第40ターン ナニワ決戦、俺っち、先発する
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
時計の針が午後の四時を指した。悪辣格ゲーマー、ナニワ・エキスペリエンスが純の病室に現れた。
ナニワAことキー坊、ナニワBことヒロシの瓜二つタッグのテーマソングはスターウォーズのテーマ。ラジカセを携えての入場だ。前時代的美感にまずは面を喰らった純と花崎。しかし、負けていない。
「オイッ、ナニワ!そのロックを止めやがれ。」
「ストップ、ストップ・ザミュウジック!」
純と花崎が猛然と抗議する。プロ市民顔負けのアジテーションだ。落ち着け!純、ヲタ。師匠の夢原省吾が制止する。いきなり荒れ模様の展開だ。
「クックッ、まぁ吠えてなはれ。今に泣きっ面かかせたるわ。」
「さぁ、どっちや。どっちの阿呆から勝負すんねん?」
こっちはワイから行くでぇ、とナニワ・ヒロシがコントローラーを握り、プロレスラー、ハシミコフを選ぶ。
「俺っちが相手だ、八百長野郎!」
と純が禁断の一言を発して受けて立つ。選ぶキャラは勿論、空手家のリョウだ。
ラウンド・ワン!
純、練習の成果を見せてやれ!夢原がハッパをかけると、ヤッちゃいな!と物騒なエールを送るクー子。純の姉、音々は思い詰めた表情で純を見つめる。
任しとけ!吠えた純だが戦法は堅実だ。バックステップで距離を取り、飛び道具のコマンド技、気流拳を放つ。
ヨシッ、頷く夢原。格ゲー初心者は飛び道具への対処によってその実力を測ることが出来る。
先ずはセオリーどおりの闘いを狙う純。夢原が密かに見立てたとおり、純のプレイスタイルは意外にもオーソドックスな守備型だったのだ。
つづく




