第5ターン 俺っち、格ゲーを初めて見る
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語
「ファイティングロードをまっしぐら、格闘ゲームの最高峰、ロードバトラー2!」
まるで広告のようなセリフを叫ぶとキザ君は、キミも見たいんだろ、見せてやると、ゲーム機に電源を入れた。純の姉、音々は見せたいくせに、と独りごちた。
「僕ぁこのキャラにハマってンだよねえ!」と言ってキザは赤い道衣の空手家を選んだ。対戦相手には不思議な髪型をしたアーミーシャツの男を選んだ。
「キャラってなんだよ?クー子 ヒソヒソ」
「キャラクターのことよ、全く何にも知ンないんだから ヒソヒソ」
「そのキャラクターて何だよ?オタク族博士 ヒソヒソ」
「キミ達、何ヒソヒソやってんの。ちゃんと僕のプレイを見てなさいよ!」
そう言うと、キザはパンチ、キックと巧みにキャラクターを操り、変な髪型ソルジャーを一蹴して見せた。
どうだ、と言わんばかりキザが純を見下ろした時、純が猛然と注文を付けた。
「お前のキャラクター、変だゾ!空手でも拳法でも、本当はそんな技、出来っこねえぞ!」
そんな問題ではない、これはゲームだからと言いそうになった時、キザはどこか負けた気がして口をつぐんでしまった。
つづく