第45ターン 俺っち、すり抜けられる
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
地上戦でもタイミングよくジャンピングアッパーカット飛竜拳を見事に決めた純。攻撃の手を止めない、気流拳を連発する。
体力がかなり削られたハシミコフ、ナニワBは慎重になる。純・リョウの放つ飛び道具を垂直跳びで避けて一呼吸置く。
「上手くインターバルを取ってやがる、やはり相手は闘い慣れしているぞ。」
夢原はナニワ兄弟への警戒をあらたにする。確かに格ゲーは精神戦でもある。落着きを失ったらたちまち劣勢に回り、相手は一気呵成に攻め込んでくる。
その意味では純は今が攻め時だ。この好機を逸してはならない。時間を与えればナニワBは対策を講じてくるだろう。未だ技数の少ない純、セコンドの夢原は意を決した。
「純、攻め切れ!ラッシュだ。一気に勝負をつけろ!」
夢原の指示が出るや純は左方向キーを2度押すとリョウがステップを踏んで素早く前進する。そして近距離の気流拳を放つ。
ハシミコフはガードするも被弾。弾道が短く、もはや垂直跳びではかわせない。純としてはこれを反復すれば勝率が上がる。相手が焦れてガードが緩めば気流拳の餌食に出来る。
「うう、しゃあない!兄弟、すり抜けや!」
痺れを切らしたナニワAキー坊が、初めてナニワBヒロシに指示を出した。するとハシミコフが体を回転させ、両腕で振り回してあのプロレス技、ラリアットを繰り出した。
「クソッ、奴め出来るのか!」
夢原の悔いたが、それは後の祭りだった。なんと、ハシミコフの回転ラリアットは気流拳をすり抜けた。かつて純の烈風脚が花崎の気流拳を無化したのと同じ技術だ。
「何だとぉ!!」
狼狽する純。さらにハシミコフの両腕がリョウを打ち据え、その体力ゲージを大幅に削る。
オー・マイガッ!頭を抱える花崎、息を飲むクー子。したり顔のナニワ兄弟。
「くそぅ、南無三!これでも喰らえ!」
純が苦し紛れに繰り出した廻し蹴り、烈風脚。リョウの回転体はハシミコフにガードされ、ここぞとばかりにハシミコフの必殺技ジャイアント・スイングで反対側に投げ飛ばされてしまった。
ハシミコフ、ウィン!
つづく