。百戦錬磨の夢原には次の展開が手に取るように分かる。
「エエぃ!鬱陶ッとい奴やで!」
変人ナニワAキー坊が躍起になって仕掛けて来る技はダラ・シンのトリッキーなコマ技、テレポーテーション。夢原の思うツボだ。
「ヲタ、斜めジャンプ。」
沈着な夢原の指示通りに花崎ゲンは跳躍し、画面の右に着地した。ヤッた!心の中でほくそ笑む花崎と夢原。
そうさ、そうなんだ、このナニワ兄弟の弱点は、、、解ったよ、音々さん!
矢継ぎ早に飛び道具、気流拳を打ち込む花崎ゲン。これを定石どおり同じく飛び道具で相殺しようとするナニワAダラ・シン。
しかし手数が上回る花崎ゲンに圧倒され、気流拳を被弾してしまうナニワAダラ・シン。どうも試合開始時とは勝手が違う。
悔しそうに顔を歪めるナニワAキー坊。もしかすれば自分の弱点に気付き始めたのかも知れない。
「ヲタ、仕上げだ。」
ロジャッ。この短いやり取りがナニワAキー坊への最後通牒となった。
打つ手の無くなったダラ・シンが繰り出すワンパターンな伸び伸び中パンチ。
バックステップ、ジャンピングアッパーカット
「ヒリューケーン!!」
純とクー子が唱和する。小さく拳を握る音々。サムズアップのマスター夢原。
そしてコントローラーを天高く投げ捨てた花崎誇。ゲン、ウィン!劇的な逆転勝利に病室が興奮の坩堝と化した。
つづく




