第42ターン 格ゲー快楽のコンボ
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
純・リョウが乱発する飛び道具、気流拳に手を焼くナニワB・ハシミコフ。この展開が続けばリョウの先制は間違いない。
そして、「間合い」の練習と併せて純には短期特訓で取り組んだ技がある。
「純、そろそろ来るぞ。」
キラッと光る鋭い目。コーチ夢原が言うのとほぼ同時に、ハシミコフが飛んで来た。距離を詰める斜めジャンプ、木霊するリョウの叫び。
「飛竜〜拳!」
かつて花崎戦で苦しめられたゲン*のコマンド技、代名詞。それはリョウの必殺技でもあったのだ。
[註]本作における架空の格ゲー、ロードバトラー2のキャラクター。陽気でアメリカンな空手家だ。
気流拳で誘い、飛竜拳で仕留める。この典型的、代表的な戦法は勝者に快楽を、そして敗者に圧倒的な屈辱感と再戦への麻薬的渇望を与える。
もし、この技の組み合わせ、つまり誘って釣るという「シテヤッたり」感、優越感が格ゲーに無かったとしたら、その隆盛と後の歴史は違ったものになっていただろう。
「や、やるやないか、、」
狼狽の色を隠せないナニワBことヒロシ。悪党コンビのナニワAキー坊も、純の優勢に驚いているようだ。
「タ、タンマや!」
そう哀願して時間稼ぎを目論むナニワB。往年の悪役レスラーが手を合わせて敵の攻勢をしのぐ様子に似ている。
「試合中に待てと言われて、待つブァァクワァァがいるかよォォォ!」
怯むナニワB・ハシミコフにパンチ、キックの雨を降らす純・リョウ。一本目は純がナニワBを圧倒した。やるぅ!喜びの余りクー子が夢原に背後からチョークスリーパー。離せ、ハナセ、、
リョウ、ウィン!
つづく